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第25話 黒鉄(アイアン)クラス

翌朝。


俺は。


学園寮で目を覚ます。


ここは。


黒鉄(アイアン)クラスの。


男子寮だ。


広くはないが。


個室なのはありがたい。


王立学園の。


制服に。


袖を通した。


濃紺の上着。


白いシャツ。


黒いズボン。


制服そのものは。


全員。


同じ。


違うのは。


胸元。


そこに。


小さな。


金属製のバッジを。


付ける。


黄金。


白銀。


青銅。


黒鉄。


所属する。


クラスによって。


色が違う。


俺の手の中には。


黒鉄色の。


バッジ。


……。


昨日から。


何度見ても。


色は。


変わらない。


「アイアンか」


小さく。


呟いた。


五年間。


準備してきた。


試験の。


手ごたえも。


あった。


それでも。


アイアン。


つまり。


俺の今の能力はーー。


いや。


納得は。


していない。


俺の。


《解析眼(アナライズ)》と違って。


試験官なら。


間違うことも。


あるだろう。


だが。


決まったものは。


仕方がない。


俺は。


黒鉄のバッジを。


胸に付けた。


◇◇◇


校舎へ。


向かう。


すれ違う。


新入生たちの。


胸元には。


それぞれ。


違う色の。


バッジ。


黄金色は。


やはり。


目立つ。


数も。


少ない。


白銀。


青銅。


そして。


黒鉄。


だが。


こうして。


色を付けられると。


分かりやすい。


自分が。


どこに。


評価されたのか。


嫌でも。


目に入る。


……趣味が悪い。


そう思いながら。


俺は。


アイアンクラスの。


教室へ向かう。


ふと。


考える。


前世では。


俺は。


徹底的に。


社員を。


評価した。


成果を。


出した者には。


高い評価を。


成果を。


出せない者には。


低い評価を。


当然だ。


会社は。


結果を出す場所だ。


そこは。


今でも。


間違っていたとは。


思わない。


だが。


黒鉄のバッジを見る。


最低評価を。


付けられる側に。


なって。


初めて。


考えた。


あいつらは。


あの時。


何を。


思っていたのだろう。


◇◇◇


教室に。


入って。


すぐに。


分かった。


空気が。


重い。


机に。


突っ伏している奴。


不満そうに。


腕を組んでいる奴。


窓の外を。


見ている奴。


胸元には。


全員。


同じ。


黒鉄のバッジ。


アルセリアの。


国中から。


集められた。


若者たち。


それぞれ。


村や町では。


期待されて。


ここまで。


来たのだろう。


中には。


神童と。


呼ばれていた奴も。


いるかもしれない。


それが。


この学園に来て。


いきなり。


最低クラス。


簡単に。


受け入れられる。


はずがない。


席に座る。


周囲を見る。


……。


昨日。


試験官は。


言った。


「今のお前が」


「何をできるかだ」


今。


何ができるか。


この学園は。


そこを。


見ている。


それは。


理解した。


だが。


こいつらは。


実際は。


どうなんだ。


せっかくだ。


試してみるか。


《解析眼(アナライズ)》。


いや。


今は。


《潜在解析(ディープアナライズ)》。


五年前。


ゴーレムとの戦いで。


進化した。


俺の。


固有スキルの。


新たな能力。


対象の。


現在の能力を。


より細かく。


そして。


まだ。


表に出ていない。


潜在的な可能性まで。


見ることができる。


当然。


この五年間。


徹底的に。


実験と検証を繰り返してきた。


この力で。


俺は。


近くにいた。


一人の少年を見る。


《潜在解析(ディープアナライズ)》。


【個体名:???】


【年齢:十三歳】


【身体能力:B/潜在A+】


【剣術:D/潜在C】


【槍術:F/潜在A+】


【魔法:D-/潜在C】


……ん?


気になったのは。


槍術。


現在は。


F。


使ったことが。


ないのだろう。


だが。


潜在的な適性は。


A+。


俺は。


少年を見る。


腰には。


剣。


……剣?


もう一度。


見る。


【剣術:D/潜在C】


【槍術:F/潜在A+】


間違いない。


こいつ。


剣より。


槍の方が。


向いている。


なのに。


剣を。


使っている。


ただ。


身体能力は。


【身体能力:B/潜在A+】


高い。


おそらく。


昔から。


身体能力には。


恵まれていたのだろう。


だから。


剣を使っても。


それなりに。


できてしまった。


その結果。


剣を。


続けてきた。


そんなところか。


だがーー。


「全員、席につけ」


声がした。


教室の。


前を見る。


大柄な。


男が。


立っていた。


年齢は。


四十前後。


短く切った。


灰色の髪。


左の頬に。


古い傷。


男は。


教室を。


一度。


見渡した。


「今日から」


「このクラスを担当する」


「バルド・グレイだ」


「まず」


「出席を取る」


一人ずつ。


名前が。


呼ばれていく。


さっきの。


少年。


「カイル・ベルグ」


「はい」


……カイル。


次。


「リナ・フェル」


「はい」


少し離れた席の。


少女を見る。


【個体名:リナ・フェル】


【年齢:十三歳】


【身体能力:D/潜在C+】


【魔力量:D/潜在B】


【魔力制御:C/潜在A+】


【火属性魔法:C+/潜在C+】


【風属性魔法:E/潜在A】


魔力量。


D。


火属性魔法も。


C+。


魔術試験では。


高く。


評価されないだろう。


だが。


魔力制御は。


【C/潜在A+】


風属性魔法も。


【E/潜在A】


今は。


目立たない。


だが。


潜在は。


高い。


次。


「トーマ・グレン」


「います」


教室の。


後ろ。


椅子に。


浅く座っている。


少年を見る。


【個体名:トーマ・グレン】


【年齢:十三歳】


【身体能力:C/潜在B】


【剣術:D/潜在C】


【魔法:D/潜在C】


【状況判断:B/潜在A】


【指揮:F/潜在A】


……指揮の。


潜在が。


A。


前世なら。


管理職候補として。


目を付ける。


貴重な。


人材だ。


だが。


現在は。


F。


おそらく。


人を。


指揮した経験が。


ないのだろう。


俺は。


顔を上げた。


教室を。


見渡す。


もう一人。


もう一人。


もう一人。


《潜在解析(ディープアナライズ)》を。


使う。


現在の能力だけを。


見れば。


確かに。


高くない。


アイアンクラス。


そう評価されても。


おかしくない。


だが。


潜在まで。


見れば。


違う。


……なるほど。


この学園が。


見ているのは。


今。


何ができるか。


そこはいい。


だが。


こいつが。


何に向いているのか。


どんな才能を持っているのか。


そこまでは。


見えていない。


少なくとも。


入学試験では。


評価できていない。


こいつらが。


なぜ。


アイアンなのかは。


分かった。


……。


ただ。


一つだけ。


分からない。


俺だ。


今の。


俺の能力が。


学園の基準で。


どの程度なのか。


それだけは。


分からない。


だが。


俺は。


胸元の。


黒鉄のバッジを見る。


今は。


アイアン。


なら。


上がればいい。


それだけだ。


◇◇◇


休憩時間。


少し学園内を。


散歩する。


その時。


中庭の。


端で。


木剣を。


振っている。


少年が。


目に入った。


カイル・ベルグ。


何度も。


何度も。


剣を。


振っている。


真面目だ。


フォームも。


悪くない。


だが。


俺には。


見えている。


【剣術:D/潜在C】


【槍術:F/潜在A+】


……。


俺は。


少しだけ。


足を止めた。


そして。


また。


前世のことを。


思い出す。


俺は。


社員を。


評価する時。


その時の。


成果しか。


見ていなかった。


成果が出なければ。


評価を下げた。


それでも。


変わらなければ。


降格させた。


その判断は。


間違っていない。


だが。


もしかしたら。


あいつらにも。


あったのか。


俺が。


見ていなかった。


何かが。


……。


もし。


あの時。


俺に。


《潜在解析》が。


あったなら。


俺は。


あいつらを。


どうしていただろう。


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