33.演技
俺はあらかじめ決めておいた内容を説明する。
「実は、ここに向かう途中、2人組みの男に絡まれたんです。
誰かと一緒なのか?
食糧はないのか?って」
困ったような顔をして話を進める。
三枝木は探るような目付きで俺の話を聞いている。
「俺は、今まで1人で隠れてて、食糧がなくなったから出てきたって言いました。
男たちは舌打ちをして去っていきましたが、俺が嘘をついてるって思って、ツケてきてたのかもしれません。
それで、学校に人が大勢いるのを見て、仲間を引き連れてきたのかも!」
最後は頭を抱えるようにして言う。
少し演技くさかっただろうか?
三枝木は顎に手を当てて考えているようだった。
深く考えさせる時間は与えない。
「三枝木先生!
俺にチャンスをください!」
「チャンス、ですか」
俺は三枝木にすがるように嘆願する。
「俺の責任であいつらを招いてしまったんです!
俺があいつらを倒します!
一度だけ、チャンスをください!
お願いします!」
「…………」
俺は地面に頭をつける。
表情が読まれないから、この方が都合が良い。
「……まあ、良いでしょう」
「ありがとうございます!」
三枝木はしぶしぶといった様子だが、了承してくれた。
「しかし、相手は4人です。
武器や、手伝いを貸しましょうか?」
「いえ!大丈夫です!
正面から戦わなければ、何とかなります!」
「それは、何とも心強いですね」
はっきりと言い切った俺に、三枝木は無理やりな笑顔を見せた。
当然、何とかなるさ。
出来レースだからな。
「ぐわぁー!
やられたー!」
「うおー!
いてー!」
「な、なんだこのガキー」
……皆さん、演技下手くそですね。
見に来てるのが三枝木じゃなくて、さっきの女の先生で良かった。
この人なら、何とかなる。
まあ、三枝木は万が一にも、自分に危険が迫ることはしないだろうからな。
「このやろー。
ふざけやがってー」
4人中3人をのした所で、最後の1人がバタフライナイフを取り出す。
「ひぃっ!」
様子を見ている先生が怯えている。
「ひゅっ!」
「ぎゃっ!」
ナイフで刺してきた男性の腕を巻き取り、一本背負いを決める。
すいませんね、ちょっとはリアリティを出さないとなんで。
「さて、」
俺は倒した4人をヒモで拘束した。
「す、すごいじゃない!
悟くん!」
先生が興奮した様子で近付いてくる。
「きゃっ!
う、腕、ケガしてるじゃない!」
先生が俺の二の腕についた傷を見て声を上げた。
切られた傷口からは、ツーッと血が滴っている。
「ああ。
ちょっと引っ掛けてしまいました。
まだまだですね」
俺は照れ笑いをしながら傷口を抑える。
「ちょっと手当てしてきますね。
彼らのこと、お願いしていいですか?」
「え、ええ」
俺は先生に拘束した男性たちを託して保健室に向かう。
「いてて」
わざと切られたとはいえ、やっぱり痛いは痛い。
俺は保健室にあった消毒液と包帯でキズの手当てをする。
「さて、監視も外れたし、これで自由に動けるな」
俺は保健室のドアに内側からカギをかけて、窓から抜け出す。
誰かが様子を見に来るまで15分って所か。
その間に、仕込めるだけ仕込むとするか。
「頼むぞ、新一。京也」




