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第22話 最大の敵

「……殿下?」


俺は。


もう一度。


アレンを見る。


泥だらけ。


服は破れ。


髪も。


ぐしゃぐしゃ。


どう見ても。


王子には。


見えない。


「えっと……」


アレンが。


困ったように。


笑った。


その前で。


護衛の男が。


俺を見る。


そして。


深く。


頭を下げた。


「レオン殿」


「殿下をお救いいただき」


「感謝する」


殿下。


やっぱり。


聞き間違いじゃない。


「アレン」


「うん」


「お前」


「王子なのか?」


「……うん」


アレンは。


少しだけ。


言いにくそうに。


答えた。


「僕は」


「アレン・アルセリア」


「アルセリア王国の」


「第一王子だ」


第一王子。


その言葉を。


頭の中で。


繰り返す。


俺は。


無意識に。


《解析眼》を使った。


【個体名:アレン・アルセリア】


種族:人間


年齢:八歳


健康状態:負傷


身体能力:C


魔力量:B


魔法適性:C


戦闘適性:C


剣術:B


「アレン・アルセリア」


「この国の」


「……第一王子」


「黙っててごめん」


アレンは顔の前に。


手を合わせて。


俺に謝る。


「別に」


「え?」


「聞いてないからな」


「レオンらしいね」


アレンが。


笑う。


だが。


俺は。


笑えなかった。


第一王子。


つまり。


この国の。


頂点に。


最も近い人間。


俺は。


ずっと。


考えてきた。


この世界で。


力をつける。


金を稼ぐ。


知識を得る。


地位を得る。


そして。


世界の。


頂点へ行く。


前の世界で。


俺は。


会社を作った。


一人から。


千人を超える会社にした。


売上も。


利益も。


手に入れた。


それでも。


足りなかった。


だから。


この世界では。


もっと上へ。


行く。


そう。


決めた。


そのためには。


いずれ。


この国の。


権力者とも。


対峙することになる。


もちろん。


王族とも。


覚悟していたつもりだった。


そして。


目の前に。


その王族がいる。


しかも。


第一王子。


俺と。


同じ八歳。


こいつが。


このまま。


成長したら。


どうなる。


俺が。


世界の頂点を。


目指すなら。


こいつは。


もしかすると。


俺の前に。


立つ。


最大の。


敵になる。


その可能性がある。


アレン。


お前は。


俺の。


敵なのか?


そんな事を。


考えていた。


その時。


「レオン」


アレンが。


顔を覗き込んでくる。


「どうしたの?」


いつもの。


笑顔はない。


いや。


少し。


悲しそうな。


顔をしている?


「……別に」


「本当に?」


「本当だ」


「そう…」


こいつは。


今。


何を考えている。


いや。


逆だ。


こいつには。


俺が。


何を考えているのか。


何となく。


分かっている。


そんな気がする。


「レオン?」


「近い」


「ごめん」


アレンが。


一歩下がる。


だが。


今。


目の前にいるのは。


いつもの。


アレンだ。


明るくて。


うるさくて。


何度断っても。


村に来て。


勝手に。


友達だと言って。


子供を助けるために。


危険へ飛び込む。


馬鹿。


なのに。


お前は。


第一王子なのか。


本当に。


面倒な奴だ。


◇◇◇


村へ戻ると。


さらに。


面倒なことになった。


「王子様!?」


「本当に!?」


「アレンが!?」


村中が。


騒ぎになった。


当然だ。


いつも。


普通に。


村へ来ていた。


金髪の少年が。


この国の。


第一王子だった。


父さんも。


母さんも。


驚いている。


「アレン王子……ですって!?」


母さんが。


固まっている。


父さんは。


アレンの護衛と一緒に。


アレンの話を。


聞いている。


俺たちが。


ダンジョンへ入ったこと。


人さらいを倒したこと。


村の少年を助けたこと。


そして。


ゴーレムと。


戦ったこと。


護衛の顔が。


どんどん。


青くなっていく。


「中級の魔物を……」


「お二人で?」


「うん」


「倒したよ」


「レオンと一緒に」


アレンは。


嬉しそうだ。


護衛は。


嬉しくなさそうだ。


当然だろう。


第一王子を。


死なせかけた。


立場を考えれば。


笑える話じゃない。


「殿下」


「王都へ戻ります」


「陛下にも」


「ご報告しなければなりません」


「……うん」


アレンの。


表情が。


少しだけ。


変わった。


王都へ。


戻る。


俺は理解していた。


もう。


アレンは。


この村に来ない。


当然だ。


命にかかわる。


大事件だ。


王都に戻ったら。


しばらくは外出すらできないだろう。


こいつは。


王子だ。


「レオン」


「なに」


「少し」


「話せる?」


◇◇◇


村の外れ。


畑の向こう。


俺たちは。


二人で。


座っていた。


いつもなら。


アレンが。


どうでもいいことを。


話す。


今日は。


少し違った。


「レオン」


「僕」


「ずっと言おうと思ってたことがある」


「王子だってことか?」


「それも」


「でも」


「違う」


アレンが。


遠くを見る。


夕日。


畑。


村。


俺が。


生まれてから。


見てきた。


小さな世界。


「レオンは」


「世界の頂点を目指すって」


「言ったよね」


「ああ」


「だったら」


「王都に来ない?」


俺は。


何も答えない。


「王都には。」


「王立学園がある」


王立学園。


もちろん。


知っている。


「剣も」


「魔法も」


「歴史も」


「政治も」


「経済も」


「他の国のことも」


「学べる」


アレンの。


目が。


真っ直ぐ。


俺を見る。


「レオン」


「王立学園に来て」


「僕たちは」


「もっと」


「世界を知らないといけない」


「この村だけじゃない」


「他の国も」


「そこに住んでいる人たちも」


「知らないといけない」


アレンが。


俺を見る。


「僕は」


「誰もが幸せに暮らせる世界を作りたい」


「レオンは」


「世界の頂点を目指す」


「だから」


「一緒に」


「世界を学ぼう」


命令。


ではない。


でも。


その声は。


強かった。


「この村にいるだけじゃ」


「世界の頂点なんて」


「目指せないよ」


……言うな。


こいつ。


俺は。


少し。


笑った。


「王子だからって」


「偉そうだな」


「王子だから言ってるんじゃないよ」


アレンは。


すぐに。


返した。


「友達だから」


「誰が友達だ」


「僕は友達だと思ってる」


「勝手に決めるな」


「じゃあ」


「最高のコンビ」


「それも違う」


「じゃあ何?」


「知らん」


アレンが。


笑った。


俺も。


少しだけ。


口元が。


緩んだ。


だが。


頭の中は。


別だった。


王立学園。


王族。


貴族。


魔法。


剣。


政治。


経済。


他国。


この世界の。


中心。


俺に。


足りないものが。


そこにある。


そして。


アレンも。


そこにいる。


第一王子。


将来。


王になるかもしれない。


俺が。


世界の頂点を。


目指す。


その道の。


先に。


こいつが。


いるかもしれない。


今は。


笑っている。


俺を。


友達だと。


呼んでいる。


一緒に。


ゴーレムを。


倒した。


最高のコンビだと。


言った。


だが。


未来は。


分からない。


俺が。


世界の。


頂点を目指すなら。


その道の先で。


こいつと。


ぶつかる。


可能性がある。


いや。


避けては。


通れないかもしれない。


アレン・アルセリア。


もしかすると。


俺の野望を。


叶えるための。


最大の敵に。


なるかもしれない。


今の俺には。


まだ。


分からない。


だったら。


逃げる理由は。


ない。


むしろ。


面白い。


「十三歳だったな」


「え?」


「王立学園」


アレンの。


顔が。


明るくなる。


「うん!」


俺は。


立ち上がる。


服についた。


土を払う。


王都。


王立学園。


世界。


そして。


第一王子。


アレン・アルセリア。


「五年後」


俺は。


アレンを見る。


「王都に行く」


アレンが。


笑った。


「うん!」


「待ってる!」


五年。


十分だ。


剣。


魔法。


知識。


金。


全部。


準備する。


そして。


十三歳。


俺は。


王都へ行く。


世界を。


知るために。


世界の。


頂点へ行くために。


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