第24話 この学園の評価基準はおかしい
俺は。
十三歳になった。
◇◇◇
あれから。
五年。
俺は。
ひたすらに。
自身の能力を高めた。
剣。
魔法。
そして。
考えうる全ての方法で。
勉強を続けた。
俺は。
自分を。
《解析眼》で。
見ることができない。
だが。
毎日。
記録したあらゆる数字が。
確実に。
俺の。
成長を。
証明している。
◇◇◇
村でも。
色々なことをした。
畑の改良。
農具の改良。
業務プロセスの改善。
商人との取引。
他の村の問題解決。
今までと同じ。
問題を見つける。
原因を調べる。
できることを考える。
それだけだ。
それでも。
五年前より。
少しだけ。
この村が。
暮らしやすくなった。
家族や。
村の人たちの。
笑顔が増えた。
たぶん。
それでいい。
◇◇◇
そして。
今日。
俺は。
村を出る。
王都へ。
王立学園へ。
行くために。
家の前に。
馬車が。
止まっている。
荷物は。
多くない。
服。
本。
訓練用の木剣。
学園で必要になる金。
この金を。
貯めるために。
俺は。
前世と同じくらい。
働いた。
母さんが。
俺の服を。
何度も。
直している。
「ちゃんと食べるのよ」
「分かった」
「無理しちゃ駄目よ」
「分かった」
「手紙も書いてね」
「分かった」
「それから――」
「母さん」
「なに?」
「もう十回くらい聞いた」
母さんが。
頬を膨らませた。
「だって」
「心配なのよ」
「十三歳なんだから」
「もう子供じゃない」
前世ーー。
俺が。
十三歳の時。
早く。
親元を。
離れたいと。
毎日。
思っていた。
『どうして100点じゃないの?』
『あなたまで、私をがっかりさせないで』
前世の母親の顔が。
浮かぶ。
早く。
一人になりたかった。
でも。
今は。
違う。
「レオン」
父さんが。
呼んだ。
「何?」
「人には、負けても良い」
「え?」
「でも」
「自分が自分を嫌いになるようなことは、するな」
父さんは。
俺の目を見て。
そう言った。
「うん」
俺は
そう答えた。
◇◇◇
姉さんが。
俺の前に立つ。
「なに?」
姉さんの手が。
伸びてくる。
俺の。
頬に触れる。
額。
髪。
耳。
昔から。
姉さんは。
こうやって。
俺の顔を。
確かめる。
「大きくなったね」
姉さんが。
笑った。
「そうだね」
少し。
間があった。
「いってらっしゃい」
俺は。
姉さんを見る。
最近。
母さんに似てきた。
「……行ってくる」
馬車に。
乗った。
◇◇◇
馬車が。
動き出す。
村が。
少しずつ。
遠くなる。
母さんが。
手を振っている。
父さんは。
腕を組んでいる。
姉さんは。
笑っている。
やがて。
村は。
見えなくなった。
五年間。
準備してきた。
「ここからだ」
剣。
魔法。
学問。
金。
全部。
別に。
あいつに。
会うためじゃない。
俺は。
世界の。
頂点へ行く。
そのために。
世界を。
知る必要がある。
だから。
王都へ行く。
それだけだ。
◇◇◇
王都は。
想像以上だった。
高い城壁。
何台もの馬車。
石で舗装された道。
並ぶ店。
行き交う人間。
獣人。
ドワーフ。
時々。
エルフらしき姿もある。
村とは。
まるで違う。
前世の。
都心部ほどではないが。
人も多い。
そして。
巨大な王城。
俺が向かうのは。
その王城から。
少し離れた場所に。
建っている。
王立学園。
石造りの。
巨大な校舎。
広い訓練場。
いくつもの塔。
俺は。
門の前で。
立ち止まった。
ここで。
六年間。
学ぶ。
俺が。
必要なものを。
手に入れる。
まずは手続きと。
入学試験だ。
◇◇◇
王立学園の。
入学試験は。
三日間。
行われる。
受付で。
試験官が。
俺の受験票を見て。
手を止めた。
「レオン・アルヴァ」
「はい」
「……お前か」
「?」
「固有スキルを二つ持っているそうだな」
俺は。
少しだけ。
驚いた。
王都まで。
知られているのか。
「まあ」
「ここでは関係ない」
「ここで見るのは」
「武術」
「魔術」
「身体能力」
「学力」
「今のお前が」
「何をできるかだ」
……なるほど。
問題ない。
前世では。
試験は。
常に。
トップで。
合格してきた。
今回も。
準備は。
してきた。
一日目――筆記試験。
歴史。
算術。
地理。
一般教養。
二日目――身体能力試験。
基礎体力。
基本体術。
武術。
三日目――魔術試験。
魔法。
魔力量。
魔力制御。
手ごたえは。
悪くない。
◇◇◇
試験翌日。
校舎前の。
大きな掲示板に。
新入生の。
クラスが。
張り出された。
人だかりが。
できている。
―黄金クラス
―白銀クラス
―青銅クラス
―黒鉄クラス
四つのクラス。
入学試験の結果によって。
分けられるらしい。
まず。
ゴールドクラス。
名前を見る。
ある名前を。
すぐに。
見つけた。
アレン・アルセリア。
…
まあ
あいつのことだ。
ゴールドクラスでも。
おかしくはないだろう。
別に。
俺には。
関係ない。
その下を。
――。
見る。
――。
俺の名前は。
――。
ないーー。
「え?」
俺は。
ゴールドクラスではない?
……。
もう一度。
見返す。
「ない」
まさかーー。
シルバークラス?
探す。
ない。
……。
更に。
ブロンズクラス。
ない。
…………。
俺は。
あと二回ほど。
ゴールドから。
見直した。
ない。
残っているのは。
アイアンクラス。
まさか。
視線を。
下へ動かす。
そこに。
あった。
レオン・アルヴァ。
アイアンクラス。
……は?
俺が。
アイアン?
なぜ。
アイアン。
俺は。
思った。
この学園の評価基準はおかしい。
◇◇◇
何かの。
間違いだと思った。
だが。
何度見ても。
変わらない。
レオン・アルヴァ。
アイアンクラス。
その時。
後ろから。
声がした。
「レオン?」
聞き覚えのある。
声だった。
五年ぶりに。
聞く声。
俺は。
思わず。
振り返る。
アレンだった。
……いた。
五年前より。
背が伸びている。
服装も。
立ち姿も。
ずっと。
王子らしくなっていた。
そして。
複数の護衛に囲まれている。
会いたかった。
……わけではない。
ただ。
少しだけ。
嬉しい。
気もする。
いや。
気のせいだろう。
だが。
今は。
最悪だ。
よりによって。
このタイミングか。
俺は。
もう一度。
掲示板を見る。
レオン・アルヴァ。
アイアンクラス。
……くそ。
「久しぶりだね」
「……ああ」
「五年ぶりだ」
「そうだね」
アレンが。
笑う。
五年前と。
同じ笑い方だった。
周囲が。
少しだけ。
ざわつく。
「殿下が……」
「誰だ?」
「知り合いなのか?」
アレンは。
一度だけ。
周囲を見た。
そして。
少しだけ。
俺に近づく。
小さな声で。
聞いてきた。
「それで」
「何クラスだった?」
目をキラキラさせて。
笑っている。
やっぱり。
こいつは。
こいつらしい。
俺は。
正直。
答えたくはない。
だが。
答えないわけにもいかない。
「……アイアン」
「え?」
「アイアンクラス」
アレンが。
掲示板を見る。
そして。
俺を見る。
もう一度。
掲示板を見る。
「……本当だ」
「見れば分かる」
「でも」
「レオンがアイアン?」
「俺が聞きたい」
アレンは。
本気で。
不思議そうな顔をしている。
俺も。
同じだ。
「まあ」
アレンが。
笑った。
「クラスが違っても」
「一緒に授業を受けることもあるみたいだよ」
「そういう問題じゃない」
アレンは。
もう少し。
話したそうな顔をしていたが。
周りの護衛に催促され。
校舎の中に。
歩いて行った。
こっちを見て。
――また、あとで。
そんな顔をして。
笑っていた。
俺は。
校舎へ向かう。
アレンから。
視線を外した。
そして。
改めて。
掲示板を見る。
「今のお前が」
「何をできるかだ」
試験官の言葉。
今。
何ができるか。
……なるほど。
この学園が。
見ているものが。
少しだけ。
分かった。
だが。
だからこそ。
納得はできない。
俺が。
アイアン?
五年間。
準備してきた。
それで。
アイアン?
……くそ。
やはり。
この学園の。
評価基準は。
おかしい。




