第33話 強い個人、強い集団
大魔導晶に。
巨大な。
闘技場が。
映っている。
七つの。
国旗。
その下に。
各国の。
代表たちが。
並んでいた。
アルセリア王国。
ヴァルガ帝国。
エルディア魔法国。
ガルド王国。
セレスティア聖王国。
ノルディア王国。
ラグナ海洋国。
講堂の。
あちこちから。
歓声が。
上がる。
「始まるね」
隣で。
アレンが。
身を乗り出した。
俺は。
黙って。
大魔導晶を。
見つめる。
アルセリアの。
代表は。
弱くない。
他国を相手に。
どこまで。
やれるのか。
見てみたい。
◇◇◇
最初に。
行われたのは。
個人競技だった。
武術。
魔法。
一対一。
アルセリアの。
選手は。
強かった。
「入った!」
講堂に。
歓声が響く。
剣術代表の。
六回生が。
相手の剣を。
弾き。
そのまま。
喉元へ。
剣を突きつけた。
勝利。
「すごい!」
アレンが。
立ち上がる。
「座れ」
「だって!」
「見えない」
「あ、ごめん」
アレンが。
座る。
次の。
槍術競技でも。
アルセリアは。
勝った。
魔法競技でも。
六回生の。
女子生徒が。
大きな火球を。
正確に。
標的へ。
叩き込む。
勝利。
講堂の。
空気が。
一気に。
明るくなる。
「強いじゃん!」
「今年」
「いけるんじゃないか?」
周囲から。
声が聞こえる。
俺も。
同じことを。
考えていた。
やはり。
弱くない。
十分。
戦えている。
◇◇◇
だが。
妙な選手が。
一人いた。
ヴァルガ帝国。
剣術競技。
大魔導晶に。
映ったのは。
幼さが残る。
少年だった。
……。
俺たちと。
同じくらいだ。
「アレン」
「何?」
「あいつ」
「何歳だ」
アレンが。
大魔導晶の横に。
表示された。
選手情報を見る。
そして。
目を見開いた。
「十三歳……」
……。
十三。
俺たちと。
同じ。
「一回生?」
「たぶん」
講堂が。
ざわつく。
七国武競祭の。
代表は。
ほとんどが。
五回生か。
六回生。
その中に。
十三歳。
ヴァルガ帝国は。
一回生を。
代表に。
選んでいる。
「そんなに」
「強いのかな」
アレンが。
呟く。
俺は。
答えなかった。
分からない。
大魔導晶越しでは。
《潜在解析》は。
使えない。
◇◇◇
その。
少年の
相手は。
ガルド王国の。
六回生。
大柄な。
男子生徒。
体格だけなら。
ヴァルガの少年より。
二回りは。
大きい。
開始の。
合図。
次の瞬間。
少年が。
消えた。
そして。
剣が。
一度。
光る。
ガルドの。
剣が。
宙を舞った。
……。
静寂。
少年の剣先は。
すでに。
相手の。
喉元にあった。
勝負。
終了。
「……え?」
アレンが。
呟く。
講堂も。
静かだった。
早すぎて。
何が起きたのか。
分からなかった者も。
多いのだろう。
俺は。
大魔導晶を。
見つめる。
強い。
それも。
かなり。
十三歳。
同じ年齢。
今の。
俺が。
あいつと。
戦ったら。
……。
間違いなく。
勝てない。
「すごいね」
アレンが。
小さく言った。
「ああ」
俺は。
それだけ。
答えた。
◇◇◇
個人競技は。
その後も。
続いた。
アルセリアは。
勝ったり。
負けたり。
それでも。
大きく。
崩れることは。
ない。
七国の中でも。
十分。
戦えている。
そして。
競技は。
集団戦へ。
移った。
最初は。
三人一組の。
小隊戦。
三人で。
相手の陣地へ。
入り。
中央に置かれた。
旗を。
奪う。
単純な。
競技。
アルセリアの。
三人が。
並ぶ。
剣。
槍。
魔法。
どれも。
個人競技で。
結果を。
出していた。
「これは」
「勝てそうだね」
アレンが。
言う。
俺も。
そう思った。
開始。
剣士が。
前へ出る。
槍使いも。
別方向から。
進む。
魔法使いが。
後方から。
火球を放つ。
……。
悪くない。
それぞれ。
動けている。
だが。
相手。
ノルディア王国の。
三人は。
違った。
一人が。
前へ出る。
二人が。
その動きに。
合わせる。
アルセリアの。
剣士が。
攻める。
その瞬間。
ノルディアの。
一人が。
受ける。
もう一人が。
横へ回る。
三人目が。
旗へ走る。
「後ろ!」
講堂から。
声が上がる。
だが。
届かない。
アルセリアの。
槍使いが。
戻ろうとする。
その進路を。
相手が。
塞ぐ。
魔法使いが。
援護しようと。
魔法を構える。
だが。
剣士が。
射線に入る。
撃てない。
……。
噛み合っていない。
動きが。
重なる。
互いに。
邪魔をする。
数分後。
ノルディアが。
旗を奪った。
アルセリア。
敗北。
講堂が。
静かになる。
「惜しかったね」
アレンが。
言う。
惜しい?
違う。
個人能力では。
負けていなかった。
それなのに。
試合そのものは。
明確に。
負けていた。
◇◇◇
次の。
集団競技。
五人で行う。
攻略戦。
決められた。
地形の中で。
相手より先に。
複数の。
目標地点を。
制圧する。
アルセリアの。
五人。
対する。
セレスティア聖王国。
五人。
開始の合図。
セレスティアは
一人の。
合図で。
二人が動き。
残りが。
援護する。
役割が。
明確だ。
攻める者。
守る者。
支える者。
全員が。
自分の。
やることを。
理解している。
一方の
アルセリアは。
小隊戦と同様に。
動きが。
かみ合っていない。
結果。
アルセリアは。
また。
負けた。
◇◇◇
「なんでだろう」
「勝てない試合じゃないと思うんだけど」
アレンが。
呟いた。
俺も。
同じことを。
考えていた。
一人ずつ。
見れば。
アルセリアも。
強い。
剣士も。
槍使いも。
魔法使いも。
能力は。
低くない。
個人競技では。
実際に。
勝っている。
なのに。
集まると。
弱い。
なぜだ。
何が。
足りない。
◇◇◇
そして。
最後の。
戦術競技。
アルセリアの。
相手は。
ヴァルガ帝国だった。
講堂の。
空気が。
変わる。
ヴァルガの。
代表の中に。
あの少年が。
いた。
十三歳。
一回生。
個人競技で。
六回生を。
一瞬で。
倒した。
少年。
「また出るんだ」
アレンが。
言う。
五人対五人。
中央には。
複数の。
障害物。
相手陣地の。
標章を。
奪えば勝ち。
開始。
ヴァルガの。
少年が。
前へ出る。
一人で。
他の四人は。
動かない。
……。
何だ?
少年は。
そのまま。
アルセリアの。
陣地へ。
向かっていく。
「一人で?」
隣で。
アレンが。
呟く。
アルセリアも。
気づいた。
当然だ。
五人で戦う。
競技。
その中で。
一人だけ。
敵陣へ。
突っ込んでくる。
迎え撃つ。
アルセリアの。
剣士が。
前へ出る。
少年が。
加速する。
速い。
剣士が。
剣を振る。
だが。
当たらない。
少年の。
身体が。
沈む。
次の瞬間。
剣士の。
身体が。
宙に浮いた。
「なっ――」
倒れる。
一人。
少年は。
止まらない。
二人目。
槍使いが。
前へ出る。
突き。
少年が。
半歩。
ずれる。
槍が。
空を切る。
そのまま。
懐へ。
入る。
一撃。
二人目も。
倒れる。
……。
何だ。
これは。
三人目。
魔法使い。
「三連」
「イグニート・ジャベリン!」
三本の。
巨大な炎の槍が。
三方向から。
少年へ。
飛ぶ。
少年は。
避けない。
前へ。
出る。
炎の槍が。
迫る。
その直後。
一歩。
二歩。
身体を。
滑らせる。
三本の炎が。
少年の。
すぐ横を。
通り過ぎる。
その時には。
少年は。
魔法使いの。
懐にいた。
一撃。
三人目。
倒れる。
速い。
いや。
それだけじゃない。
相手が。
何をするのか。
分かっているように。
動いている。
アルセリアの。
残り二人が。
標章を。
守る。
少年は。
一人。
対して。
二人。
一人が。
前へ。
もう一人が。
標章を。
守る。
少年が。
前の一人へ。
向かう。
剣が。
振られる。
少年が。
受ける。
金属音。
次の瞬間。
剣が。
弾かれた。
少年が。
踏み込む。
四人目。
倒れる。
最後の一人。
標章の。
前。
少年を見る。
動かない。
いや。
動けない。
少年が。
歩く。
一歩。
また。
一歩。
最後の一人も。
魔法で。
迎え撃つ。
だが。
一瞬だった。
少年の姿が。
消えたように。
見えた。
次に。
見えた時には。
少年は。
アルセリアの。
最後の一人を。
通り過ぎていた。
その手には。
標章。
……。
静まり返る。
大魔導晶の。
向こう側。
ヴァルガの。
闘技場も。
こちらの。
講堂も。
誰も。
声を。
出さない。
少年が。
奪った標章を。
持ち上げる。
闘技場を埋め尽くす。
ヴァルガの生徒が。
大歓声を挙げる。
終了。
五人対五人。
だった。
それを。
一人で。
終わらせた。
残りの。
四人は。
最後まで。
ほとんど。
動いていない。
「……強い」
アレンが。
呟いた。
強い。
そんな。
言葉だけでは。
足りない。
十三歳。
俺と。
同じ。
年齢。
なのに。
アルセリアの。
代表五人を。
一人で。
倒した。
しかも。
これは。
個人戦ではない。
集団戦だ。
それを。
一人の力で。
壊した。
……。
到底。
今の俺には。
無理だ。
同じ年齢の。
人間を見て。
初めて。
はっきりと。
思った。
レベルが。
違う。
……。
一人では。
複数相手には。
勝てない。
そういう。
競技のはずだ。
だが。
あいつは。
一人で。
終わらせた。
……なら。
圧倒的に。
強ければ。
集団など。
必要ないのか?
◇◇◇
大会は。
その後も。
続いた。
だが。
俺の頭から。
あの少年が。
離れなかった。
個人では。
アルセリアも。
弱くない。
実際。
個人競技では。
勝っている。
だが。
集団になると。
勝てない。
ノルディア。
セレスティア。
あいつらは。
一人一人が。
アルセリアより。
圧倒的に。
強かったわけではない。
それでも。
集団では。
アルセリアより。
強かった。
なら。
集団には。
個人の能力とは。
別の。
何かが。
必要なのか。
役割。
連携。
……それだけか?
分からない。
だが。
ヴァルガの。
あの少年。
あいつだけは。
違った。
役割も。
連携も。
必要としなかった。
一人で。
五人を。
倒した。
……。
ふと。
前世のことを。
思い出した。
――クロノス・テクノロジーズ。
あの会社で。
俺は。
ほとんどのことを。
自分で。
決めていた。
誰よりも。
考え。
誰よりも。
判断し。
誰よりも。
結果を出す。
俺が。
一番であればいい。
そう。
思っていた。
実際。
会社は。
大きくなった。
だから。
俺は。
間違っていないと。
思っていた。
……。
少し。
あの少年が。
昔の俺と。
重なった。
俺は。
大魔導晶を。
見つめる。
個人の。
強さ。
集団の。
強さ。
……。
何が。
違う。
答えは。
まだ。
分からなかった。




