40.断末
「ど、どういうこと!?」
「なんだそれは!?」
「お、落ち着きましょう」
放送を聞いた三枝木たちは3人とも動揺しているようだった。
3人の額は当然のように光っている。
「だ、大丈夫です。
我々にはお題回避権があります。
落ち着いて、お題を回避しましょう」
「そ、そっか!
そうですね!」
「さ、さすが三枝木先生!」
3人は額に汗しながらも、安堵した様子を見せた。
3人は揃って右手を上に挙げる。
『私はこのお題を回避します!』
3人がそう声を上げると、3人の額の光がふっと消え去った。
お題回避の方法は密告者になった時に、個別に教えられるようだ。
「ふう、驚きましたね」
三枝木がほうっと胸を撫で下ろす。
「ピンポンパンポーン!」
「はっ?」
「えー、残念ながらー、再びお題の該当者がいなくなってしまいましたー。
と、言うわけで、再びお題を変更しまーす!
お題はー、『密告したことがある人』でーす」
「はあぁぁー!?」
「ふざけんなっ!」
「どういうことよっ!」
「それでは、スタート~!」
『わ、私はこのお題を回避します!』
「ピンポンパンポーン!」
『私は~~~』
「ピンポンパンポーン!」
『私は~~~』
「ピンポンパンポーン!」
「ピンポンパンポーン!」
「ピンポンパンポーン!」
そして、
「も、もうお題回避権が、ない」
「わ、私もです」
「…………」
体育教師と女教師の回避権が底を尽いた。
三枝木も、あと数回しか残っていなかった。
そして再び、お題変更の声が上がり、お題を回避した三枝木以外の額が光る。
「もう勘弁してくれ」
体育教師が絶望の顔を見せる。
「…………」
黙りこくっていた三枝木が、そこで突然ニヤリと笑う。
「ど、どうしました、先生?」
その様子に、女教師が不安そうに尋ねる。
「…………」
それでも黙っている三枝木に、体育教師が顔色を青くする。
「お、お前まさか……」
「私はねえ。
前からあなたたちが嫌いだったんですよ。
筋肉バカに下品なバカ。
まったく品性の欠片もない」
「せ、先生?」
女教師も嫌な予感がしているようだった。
「さようなら!
私は1人で隠れて、お題をやり過ごしますよ!」
そして、三枝木は鬼を呼んだ。
だが、
「1人だけ生き残るなんて許さねえよ!」
「なっ!バカっ!やめろ!」
鬼に襲われる寸前で、体育教師は三枝木にしがみついた。
「ぎゃあぁぁぁぁーーー!!」
そして、その民家に3人の断末魔の声が響いた。
「制裁だ」
「えっ?」
お題変更の放送が聞こえなくなった頃、新一がぽつりと呟いた。
「ピエロのやつ、初めから密告者はこうやって始末するか、お題回避権のない状態に戻すつもりだったんだ。
密告させて、お題を回避できるからって安心した所を一気に叩き落とす。
それが、奴らの狙いだったんだよ」
「さすがは悪魔だな」
新一の説明に、京也が肩を竦めた。
新一の仮説は間違ってはいなかったが、この時の俺たちはそれが、香織の願いによるものだったとは知る由もなかった。
「……これでいいんですかぁ?」
テレビだけが煌々と光る真っ暗な空間で、ピエロが誰かに話し掛ける。
「ああ、手間をかけたな」
話し掛けられた黒鬼がそれに応じる。
「まったく、今までろくに参加せずに、どこで何をしてるのかと思えば、急に現れて、密告者を潰せ、とか言ってきて、何がしたいんですか。
まあ、面白かったから良いですけど」
ピエロが呆れたように溜め息を吐く。
「…………」
黒鬼はそれには答えなかった。
「まあいいです。
位階はあなたの方が上ですからね。
でも、今回メインで喚ばれたのは私です。
今後は、ちゃんとゲームに参加してくださいね」
ピエロは諦めたように、街の様子を映したテレビに目を戻した。
「ああ、分かっている」
黒鬼はそれだけ言うと、シュッとその場から消え去っていった。
「どうだ?
これで信用できるか?」
「……分かったわ。
皆が帰ってきたら、詳しく話を聞かせて」
「ありがたい」




