第38話 全部
翌日。
俺は。
選択授業申請書を。
バルド先生の。
机に置いた。
「……レオン」
「はい」
バルド先生が。
紙を見る。
上から。
下まで。
もう一度。
見る。
「これは何だ」
「選択授業の申請書だ」
「それは分かっている」
紙が。
机の上に。
置かれた。
「なぜ」
「全部に印がついている」
「全部受けるからだ」
教室の。
どこかから。
笑い声がした。
「駄目だ」
即答だった。
……。
「なぜだ」
「レオン」
「選択授業という言葉の意味は分かるか」
「複数の授業から」
「自分が必要なものを選ぶ授業だ」
「分かってるじゃないか」
「だから」
「全部必要だと判断した」
バルド先生が。
額に。
手を当てた。
……。
何がおかしい。
「全部受けても問題ないはずだ」
「問題ある」
バルド先生が。
俺を見る。
「時間が足りない」
「やれる」
「そういう話じゃない」
「俺は」
「できる」
「できるかどうかを」
「聞いているんじゃない」
……。
俺は。
自分を。
《潜在解析》で。
見ることはできない。
何が。
自分に向いているか。
まだ。
分からない。
だから。
全部。
やる。
一回生の時と。
同じだ。
◇◇◇
バルド先生は。
あきれた顔で。
俺に。
再度。
説明する。
「専門武器は」
「一つ」
「応用魔法も」
「一つだ」
申請書を。
俺に返す。
「選び直せ」
俺は。
紙を見る。
剣。
槍。
杖。
盾。
弓。
格闘。
魔法も。
同じだ。
火。
水。
風。
土。
光。
闇。
一つだけ。
選ぶ理由がない。
「先生」
「何だ」
「全部は」
「本当に駄目か?」
「駄目だ」
……。
仕方ない。
俺は。
一回生の。
最終試験を。
思い出す。
剣術。
四位。
武器の中では。
一番高かった。
なら。
剣だ。
俺は。
剣術に。
印をつける。
次に。
魔法。
一番高いのは。
闇だ。
俺は。
闇属性に。
印をつけた。
「これでいいか」
バルド先生が。
紙を見る。
「剣術と闇魔法か」
「ああ」
「理由は?」
「一回生で」
「一番順位が高かったからだ」
バルド先生が。
少しだけ。
眉を動かした。
「……まあいい」
申請書を。
受け取る。
「今度は受理する」
「そうか」
俺は。
席を立った。
そして。
少し考えた。
――授業ではやらない。
選択できないなら。
それが。
ルールというのなら。
仕方がない。
だが。
授業で。
学べないものは。
自分で学べばいい。
槍も。
杖も。
盾も。
弓も。
格闘も。
火も。
水も。
風も。
土も。
光も。
捨てる必要はない。
時間は。
自分で作る。
本もある。
訓練場もある。
一回生で。
基本は学んだ。
《叡智庫》もある。
授業で。
専門的に学ぶのは。
剣と闇。
それ以外は。
自分で学ぶ。
それでいい。
前世でも。
時間は。
常に。
足りなかった。
会議。
営業。
採用。
商品開発。
資金調達。
顧客対応。
全部。
重要だった。
だから。
俺が。
全部。
関わって。
判断した。
……。
結果として。
会社は。
大きくなった。
……。
問題はない。
◇◇◇
数日後。
二回生になって。
最初の。
魔法理論の授業。
俺は。
教室に入った。
いつもの。
アイアンクラスの教室ではない。
階段状に。
机が並ぶ。
少し広い。
教室。
前には。
大きな黒板。
その横に。
六つの。
魔石が置かれている。
赤。
青。
緑。
茶。
白。
黒。
おそらく。
六属性を。
示している。
俺は。
誰もいない。
最前列の。
真ん中に。
座った。
周囲には。
アイアンクラスだけではない。
ブロンズ。
シルバー。
そして。
ゴールドの。
生徒もいる。
魔法理論は。
クラス合同か。
悪くない。
授業内容に。
クラスの評価は。
関係ない。
必要なのは。
知識だ。
俺は。
机の上に。
教本と。
ノートを置く。
その時。
隣に。
生徒が。
座った。
そして。
その。
生徒が。
俺に。
声をかけてきた。
「おはよう」
「君も」
「この授業に」
「興味があるの?」
胸には。
シルバー色の。
バッジ。
赤毛の。
女性。
こちらを見ている。
「ああ」
「魔法理論には」
「興味がある」
そう答えた。
「私も!」
「この授業」
「とっても楽しみにしてたんだ」
「あ、私は」
「サラよ」
「サラ・フォン・リーベルト」
「よろしくね」
目を輝かせて。
俺に。
話しかけてくる。
面倒だ。
《潜在解析》
【個体名:サラ・フォン・リーベルト】
【年齢:十四歳】
【身体能力:D/潜在C+】
【魔力量:B+/潜在A+】
【魔力制御:B/潜在A+】
【土属性魔法:Bー/潜在B】
【水属性魔法:E/潜在A+】
【闇属性魔法:C+/潜在B+】
こいつ。
魔術系の。
潜在が高いーー。
そう。
考えていた時。
扉が開いた。
入ってきた人物を見て。
俺は。
少しだけ。
眉を寄せた。
……。
ネクシラ。
王立学園。
副学園長。
そして。
俺が。
あまり。
好きではない教師だ。
ネクシラが。
教壇に立つ。
教室を。
ゆっくりと。
見渡した。
そして。
俺のところで。
一瞬。
視線が止まった。
気がした。
「では」
ネクシラが。
黒板に。
文字を書く。
――魔法理論。
「二回生の」
「魔法理論を」
「始めます」
俺は。
背筋を。
少し伸ばした。
ネクシラは。
黒板の横にある。
赤い魔石を。
手に取った。
「最初に」
「皆さんに」
「一つ質問をします」
教室が。
静かになる。
「なぜ」
ネクシラが。
赤い魔石を。
掲げた。
「火魔法は」
「燃えるのでしょうか」
……。
俺は。
黒板を見た。
なぜ。
火魔法は。
燃える。
そんなこと。
考えたことがないわけではない。
だが。
答えは。
知らない。
俺は。
ペンを持った。
面白い。




