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第28話 才能

「お前」


「剣をやめろ」


カイルの。


顔が。


固まった。


「……は?」


当然の。


反応だ。


「お前」


「レオン……だよな?」


「そんなことは」


「どうでもいい」


「さっきの」


「聞こえなかったか?」


「聞こえたよ!」


カイルが。


木剣を。


握り直す。


「だから」


「何でだよ」


「お前には」


「剣の才能がない」


「……」


「代わりに」


「槍の才能がある」


カイルは。


しばらく。


俺の顔を。


見ていた。


「何だよ」


「それ」


「そのままの意味だ」


「剣より」


「槍をやれ」


「その方が」


「お前は」


「強くなる」


「……何で」


「そんなこと」


「分かるんだよ」


……。


《潜在解析(ディープアナライズ)》の。


ことを。


そのまま。


話す必要はない。


「俺には」


「分かる」


「説明になってないだろ」


その通りだ。


◇◇◇


俺は。


カイルの。


木剣を見る。


「逆に聞く」


「何で」


「お前は」


「剣を使っている?」


「何でって……」


カイルは。


少し。


言葉に詰まった。


「昔から」


「剣を」


「使ってきたからだよ」


「それだけか?」


「それだけって……」


カイルは。


木剣を。


下ろした。


少し。


考えてから。


口を開く。


「俺の父さんも」


「剣を使うんだ」


「村の」


「自警団にいて」


「小さい頃から」


「教えてもらってた」


なるほど。


「昔は」


「結構」


「強かったんだ」


「同じ歳の奴には」


「ほとんど」


「負けなかった」


「だから」


「ずっと」


「剣を」


「やってきた」


カイルは。


木剣を。


見つめる。


「でも」


「ここに来る前くらいから」


「練習しても」


「前みたいに」


「上手くならない」


「入学試験でも」


「剣術の評価は」


「低かった」


声が。


少しだけ。


小さくなる。


「でも」


「俺は」


「せっかくこの学園に入学させてくれた」


「父さんや母さん」


「村のみんなの為に」


「頑張んなくちゃいけない」


「だから」


「誰よりも」


「練習しようって」


「決めてる」


……。


やはり。


そうか。


身体能力は。


高い。


だから。


子供の頃は。


剣でも。


結果が出た。


だが。


技術が。


必要になるほど。


伸びなくなった。


《潜在解析》の。


結果とも。


一致する。


「なら」


「なおさらだ」


「槍をやれ」


カイルが。


俺を見る。


「……嫌だ」


「なぜ?」


「俺は」


「剣を」


「やってきたんだ」


「子供の頃から」


「槍なんて」


「やったことがない」


「でも」


「結果が」


「出ていない」


カイルの。


表情が。


変わった。


「分かってるよ」


「だったら」


「槍をやれ」


「簡単に」


「言うなよ」


カイルが。


木剣を。


強く握る。


「俺は」


「お前みたいに」


「才能がどうとか」


「分からない」


「でも」


「ずっと」


「剣をやってきたんだ」


「だから」


「俺は」


「剣をやる」


「……」


「そうか」


「じゃあ、好きにしろ」


俺は。


そのまま。


寮へ向かった。


◇◇◇


数日後。


今日は。


武器を使った。


武術基礎の授業。


二人一組。


互いに。


木製の武器を使って。


打ち合う。


俺は。


カイルの模擬戦を見た。


カイルは。


剣を選んだ。


相手も。


剣。


開始の。


合図。


カイルが。


先に出る。


踏み込みは。


速い。


だが。


剣を。


振った瞬間。


動きが。


単調になる。


相手に。


かわされた。


そのまま。


横から。


木剣を。


当てられる。


「そこまで!」


教師の。


声。


カイルが。


止まる。


「もう一度」


二戦目。


だが。


結果は。


同じだった。


「そこまで!」


カイルが。


歯を。


食いしばる。


相手は。


ゴールドでも。


シルバーでもない。


同じ。


アイアンクラスの。


生徒だ。


カイルは。


何も言わず。


木剣を。


見ている。


……。


それでも。


まだ。


剣を。


続けるのか。


◇◇◇


授業が。


終わった。


カイルは。


一人で。


木剣を。


握っていた。


俺は。


その横を。


通り過ぎる。


……。


一度。


止まる。


「カイル」


「……何だよ」


「もう一度言う」


「槍をやれ」


カイルが。


こちらを見る。


「また」


「それかよ」


「まただ」


「今日の模擬戦を見た」


「やはり」


「お前は」


「剣に」


「向いていない」


「……」


「カイル」


「お前は」


「弱くない」


「身体能力は」


「むしろ高い」


「それなのに」


「剣では」


「それを」


「活かせていない」


カイルは。


何も。


言わない。


「槍なら」


「活かせる」


「……本当に?」


「ああ」


「俺に」


「槍の才能が」


「本当にあるのか?」


「ある」


「剣より?」


「はるかに」


カイルが。


木剣を見る。


長い。


沈黙。


やがて。


小さく。


息を吐いた。


「……分かったよ」


「何が?」


「槍」


「やってみる」


「そうか」


「ただし」


「何だ」


「駄目だったら」


「お前のせいだからな」


「好きにしろ」


カイルは。


苦笑した。


「まあ」


「このまま」


「意地を張っても」


「変わらないか」


「明日」


「槍を」


「借りてみる」


「基本の動きを」


「先生に教わってみるよ」


「そうしろ」


ようやく。


その気に。


なったか。


俺は。


それだけ言って。


歩き出した。


◇◇◇


翌日。


カイルは。


本当に。


槍を持っていた。


学園の。


訓練用の。


木槍だ。


持ち方も。


構え方も。


ぎこちない。


当然だ。


《潜在解析》


【剣術:D/潜在C】


【槍術:F/潜在A+】


だが。


ここから。


どう変わる。


少しだけ。


興味がある。


カイルが。


的に向けて。


槍を。


突く。


外す。


もう一度。


突く。


また。


外す。


「……難しいな」


それでも。


カイルは。


剣の時と。


同じように。


何度も。


槍を。


振った。


◇◇◇


一週間後。


【槍術:E/潜在A+】


一か月後。


【槍術:D+/潜在A+】


伸びている。


そして。


明らかに。


伸びが。


速い。


身体能力の。


高さとも。


噛み合っている。


踏み込み。


間合い。


突き。


薙ぎ。


最初は。


ぎこちなかった。


動きが。


少しずつ。


形になっていく。


そして。


三か月後。


武術基礎の。


授業。


カイルが。


槍を構えた。


以前とは。


違う。


構えに。


迷いがない。


俺は。


見る。


《潜在解析》


【個体名:カイル・ベルグ】


【年齢:十三歳】


【身体能力:B/潜在A+】


【剣術:D+/潜在C】


【槍術:C/潜在A+】


……。


超えた。


三か月で。


何年も。


続けてきた。


剣術を。


槍術が。


超えた。


◇◇◇


その日の。


武術基礎。


いつもどおり。


二人一組で。


模擬戦を。


行うことになった。


カイルの。


相手は。


三か月前。


剣で。


負けた。


あの生徒だった。


「お前か」


相手が。


笑う。


カイルも。


笑った。


「今度は」


「負けない」


「武器」


「変えたんだってな」


「ああ」


「三か月で」


「俺に」


「勝てると思ってるのか?」


カイルは。


黙って。


槍を。


構える。


相手は。


剣。


「始め!」


教師の。


声。


相手が。


一気に。


距離を詰める。


だが。


カイルは。


動かない。


ぎりぎりまで。


引きつける。


そして。


一歩。


下がった。


剣が。


空を切る。


その瞬間。


カイルの。


槍が。


伸びた。


「っ!」


相手が。


慌てて。


剣で。


受ける。


だが。


カイルは。


止まらない。


槍を。


引く。


踏み込む。


もう一度。


突く。


相手が。


下がる。


さらに。


一歩。


カイルが。


間合いを。


支配している。


そして。


三度目。


槍の先が。


相手の。


胸元で。


止まった。


「そこまで!」


教師の。


声が。


響いた。


一瞬。


静かになる。


カイルは。


槍を構えたまま。


動かなかった。


「……勝った」


小さく。


呟く。


「勝った……」


三か月前。


剣では。


勝てなかった。


相手。


それを。


槍を始めて。


三か月で。


超えた。


カイルが。


自分の。


槍を見る。


そして。


ゆっくり。


顔を上げた。


俺を。


探す。


目が。


合った。


次の瞬間。


カイルの。


顔が。


一気に。


明るくなった。


◇◇◇


授業が。


終わるなり。


カイルが。


走ってきた。


「レオン!」


「見たか!?」


「何を」


「今の模擬戦だよ!」


「やっと勝てた!」


「先生にも」


「褒められた!」


「そうか」


「なんか」


「久しぶりなんだ」


「何が?」


「練習して」


「強くなってるって」


「自分で」


「分かるのが」


カイルが。


槍を見る。


「すげえ」


「楽しい」


カイルは。


嬉しそうに。


槍を。


握っている。


「今日」


「剣を使ってた時より」


「動きがいいって」


「自分でも感じたんだ!」


「そうだろうな」


「お前」


「本当に」


「分かってたんだな」


「最初から」


「そう言っている」


「すげえな!」


声が。


大きい。


周囲の。


生徒たちが。


こちらを見る。


「何だ?」


「カイル」


「どうした?」


「槍なんて」


「いつから」


「やってたんだ?」


数人が。


集まってくる。


カイルは。


嬉しそうに。


答えた。


「レオンに」


「教えてもらったんだ!」


……。


違う。


「俺は」


「教えてない」


「でも」


「槍をやれって」


「言ったの」


「レオンだろ?」


「そうだけど」


「俺に」


「槍の才能があるって」


「教えてくれたんだ!」


おい。


「レオンが?」


「どうやって?」


「才能なんて」


「分かるのか?」


「俺も」


「見てもらいたい」


「私も」


……。


面倒なことに。


なった。


◇◇◇


その日の。


帰り道。


俺は。


一人で。


考えていた。


カイルの。


槍術。


三か月で。


剣術を。


超えた。


偶然ではない。


《潜在解析》は。


正しかった。


俺には。


人間の。


潜在的な能力が。


見える。


今。


できることだけではない。


まだ。


表に出ていない。


可能性まで。


見える。


そして。


その才能に。


合ったものを。


選べば。


人は。


伸びる。


前世でも。


そうだった。


人には。


向き。


不向きがある。


成果が。


出ないなら。


見切りをつけて。


その人間が。


活躍できる。


仕事を。


与えればいい。


もしくは。


能力を。


活かせる。


場所へ。


配置する。


その方が。


本人も。


組織も。


成果が出る。


俺は。


そうやって。


会社を。


大きくしてきた。


この世界でも。


同じだ。


カイルが。


証明した。


やはり。


俺は。


間違っていない。


結果を。


出すために。


才能を。


活かすこと。


それが。


重要なのだ。


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