34.京也
さーてと、俺はまず何からすればいーんだっけ?
あ!そうだそうだ。まずは仕込みからだった。
周りの壁をよじ登って学校に侵入した俺は、素早くグラウンドの隅にある体育倉庫に忍び込んだ。
体育倉庫は、ちょうどグラウンドをはさんで、校舎の対角にある。
裏手にある窓を壊さなきゃダメかと思ったけど、扉が開いてたからそこから入れた。
まあ、もう施錠の必要なんてないんだろうよ。
カラーコーンやサッカーボールが大量に入ったカゴなど、体育や部活で使う用具が置いてある。
「えっと、あ、これこれ」
グラウンドにラインを引く石灰が入った袋を見つける。
全部で3袋ある。
過剰発注だろ。ちゃんと仕事しろよ。
ま、今回はありがたいけどよ。
「さて、そしたら、こいつをっと」
新一特製の導火線を取り出して、片方の端を部屋の真ん中あたりに置いて、もう片方の端を入口正面の窓から外に出す。
「んで、」
一旦、外に出て裏手に回り、窓から出ている導火線を引き出し、登ってきた壁を越えるように投げて、学校の外側に出るようにする。
その後、再び体育倉庫に戻り、部屋の真ん中に置いた導火線に発火装置を取り付ける。
そこに、石灰を多少バラまく。
「さて、こっからは時間勝負か」
準備を整えた俺は、軽く準備運動をする。
今ごろ、悟も準備を終えて、保健室に戻っている頃だろうか。
新一はどの辺かな?
「ま、いっか」
新一の奴、一番危ない役目を押し付けやがって。
何が、お前が一番足が早いから、だよ。
まんまとノセられた俺も俺だけどよ。
「いっくぜー!」
俺は石灰の入った袋を持って、中身を思いっきり空中に振り撒いた。
続けて、残りの2袋もばらまく。
「げぇっほ!げほっ!」
盛大にむせながら体育倉庫を出て、入口を締める。
そして、急いで裏手に回り、登ってきた壁を再び登る。
壁のてっぺんまで来たら、導火線の先をつかんで、持ったまま外に飛び降りる。
「ほいっと」
着地した瞬間、すぐに導火線に火をつける。
ちゃんと着火したのを確認すると、正門側に向けて走り出す。
火のついた導火線は徐々にその長さを縮めていく。
俺は正門を通り過ぎ、新一が登った壁まで走る。
正門には見張りが2人いたが、全速力で走り抜ける俺を見送るだけで、何かをすることはなかった。
この2人に俺の姿を見せることに意味があるらしい。
「……そろそろか」
俺が角を曲がる直前で、導火線の火が発火装置まで届く。
そして、宙に舞う石灰に、発火した火花が爆ぜ、体育倉庫を一気に吹き飛ばした。
「な、なんだ!?」
「ば、爆発したんじゃないか!?」
とんでもない爆音に、学校全体が揺れるのを感じる。
校舎の方から生徒の悲鳴が聞こえる。
入口の見張りはきっと爆音のした方向を確認しに行く。
つまり、俺が立ち去ったことだけを記憶するのだ。
まさか、すぐに角を曲がって、再び校舎に侵入してくるとは思わないだろう。
実行犯は走って逃げた。
もしも今回の作戦が失敗した時、悟を助けるために、その証言が必要らしい。
失敗する気なんてないくせに。
そう思ったが、俺は言わないでおいてやった。
工場の件があってから、新一は躊躇がなくなった。
あれはヤバい方に行こうとしてるかもしれない。
しかも、それに気付いてるのはきっと俺だけだ。
「やれやれ、損な役回りだよな」
俺は苦笑しながら、新一が残してくれたルートを通って、校舎に侵入していった。




