38.正義の銃弾
三枝木に誘導されて、京也から教室を出る。
俺もそれに続き、最後が三枝木だ。
分かってる。
教室を出た瞬間にそれに気付く。
京也も今か今かとジリジリしている。
ここは、俺がチャンスを作ってやらないと。
「三枝木先生!」
俺はくるっと振り返り、教室を出ようとしている三枝木を呼び止めた。
「……なんですか?」
三枝木は怪訝な顔でこちらに銃口を向け直した。
「その、俺だけでも、やっぱり仲間にしてくれませんか?」
「おいっ!」
へらりと笑う俺に、京也が声を荒げる。
三枝木はそんな俺を見て、はぁと溜め息を吐く。
「悟くん。
君の演技は下手くそすぎますよ。
あまり大人をなめてもらっては困ります。
少しは京也くんを見習いなさい」
「うぐっ……」
「ばーか」
三枝木にたしなめられた。
正直、かなり悔しい。
けど、この悔しい思いは必要だ。
「もういいでしょう。
さあ、さっさと進みなさい」
三枝木は呆れたように、右手に持つニューナンブを俺に向けて、教室の外に一歩踏み出した。
そこに、一発の銃声が響く。
「ぎゃっ!」
三枝木は右手を銃ごと吹き飛ばされた。
「いたーい!!
て、て!私の手が~~~~~!!!!」
三枝木が右の手首を押さえながら情けなく喚いている。
「先生。
あまり、生徒をなめてもらっては困りますよ」
「お、おまえはぁ!」
三枝木がものすごい形相で睨んだ先には、銃口を三枝木に向ける新一の姿があった。
「悟っ!
お前、最後の下手くそな演技の演技は上手かったじゃねえかよ!」
……京也、そんな演技はした覚えないんだが。
「なぜ、お前がここにいるぅ!
教室に潜ませておいた別動隊が、お前たちを抑えているはずだぁ~!!」
三枝木は血だらけの右手を押さえながら喚いている。
丁寧な口調はどこかに消え、すっかり化けの皮がはがれている。
「それぐらい、想定していないはすがないだろう」
新一は失笑してみせた。
「こちらの戦力も、それだけじゃなかったんだよ。
その別動隊とやらは時間差で正門から来てもらった人たちと一緒に撃退して、そいつらは皆、体育館で縛られてるよ」
「ば、ばかなぁ!」
呆れたように溜め息を吐く新一に、三枝木は大口を開けている。
「にしても、来るの遅くねえか?
俺らが撃たれてたらどうするんだよ」
「誰がいろいろ仕掛けを用意したと思ってんだ。
それに、実際撃たれてないだろ?」
「ま、そーだけどよー」
京也は口を尖らせて不満そうにしている。
「それに、三枝木は逃走者にする人間を少しでも集めたいと思ってるだろうからな。
極力、無傷で捕らえたいと思うはずだ」
たしかにその通りだった。
三枝木は俺たちを決して傷付けようとはしなかったな。
俺たちが話している間、三枝木は下を向いて、ぶつぶつと何事かを呟いている。
「さて、そろそろ行くか~?」
京也が伸びをしながらあくびをしている。
「そうだな」
新一もその様子に呆れて銃を下げる。
「ばぁ~か~めぇ~!」
三枝木ががばっと顔を上げて、京也から奪った、左手に持った銃をこちらに向けた。
俺と京也はそれを見て、そろそろと後ろに下がる。
「動くな~!!」
三枝木は嬉しそうに銃を振り回している。
照準も何もあったものじゃない。
「やれやれ、往生際が悪いですね」
新一は完全に呆れている。
銃もすでに懐にしまっている。
「うるさいぞぉー!
子供が生意気な口を聞くなぁ~!」
三枝木が新一に銃を向ける。
それを見て、俺と京也も新一の方に移動する。
「動くなって言ってるだろぉー!
撃つぞ!撃っちゃうぞ~!」
三枝木がこちらに向けた銃をぶんぶんと振り回しながら騒ぐ。
なかなか見苦しいな。
「へっ!
どーせ、まともに撃ったことないんだろ。
そんな構えで当たるかよ!」
「な!なんだとぉ~!」
三枝木は京也の挑発に簡単に引っ掛かっている。
「くそー!
バカにしやがって~!
くらえ!
正義の銃弾を!」
三枝木が必殺技みたいなことを言って、引き金を引いた。




