第32話 七国武競祭
「七国武競祭だよ」
アレンは。
笑って。
言った。
……。
七国。
武競祭。
なんだそれ。
俺は。
もう一度。
窓の外を。
見た。
王国の旗を。
掲げた馬車。
騎士。
教師。
そして。
五回生。
六回生の。
生徒たち。
「何だ」
「それは」
俺が聞くと。
アレンが。
目を丸くした。
「本当に」
「知らないの?」
「入学式の時に」
「シモン学園長も」
「言ってたでしょ」
「知らん」
「そっか」
アレンが。
笑う。
「じゃあ」
「僕が教えるよ」
◇◇◇
七国武競祭。
四年に一度。
ヴァレスティア大陸の。
七つの国が。
代表を送り。
武術。
魔法。
そして。
集団戦術。
様々な競技で。
力を競う。
大会。
始まったのは。
およそ。
二百年前。
今回で。
第四十八回。
開催国は。
持ち回りで。
変わる。
そして。
今回の開催国は。
――ヴァルガ帝国。
「七国っていうのは」
アレンが。
指を折る。
「僕たちの」
「アルセリア王国」
「ヴァルガ帝国」
「エルディア魔法国」
「ガルド王国」
「セレスティア聖王国」
「ノルディア王国」
「ラグナ海洋国」
七国。
ヴァレスティア大陸を。
構成する。
主要国家。
そのすべてが。
参加する。
「何のために」
「そんなことをする?」
「何のため?」
アレンが。
少し考える。
「一番は」
「交流かな」
交流。
「四年に一度」
「七つの国の」
「若い人たちが集まって」
「競い合うんだ」
「それに」
「他の国の」
「武術や魔法を」
「見ることもできる」
なるほど。
それだけなら。
ただの。
大会だ。
だが。
外を見る。
騎士まで。
来ている。
王国の旗。
見送りの教師。
あれは。
学生の大会を。
見送る雰囲気ではない。
「それだけか?」
「え?」
「交流だけなら」
「騎士まで」
「出て来る必要はない」
アレンが。
少し。
黙った。
「……やっぱり」
「そう思う?」
「当たり前だ」
アレンは。
困ったように。
笑った。
「父上は」
「国の力を」
「見せる場所でもあるって」
「言ってた」
やはり。
そういうことか。
「七国武競祭で」
「どんな選手が出て」
「どんな戦い方をするか」
「それを見れば」
「その国が」
「どんな人を育てているのか」
「分かるんだって」
……。
人を。
どう育てているか。
「だから」
「ただの大会じゃない」
「らしいよ」
アレンは。
そう言った。
学生とはいえ。
それぞれの国が。
育てた人材。
つまり。
保有している。
若い戦力。
その力を。
比べれば。
国ごとの。
武術力。
魔法力。
そして。
人材の質の。
違いが見える。
学生の。
大会。
だが。
同時に。
国の。
未来の力を。
見せる場所。
……。
面白い。
◇◇◇
「競技は?」
「いっぱいあるよ」
アレンが。
答える。
「武術と」
「魔法の」
「個人戦でしょ」
「そして」
「三人で戦う」
「小隊戦もあるし」
「五人で」
「決められた場所を」
「攻略する戦術競技もある」
「それから」
「魔物を想定した」
「討伐戦もあるよ」
……。
なるほど。
単純な。
個人能力だけを。
比べる大会ではない。
一人で。
戦う力。
複数で。
戦う力。
状況に。
対応する力。
様々な。
能力を。
見る。
「誰でも」
「出られるのか?」
「まさか」
アレンが。
首を振る。
「基本的には」
「五回生と」
「六回生」
「代表は」
「ほとんど」
「ゴールドクラスなんだ」
「成績上位者から」
「選ばれるからね」
やはり。
ゴールドクラスが基本か。
窓の外にいる。
生徒たち。
八名ほどいる。
あれが。
代表か。
「すごい人ばかりだよ」
アレンが。
少し。
身を乗り出した。
「あそこ」
指さす。
一人の。
男子生徒。
背が高い。
腰には。
長剣。
周囲に。
何人も。
生徒がいる。
だが。
その男だけ。
空気が違う。
「六回生の」
「ゴールドクラス首席」
「今年の」
「代表の一人」
「学園でも」
「かなり有名だよ」
……。
《潜在解析》
視界に。
情報が。
浮かぶ。
【個体名:???】
【年齢:十八歳】
【身体能力:A/潜在A+】
【剣術:A/潜在A+】
【状況判断:B/潜在A】
……。
強い。
今まで。
学園で見た。
生徒の中でも。
明らかに。
上位。
「強いな」
「でしょ?」
なぜ。
お前が。
嬉しそうなんだ。
◇◇◇
「それだけじゃないよ」
アレンが。
別の生徒を。
指さす。
女子生徒。
長い杖を。
持っている。
やはり。
ローブの胸元には。
ゴールドクラスの。
徽章。
「あの人は」
「六回生の」
「魔法部門代表」
「去年の」
「学園魔法競技会で」
「優勝したんだって」
……。
《潜在解析》
【個体名:???】
【年齢:十八歳】
【魔力量:A/潜在A+】
【魔力制御:A-/潜在A】
【火属性魔法:A/潜在A+】
……。
こいつも。
強い。
さらに。
その横。
槍を持った。
男子生徒。
「五回生で」
「槍術のスペシャリストなんだよ!」
アレンは。
興奮している。
《潜在解析》
【個体名:???】
【年齢:十七歳】
【身体能力:A-/潜在A】
【槍術:A/潜在A+】
【状況判断:C+/潜在B】
……。
槍術は。
A。
身体能力も。
高い。
ただ。
状況判断は。
C+。
……まあ。
槍が。
強ければ。
問題ないだろう。
もちろん。
ゴールドクラス。
これが。
王立学園の。
上位者。
そして。
アルセリア王国の。
代表。
なるほど。
確かに。
選ばれるだけは。
ある。
◇◇◇
「どう?」
アレンが。
聞いてくる。
「何がだ」
「今年」
「勝てそう?」
「俺に」
「聞くな」
「でも」
「レオン」
「人を見るの」
「得意でしょ?」
……。
こいつ。
どこまで。
知っているーー。
まあ。
いい。
俺は。
もう一度。
代表たちを見る。
皆。
個人能力は。
高い。
特に。
剣術代表。
身体能力A。
剣術A。
現在の。
俺では。
まず。
勝てないだろう。
魔法代表も。
槍術代表も。
同じだ。
アルセリアの。
代表は。
弱くない。
むしろ。
かなり。
強い。
明確な。
才能を持っている。
「かなり」
「いけるんじゃないか」
「本当!?」
アレンの。
顔が。
明るくなる。
「たぶんな」
「たぶん?」
「他国を」
「見ていない」
比較対象が。
なければ。
判断できない。
「そっか」
アレンが。
笑う。
「でも」
「楽しみだね」
楽しみ。
か。
俺は。
もう一度。
代表たちを見る。
高い。
能力を持つ。
この学園で。
選ばれた。
上位者。
なら。
他国とも。
十分。
戦えるはずだ。
◇◇◇
やがて。
教師たちが。
代表者を。
集めた。
学園長。
シモンも。
いる。
「諸君」
騒がしかった。
周囲が。
静かになる。
「これより」
「アルセリア王国代表として」
「ヴァルガ帝国へ」
「向かってもらう」
代表たちが。
姿勢を正す。
「七国武競祭で」
「諸君の力を」
「存分に」
「発揮してほしい」
「……」
「だが」
シモンが。
代表者たちを。
見渡す。
「国を背負うことに」
「囚われすぎる必要はない」
「諸君は」
「学生だ」
「この七国武競祭で」
「大いに学び」
「勝敗以上のものを」
「持ち帰ることを」
「期待している」
……。
いや。
学生とはいえ。
やるのであれば。
勝ちに。
こだわるべきだ。
俺ならば。
そうする。
代表たちが。
頭を下げる。
そして。
次々と。
馬車へ。
乗り込んでいく。
王国の旗が。
風に揺れる。
「頑張れー!」
「アルセリア!」
周囲から。
声が上がる。
アレンも。
手を振っている。
俺は。
その横で。
馬車を見送った。
七つの国。
それぞれの。
代表。
それぞれの。
武術。
魔法。
そして。
戦い方。
……。
見てみたい。
「レオン」
「何だ」
「試合は」
「学園でも」
「見られるよ」
「どうやってだ?」
アレンが。
笑った。
「大魔導晶」
「ヴァルガの会場と」
「学園を」
「つなぐんだって」
……。
そんなものまで。
あるのか。
「一緒に見ようよ」
「好きにしろ」
「やった!」
なぜ。
そんなに。
嬉しい。
◇◇◇
数日後。
王立学園の。
中央講堂。
普段は。
式典などに。
使われる。
巨大な空間。
そこに。
一回生から。
六回生まで。
多くの。
生徒が。
集まっていた。
正面には。
巨大な。
透明の結晶。
大魔導晶。
教師たちが。
魔力を流す。
結晶が。
淡く。
光り始める。
ざわめきが。
消える。
そして。
結晶の中に。
景色が。
映った。
巨大な。
闘技場。
埋め尽くす。
観客。
無数の。
旗。
その中央に。
七つの。
国旗。
「すごい……」
隣で。
アレンが。
呟く。
俺も。
思わず。
目を奪われた。
ヴァルガ帝国。
アルセリアとは。
かなり違う。
石造りの。
巨大な闘技場。
その周囲には。
見たことのない。
金属製の設備が。
並んでいる。
前世とは。
違うが。
機械技術も。
発展しているらしい。
かなり。
近代的な国だ。
その。
ヴァルガ帝国で行われる。
第四十八回。
七国武競祭。
七国の。
若き代表たちが。
集まる。
四年に一度の。
大会。
俺は。
大魔導晶を。
見つめる。
さて。
どの程度。
やれる。
アルセリアの。
代表は。
高い。
能力を。
持っている。
なら。
結果も。
出るはずだ。
強い人間を。
集めれば。
強い集団に。
なる。
当然だ。
この時の俺は。
そう。
思っていた。




