第29話 見えない才能
翌日。
俺の。
周りには。
人だかりができていた。
「レオン」
「俺も」
「見てくれないか?」
「私も!」
「何が」
「向いてるか」
「分かるんだろ?」
……。
面倒だ。
原因は。
カイル。
あいつだ。
やれやれ。
こんなつもりは。
無かった。
だが。
こうなってしまっては。
しかたがない。
◇◇◇
一人目。
《潜在解析》
【個体名:ルーカス・ベルンシュタイン】
【年齢:十三歳】
【身体能力:D/潜在C】
【魔力量:C/潜在A】
【魔力制御:C/潜在A】
【土属性魔法:C+/潜在B】
……。
なるほど。
「ルーカス」
「何だ?」
「魔力量を高めろ」
「魔力制御も才能がある」
「このまま土魔法を続ければ」
「問題ない」
「そうか!」
「よかった」
◇◇◇
次。
《潜在解析》
【個体名:ミレイユ・アーベント】
【年齢:十四歳】
【身体能力:C/潜在B+】
【剣術:D/潜在C】
【弓術:F/潜在B+】
【状況判断:D/潜在A】
……。
やはり。
面白い。
「ミレイユ」
「何?」
「お前」
「今は剣を使っているな?」
「そうよ」
「弓をやれ」
「弓?」
「そうだ」
「お前は」
「弓が伸びる」
「でも」
「弓なんて使ったことないし」
「大丈夫だ」
「お前は」
「状況判断能力も高い」
「弓の方が」
「高い成果を生むはずだ」
「そう…」
「わかった」
「やってみる!」
そう言って。
ミレイユは。
訓練場に歩いて行った。
俺は。
可能性を。
教えただけ。
ここからは。
本人次第だ。
◇◇◇
それから。
しばらく。
俺は。
頼まれるたびに。
クラスメイトを。
見た。
剣。
槍。
弓。
格闘。
盾。
魔法。
魔力制御。
中には。
本人が。
考えていたものと。
まったく違う。
才能を。
持つ者もいた。
「お前は」
「格闘より」
「盾だ」
「お前は」
「水魔法より」
「闇魔法を」
「伸ばした方がいい」
「お前は」
「前で戦うより」
「周りを見る方が」
「向いている」
だが。
当然。
全員が。
俺の言うことを。
聞いたわけではない。
◇◇◇
「別に」
「一応」
「聞いてみるだけだけど」
「私の」
「才能も」
「見れる?」
【個体名:リナ・フェル】
【年齢:十三歳】
【身体能力:D/潜在C+】
【魔力量:D+/潜在B】
【魔力制御:C+/潜在A+】
【火属性魔法:C+/潜在C+】
【風属性魔法:E/潜在A】
……。
なるほど。
「リナ」
「何?」
「お前は」
「火魔法じゃなく」
「風魔法をやれ」
「風?」
「ああ」
「お前の」
「火魔法は」
「もう伸びない」
「風魔法は」
「かなり才能がある」
「風魔法を」
「伸ばすべきだ」
それを聞いた。
リナの。
顔が。
青ざめる。
「うそよ」
「そんなはずない」
「私の家系は」
「昔から」
「火魔法の家系なの」
だからなんだ。
昔からやっている。
それは才能とは関係ない。
「いや」
「火魔法の」
「才能は」
「少なくとも」
「お前にはない」
「うそよ」
「そんなの」
「信じられない」
明らかに。
動揺している。
なにが問題なんだ。
風魔法の。
才能が有るんだ。
問題ないじゃないか。
「いいから」
「風魔法をやれ」
「絶対いや!」
リナは。
走って。
教室を出ていく。
意味が分からない。
別にいい。
やるかどうかは。
本人次第だ。
俺は。
教えた。
それだけだ。
◇◇◇
そして。
俺の言葉を。
試した奴らは。
少しずつ。
変わり始めた。
◇◇◇
一か月。
二か月。
時間が。
経つほど。
違いが。
出てきた。
今まで。
伸び悩んでいた者が。
急に。
伸び始める。
できなかったことが。
できるようになる。
教師に。
褒められる者も。
増えた。
そして。
カイルは。
完全に。
槍を。
自分の武器に。
し始めている。
……。
やはり。
俺は。
正しい。
結果を。
出すためには。
才能を。
活かす。
それが。
重要だ。
◇◇◇
ただ。
一つだけ。
問題がある。
俺自身だ。
《潜在解析》は。
自分には。
使えない。
だから。
俺自身に。
何の才能があるのか。
分からない。
剣なのか。
槍なのか。
魔法なのか。
それとも。
別の何かなのか。
……。
まあ。
いい。
分からないなら。
全部。
やればいい。
前世でも。
そうだった。
営業。
開発。
採用。
財務。
経営。
必要なら。
何でも。
やってきた。
誰かに。
自分の才能を。
教えてもらったことなど。
ない。
なら。
今回も。
同じだ。
剣。
槍。
弓。
杖。
盾。
格闘。
火。
水。
風。
土。
光。
闇。
全部。
やればいい。
その中で。
一番。
結果が出るものを。
見つければいい。
◇◇◇
それから。
俺は。
毎日。
授業が。
終わった後も。
一人で。
訓練を。
続けた。
剣を振る。
槍を突く。
弓を引く。
盾を構える。
格闘を。
繰り返す。
そして。
魔法。
火。
水。
風。
土。
光。
闇。
一つ。
終われば。
次。
それが。
終われば。
また次。
夜。
遅くまで。
ひたすら。
繰り返した。
必ず。
ゴールドに。
上がってやる。
アレン。
お前には。
負けない。
◇◇◇
ある日の。
夜。
教頭室。
「レオン・アルヴァ」
「固有スキルを」
「二つ持っている」
ネクシラは。
生徒一人ひとりの。
状況シートを。
確認する。
「それに」
「最近は」
「他の生徒の」
「才能まで」
「見つけている」
少しだけ。
口元が。
緩む。
「なるほど」
「面白そうね」
◇◇◇
翌日。
授業は。
魔法基礎。
教室に。
一人の女性が。
入ってきた。
長い黒髪を。
後ろで。
一つにまとめている。
教頭。
ネクシラ。
「今日は」
「私が」
「魔法基礎を」
「担当します」
教室が。
少し。
ざわつく。
ネクシラが。
名簿を見る。
そして。
一瞬。
俺のところで。
目を止めた。
「レオン・アルヴァさん」
「はい」
……何だ?
「最近」
「クラスメイトの才能を」
「見つけているそうですね」
……。
誰だ。
余計なことを。
言った奴は。
「面白そうですね」
ネクシラは。
それだけ言って。
授業を。
始めた。
◇◇◇
「今日は」
「六大属性の」
「基礎を」
「学んでいただきます」
火。
水。
風。
土。
光。
闇。
「自分が」
「得意だと思う属性だけでなく」
「すべて」
「練習してください」
……。
またか。
俺は。
手を挙げた。
「質問がある」
「どうぞ」
「全部を」
「練習する必要が」
「あるのか?」
教室の。
視線が。
俺に集まる。
ネクシラは。
表情を変えない。
「なぜ」
「そう思うのですか?」
「既に」
「分かっているのであれば」
「得意な属性を」
「伸ばした方が」
「効率がいい」
「なるほど」
「それで?」
「不得意なものに」
「時間を使うより」
「得意なものを」
「伸ばす」
「その方が」
「簡単に」
「成果が出る」
ネクシラが。
少し。
考える。
「一理」
「ありますね」
……。
だろう。
「ですが」
ネクシラが。
俺を見る。
「レオンさん」
「何だ?」
「成果とは」
「何でしょう?」
……は?
こいつ。
何を。
言っている。
「成果は」
「成果だ」
「では」
「あなたにとって」
「成果とは?」
そんなことも。
分からないのか。
「一番になること」
「相手に」
「負けないこと」
「昨日より」
「できることが」
「増えること」
「より多くの」
「結果を」
「出すことだ」
ネクシラが。
俺を見る。
「なるほど」
「それが」
「あなたにとっての」
「成果なのですね」
「当たり前だろう」
「いいえ」
ネクシラが。
首を振る。
「当たり前では」
「ありません」
「……何がだ?」
「例えば」
「魔法で」
「誰かを守りたい人がいる」
「その人にとって」
「一番になることが」
「成果でしょうか?」
「……」
「家族の仕事を」
「手伝うために」
「水魔法を」
「使えるようになりたい人がいる」
「その人にとって」
「他人に勝つことが」
「成果でしょうか?」
「何が言いたい?」
ネクシラが。
俺の目を見て。
言った。
「人それぞれ」
「成果は」
「違うのです」
……。
「何を」
「目指すのか」
「何を」
「できるようになりたいのか」
「何を」
「大切にするのか」
「それを」
「自分で考えて」
「選んで」
「決める」
「その先に」
「その人自身の」
「成果があります」
……。
何を。
言っている。
「そんな」
「人によって変わるような」
「抽象的な成果は」
「必要ない」
「必要ですよ」
即答だった。
「才能が」
「分かる」
「それは」
「素晴らしい力です」
「ですが」
ネクシラが。
俺を見る。
「才能があることと」
「その人が」
「それを」
「やりたいことは」
「同じではありません」
……。
「結果が出るなら」
「それでいいだろう」
「本当に?」
「はい」
ネクシラは。
少しだけ。
笑った。
「では」
「レオンさん」
「あなた自身は」
「何を」
「やりたいのですか?」
「……は?」
「あなたは」
「何のために」
「一番になりたいのですか?」
……。
なんの為に。
一番になるのか?
そんなもの。
考える必要が。
あるのか?
結果を。
出す。
相手に。
勝つ。
そして
一番に。
なる。
それだけだ。
ネクシラは。
俺を。
しばらく見ていた。
「あなたには」
「まだ」
「見えていないものが」
「あるようですね」
……。
何だ。
こいつ。
「それを」
「この学園で」
「見つけられると」
「いいですね」
「俺には」
「必要ない」
俺は。
反射的に。
答えた。
ネクシラが。
少し。
笑った。
「そうですか」
「では」
「授業を」
「続けましょう」
……。
何なんだ。
こいつは。
こいつと。
話していると。
なぜか。
無性に。
腹が立つ。
……。
気に入らない。
俺は。
この教師が。
嫌いだ。
◇◇◇
それから。
さらに。
時間が過ぎた。
そして。
一回生。
最初の。
半期試験。
身体能力。
武術。
魔術。
学力。
半年間の。
成果が。
評価される。
俺は。
自信があった。
毎日。
誰よりも。
練習した。
剣も。
槍も。
弓も。
杖も。
盾も。
格闘も。
魔法も。
全部。
やった。
才能が。
分からないなら。
全部。
やればいい。
その中で。
結果を。
出せばいい。
そう。
思っていた。
◇◇◇
――アイアンクラス
――半期試験結果
クラスの前の。
大きな看板に。
全員の順位が。
張り出されている。
その中で。
俺の順位はーー。
身体能力。
8位/24名。
剣術。
6位/24名。
槍術。
9位/24名。
杖術。
7位/24名。
格闘術。
8位/24名。
盾術。
9位/24名
魔法総合。
7位/24名。
……。
何だ。
これ。
もう一度。
見る。
変わらない。
どれも。
一番ではない。
俺は。
半年間。
誰よりも。
やった。
はずだ。
なのに。
なぜだ。
剣も。
槍も。
杖も。
魔法も。
全部。
一番ではない。
……。
嫌な。
考えが。
頭に浮かぶ。
俺には。
ないのか?
カイルには。
槍があった。
他の奴らにも。
それぞれ。
伸ばせる。
明確な。
才能があった。
なのに。
俺は。
試験結果を。
見つめる。
そして。
初めて。
考えた。
俺には。
才能が。
ないのか?




