表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/45

27.駅クライシス

「……うっ!」


 男性がゆっくりと目を開ける。


「気が付きましたか?」


「……ここは?」


 男性は目だけをキョロキョロして周囲を見渡している。


「あなたは俺たちの家を訪ねてきて、玄関で気を失ったんです」


「ああ……。


そうだ!

私は!

……ぐあっ!」


 男性は勢い良く起き上がろうとしたが、全身に痛みが走って、再び布団に沈んだ。


「無理しないでください。

一応、応急処置はしましたが、それでも安静が必要な状態です」


 俺がそう言うと、新一と京也も部屋に入ってきた。

 京也はお粥の入った鍋をのせたお盆を持っていた。


「まずは栄養をつけましょう。

水から、ゆっくりで構わないので」


 俺がそう言うと、男性はひどく驚いた顔をした。


「い、いいのか?

そんな貴重なものを」


「まだ備蓄はありますから、気にしないでください」


「ありがとう。

ありがとう」


 俺が表情を柔らかくして伝えると、男性は何度も頭を下げた。



「あーあ。

その様子じゃ、やっぱり駅は崩壊しちまったのかー。

あの悪魔どもをぶっ殺すのに、警察官の力も借りたかったんだけどなー」


 京也の軽口に、男性は信じられないとでも言いたげな顔をした。


「殺す?

君たちは、あの恐ろしい悪魔を倒すつもりなのか?」


「まあ、そうですね。

負の連鎖を断ち切るには、元凶を叩かなければならないでしょうから」


 俺の言葉に、男性は首を横に振った。


「無理だ。

奴らには勝てない。

銃だって効かなかったんだ」


「やはりか」


 男性の呟きに、新一がぼそりと呟く。


「……まずは食べてください。

詳しい話はそのあとにしましょう」


 俺がそう言うと、男性は頷き、お粥に手をつけ始めた。








「ありがとう。

とても美味しかったよ」


 お粥を米粒ひとつ残さず食べきった男性は、ようやく一息ついたようだった。


「それで、駅で、いったい何があったんですか?」


 俺はその様子を見て、事の詳細を尋ねることにした。


「ああ。

それは…………」


男性は、ゆっくりと口を開いて、駅で起きたことを話し出した。










 君たちが来て数日後には、販売できる分の食糧はなくなってね。

 我々警察官やスーパーの方々はあらかじめ自分たちの分は最低限確保していたから、そこからは消費生活だった。

 とはいえ、避難所指定されている場所には保存食もあったから、かなりの人数が駅の周辺にはいたが、十分やっていけるはずだったんだ。


 そこで問題になってくるのは、逃走者の存在だ。

 周りも、本人たちも、やはり気が気じゃなくなるからね。

 だから我々は、彼らを隔離することにした。

 内側から鍵がかけられて、外からは開けられない部屋に集まってもらった。

 密告は逃走者がそこにいなければ、呼んだ者が罰せられる。

 こうすることで、逃走者は自分で自分を守ることが出来るんだ。

 そして、お題が変われば、新たな逃走者と入れ換わる。

 それで、その問題はクリアになった。


 その後も、我々は細々と生活を続けていたんだが、ある日、事件は起きた。

 お題が変わって、今まで逃走者だった者が、自分がそうでなくなって、新たな逃走者と入れ換わる瞬間に、鬼を呼んだんだ。


 そこからはもう地獄だよ。

逃走者が1ヶ所に集まっていたことが災いし、鬼はあっという間に彼らを蹂躙した。

 我々警察官も応戦したが、奴らには銃もいっさい効かず、逃走者を捕まえる邪魔をしたと認定されて、次々に仲間も殺されていった。

 そして、その時を狙ったかのように、多数の学生が武器を持って攻めてきたんだ。

 いま思えば、鬼を呼んだのも、若い学生だったような気がする。

 彼らは突然の事態に混乱する人々を容赦なく殴り付け、次々と捕縛していった。

 その頃にはもう鬼はどこかに行っていたが、我々は鬼との戦いで銃の弾をほとんど使いきってしまっていて、ろくに応戦できなかった。


 そして、私も彼らに捕まって、学校に連れていかれたんだ。

 そこで、彼らのボスであろう男に拷問を受けた。

 学生が先生と呼んでいたから、きっと教師なんだろう。

 その男は私に全ての食糧の場所と、把握している人間の居場所を尋ねてきた。

 ああ。ここのことは言わなかったから安心してくれ。そもそも知らなかったしね。

 最初に喉を潰されて、何度も痛め付けられて、筆談で私から搾り取れる情報がなくなったと見たら、男は私に条件を突き付けてきた。


 服従か生け贄か。


 私は服従を選んだ。

 まずは生き繋いでチャンスを待とうと思って。

 すると、男はさらに条件を提示してきた。

 生け贄を2人以上連れてくれば、服従したことを認めよう。そうでなければ、仲間を殺そう、と。

 私はそれを仕方なく受け入れ、学校から解放された。

 もちろん、誰かを犠牲にするつもりなんてなかった。

 だが、私一人ではどうにもならない。

 仲間を探さなければと、街中をさ迷ったんだ。

 人には何組か会えたが、話さえ聞いてもらえないことがほとんどで、話を聞いてくれても、手を貸してくれる人はいなかった。

 まあ、当然だな。

 そんなの、死にに行くようなものだ。

 それで途方に暮れていた時に、ある少女に出会ったんだ。

 彼女は、自分には守らなければならない人がいるから手伝うわけにはいかない。

 でも、手を貸してくれるかもしれない人たちを紹介することなら出来ると言って、ここを教えてくれたんだ。

 彼女は私のケガの手当てをしてくれようとしたが、私は急いでここに行きたかったから、丁重にお礼だけを言って、逃げるように別れたんだ。

 そうして、何とかここにたどり着いて、ドアを叩いてるうちに、意識が遠退いてしまった、というわけだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ