第39話 魔法理論
「なぜ」
「火魔法は」
「燃えるのでしょうか」
ネクシラが。
赤い魔石を。
掲げている。
教室は。
静かだった。
……。
なぜ。
火魔法は。
燃える。
火だから。
そんな答えでは。
ないはずだ。
俺は。
ペンを持った。
◇◇◇
「では」
「分かる人は?」
何人かの。
手が上がった。
前の方に。
座っている。
ゴールドクラスの。
男子生徒が。
指名される。
「火属性の魔力が」
「熱を生み出すからです」
「そうですね」
ネクシラは。
否定しなかった。
「では」
「なぜ」
「火属性の魔力は」
「熱を生み出すのでしょう」
……。
男子生徒が。
黙った。
教室の。
空気が。
少し変わる。
「皆さんには」
「この授業で」
「今のような」
「問いに対する」
「考えや理解を」
「深めてもらいます」
ネクシラは。
黒板に。
六つの文字を。
書いた。
火。
水。
風。
土。
光。
闇。
「皆さんは」
「すでに」
「魔法を使えます」
「魔力を集め」
「属性を与え」
「術式を組み」
「現象として発動する」
「一回生で」
「そう学びましたね」
その通りだ。
俺も。
そう習った。
「ですが」
ネクシラが。
黒板を。
軽く叩く。
「使えることと」
「仕組みを理解していることは」
「同じではありません」
「魔法理論学では」
「魔法が使える仕組みを」
「理解し」
「自身の魔術に」
「応用していく事を」
「学んでいただきます」
……。
俺は。
この世界では。
魔法を。
使えている。
だが。
使えていても。
なぜ使えるのか。
その仕組みは。
分かっていない。
面白い。
俺は。
黒板を見る。
◇◇◇
「まず最初に」
「魔法は」
「アルセリアそして」
「それ以外の様々な国で」
「長年研究されてきました」
「しかし」
「その仕組みは」
「まだ」
「完全には解明されていません」
「今も」
「研究は続けられています」
「もしかしたら」
「この学園を卒業後」
「魔法研究者として」
「活躍する人も」
「この中にはいるでしょう」
……。
ネクシラは。
黒板に板書しながら。
話を続ける。
「魔法には」
「大きく分けて」
「三つの要素があります」
ネクシラが。
黒板に。
書き足す。
――魔力。
――属性。
――術式。
「魔力は」
「力の源」
「属性は」
「魔力に性質を与えるもの」
「そして術式は」
「性質を持った魔力を」
「現象として構築する」
「設計図のようなものです」
俺は。
ノートに。
書き写す。
魔力。
属性。
術式。
三つ。
「上級魔法になるほど」
「高度な術式が必要になります」
……。
ここで。
俺は。
疑問をもった。
同じ火魔法。
例えば。
下級火魔法。
ファイア・ボールを使う場合。
使う魔術師によって。
大きく違う。
威力。
速度。
範囲。
持続時間。
同じ魔法でも。
結果は。
変わる。
なら。
それを。
決めているものは。
何だ。
俺は。
手を上げた。
ネクシラが。
こちらを見る。
「レオンさん」
「何でしょうか?」
「同じ属性で」
「同じ術式を使った場合」
「威力や速度の差は」
「何で決まる?」
「魔力量」
「魔力制御力」
「そして発動者の習熟度」
「これらの要素が関係します」
「なら」
「それぞれを」
「数値化できるのか?」
教室が。
少し。
静かになった。
ネクシラが。
俺を見る。
「いい質問ですが…」
「今はまだ」
「できない部分が多いですね」
「感覚的な部分に」
「大きく依存しています」
「ですが」
「数値にできないからといって」
「法則がないとは」
「限りません」
……。
ネクシラは。
淡々と。
答えた。
「魔力量は測れます」
「術式も確認する事ができます」
「ですが」
「同じ人間が」
「同じ魔法を使っても」
「体調や」
「精神的な状況によって」
「結果は変わります」
疲労。
集中。
恐怖。
環境。
経験。
判断。
……。
確かに。
条件が。
多い。
そう。
思った時だった。
「でも」
隣から。
声がした。
「ある程度なら」
「整理できるんじゃない?」
……。
俺は。
横を見る。
サラが。
こちらを見ていた。
◇◇◇
「例えば」
サラが。
俺のノートを。
勝手に覗き込む。
近い。
「火球なら」
「大きさと」
「速度と」
「温度と」
「持続時間を分ける」
「それで」
「使った魔力量も記録する」
「何回もやれば」
「何か見えるかもしれないよ」
……。
声もでかい。
皆が。
こちらを。
見ている。
俺は。
サラを見る。
さっきまで。
ネクシラの話を。
聞いていたはずだ。
「授業中だぞ」
「うん」
「なら」
「でかい声をだすな」
「そして」
「前を向け」
「でも」
「今の話」
「気にならない?」
気になる。
だが。
今。
俺に。
話しかける必要は。
ない。
「あとにしろ」
「え~」
「今、話した方が」
「面白いのに」
サラは。
しぶしぶ前を向いた。
だが。
三秒後。
「土や闇でも」
「同じことできるかな」
……。
こいつ。
人の話を。
聞かないタイプか。
「あとにしろ」
「分かった」
面倒だ。
だが。
考え方は。
悪くない。
俺は。
ノートの端に。
小さく。
書いた。
――大きさ。
――速度。
――温度。
――持続時間。
――魔力量。
そして。
その横に。
――他属性でも比較。
と。
付け加えた。
◇◇◇
授業は。
続いた。
「現在の魔法理論では」
「六属性の性質は」
「おおよそ」
「次のように整理されています」
火は。
熱と燃焼。
水は。
流動と冷却。
風は。
移動と圧力。
土は。
形状と強度。
光は。
照射と浄化。
闇は。
遮断と干渉。
ネクシラは。
それぞれの。
基本的な性質を。
説明していく。
俺は。
聞きながら。
ノートに。
線を引いた。
六つの属性。
それぞれに。
特徴がある。
なら。
同じ基準で。
並べたら。
どうなる。
威力。
速度。
範囲。
持続。
消費魔力。
制御難度。
環境との相性。
……。
まだ。
足りない。
もっと。
項目がある。
「レオンさん」
ネクシラの。
声がした。
俺は。
顔を上げる。
「集中しているようですね?」
「今」
「何を書いていたのです?」
俺は。
ノートを見る。
六属性の。
名前。
その横に。
いくつもの。
項目。
まだ。
表にも。
なっていない。
ただの。
走り書き。
「整理していた」
「何を?」
「六属性の」
「比較と分類だ」
ネクシラが。
少し。
黙った。
「まだ」
「教えていませんよ」
「だから?」
教室の。
どこかで。
小さく。
笑い声がした。
ネクシラは。
笑って。
言った。
「魔法理論に」
「大きく興味があるようですね」
「大変」
「いいことです」
「でも」
「授業は」
「しっかり聞きましょう」
……。
隣を見ると。
サラが。
笑っていた。
「何だ」
「別に」
「君」
「面白いなって」
意味が分からない。
やはり。
こいつは。
苦手だ。
◇◇◇
授業が。
終わった。
生徒たちが。
教室を。
出ていく。
俺は。
席に残った。
ノートを見る。
――魔力。
――属性。
――術式。
面白い。
だが。
まだ。
何も。
分からない。
だから。
調べる。
検証する必要がある。
まずは。
六属性。
同じ基準で。
比較する。
そこからだ。
俺は。
ノートを。
閉じようとした。
「ねえ」
……。
まだ。
いたのか。
サラが。
俺の横に。
立っている。
「さっきの」
「見せてよ」
「何を」
「六属性を」
「整理してたやつ」
「まだ何もできていない」
「だから~♪」
「私と一緒に考えようよ!」
……。
俺は。
サラを見る。
満面の笑みを。
浮かべている。
意味が分からない。
「なぜ」
「お前と一緒に」
「考える必要がある」
「だって」
「一人より」
「二人の方が」
「面白そうでしょ」
即答だった。
……。
本当に。
面倒だ。
だが。
こいつは。
高い。
魔術の。
潜在能力がある。
それに。
さっきの。
考え方も。
悪くなかった。
……。
使えるかもしれない。
俺は。
閉じかけた。
ノートを。
もう一度。
開いた。




