第20話 見えないもの
「一緒に倒そう」
アレンが。
木剣を握って。
笑っている。
俺は。
目の前の。
ゴーレムを見る。
巨大な。
岩の身体。
俺たちの。
倍以上はある。
一歩。
近づくたびに。
地面が。
揺れる。
「無理だ」
「今の俺たちじゃ」
「こいつは倒せない」
さっきの。
人さらいとは。
違う。
レベルが。
違いすぎる。
俺は。
ゴーレムを見る。
《解析眼》。
【ゴーレム】
種族:魔法生物
状態:正常
身体能力:B
魔力量:C
戦闘能力:B
土属性魔法:C
やっぱり。
無理だ。
俺たちが。
戦って。
勝てる相手じゃない。
「逃げるぞ」
「どこに?」
「それを今から探す」
右。
左。
後ろ。
通路は。
いくつかある。
どこかに。
上へ戻る道が。
あるはずだ。
「でも」
アレンが。
ゴーレムを見る。
「レオンは」
「世界の頂点を目指すんでしょ?」
「……それがどうした」
「だったら」
「逃げる前に」
「倒す方法がないか」
「考えてみようよ」
「レオンとなら」
「見つけられるかもしれない」
「は?」
アレンは。
本気だ。
こいつ。
「俺たちとは」
「強さが違う」
「うん」
「剣が通じるかも分からない」
「うん」
「魔法もだ」
「うん」
「だったら――」
ごっ。
ゴーレムの。
右腕が。
振り上がった。
「避けろ!」
俺とアレンが。
左右へ。
跳ぶ。
直後。
どんっ!
岩の拳が。
地面を。
叩いた。
石が。
飛び散る。
「……くそ、話は後だ!」
「うん!」
結局。
戦うしかない。
アレン。
お前は。
本当に。
面倒な奴だ。
◇◇◇
まず。
確かめる。
俺は。
木剣を握り。
ゴーレムへ。
走った。
正面。
巨体の割に。
動きは。
速くない。
右腕。
振り下ろし。
見える。
避ける。
懐へ。
入る。
狙うのは。
膝。
人間なら。
動きを止めやすい。
「っ!」
木剣を。
叩きつける。
がっ。
硬い。
手が。
痺れた。
傷一つ。
ついていない。
「レオン!」
アレンが。
横から。
飛び込む。
木剣を。
首元へ。
振る。
がんっ。
同じだ。
効かない。
ゴーレムの。
左腕が。
横に。
薙ぐ。
「下がれ!」
二人で。
距離を取る。
「剣は無理だね」
「見れば分かる!」
そもそも木剣だ。
なら。
魔法。
俺は。
右手を。
向ける。
「ウォーターボール!」
水の塊が。
飛ぶ。
ゴーレムの。
胸へ。
直撃。
ばしゃっ。
水が。
岩肌に。
弾けた。
ゴーレムは。
止まらない。
「フレイムアロー!」
アレンの。
火の矢。
胸部へ。
直撃。
炎が。
広がる。
だが。
表面が。
少し黒くなっただけ。
「魔法も」
「効いてない……」
アレンが。
呟く。
分かってる。
問題は。
そこじゃない。
効かないなら。
効く場所を。
探せばいい。
《解析眼》。
ゴーレムを見る。
【岩石外殻】
状態:正常
硬度:高
違う。
知りたいのは。
そこじゃない。
頭。
胸。
腕。
脚。
視線を。
移す。
《解析眼》。
【右腕部】
状態:正常
硬度:高
《解析眼》。
【左脚部】
状態:正常
硬度:高
分からない。
どこを。
壊せば。
止まる。
どこが。
弱い。
何が。
こいつを。
動かしている。
今の。
《解析眼》では。
そこまで。
見えない。
「くそっ」
その時。
ゴーレムが。
両手を。
地面へ。
向けた。
魔力。
何か来る。
「アレン!」
「うん!」
二人で。
身構える。
次の瞬間。
ごごっ。
右側の。
岩壁が。
盛り上がった。
「なっ――」
岩が。
飛ぶ。
「避けろ!」
ぎりぎり。
身体を。
伏せる。
頭の上を。
石の塊が。
通過した。
背後で。
砕ける。
下級土魔法。
ストーンブレット
しかも。
正面から。
飛んでくるとは。
限らない。
暗い。
炎の光が。
届く範囲は。
狭い。
ゴーレムの。
動きは。
見える。
だが。
壁。
床。
死角。
どこから。
魔法が来るのか。
分からない。
「アレン!」
「離れすぎるな!」
「分かった!」
最悪だ。
◇◇◇
避ける。
走る。
攻撃する。
効かない。
また。
避ける。
「はっ……」
息が。
上がる。
落ちた時の。
痛みも。
消えていない。
それでも。
止まれば。
やられる。
「レオン!」
アレンの声。
見る。
ゴーレムの。
拳。
来る。
身体を。
捻る。
ぎりぎり。
避ける。
俺が。
引きつける。
その間に。
アレンが。
背後へ。
回る。
「フレイムアロー!」
火の矢。
背中へ。
直撃。
効かない。
「次!」
「分かってる!」
今度は。
俺が。
ウォーターボール。
足元。
岩肌が。
濡れる。
ゴーレムの。
足が。
わずかに。
滑った。
「今!」
アレンが。
膝へ。
木剣を。
叩き込む。
がんっ。
やはり。
壊れない。
だが。
体勢が。
少し。
崩れた。
いける。
倒せなくても。
崩せる。
時間を。
作れる。
その間に。
逃げ道を。
探す。
そう。
考えた。
その瞬間。
ごっ。
左の壁。
音。
見る。
遅い。
岩の弾が。
飛んできた。
「っ!」
肩を。
かすめる。
身体が。
回る。
痛い。
「レオン!」
「大丈夫だ!」
大丈夫じゃない。
でも。
言っている場合じゃない。
ゴーレムが。
迫る。
俺たちは。
また。
走った。
何度目だ。
何度。
避けた。
何度。
攻撃した。
分からない。
剣は。
効かない。
魔法も。
決め手にならない。
当然。
《叡智庫》も。
使い物にならない。
少しずつ。
体力だけが。
削られていく。
◇◇◇
「はあ……」
「はあ……」
アレンも。
肩で。
息をしている。
手の上の。
炎も。
さっきより。
小さい。
光が。
弱くなる。
暗闇が。
近づく。
まずい。
視界が。
さらに。
狭くなる。
「アレン」
「炎」
「消すなよ」
「分かってる」
アレンが。
笑おうとする。
だが。
顔が。
引きつっている。
余裕なんて。
ない。
俺も。
同じだ。
足が。
重い。
腕が。
痺れている。
呼吸が。
苦しい。
それでも。
ゴーレムは。
止まらない。
ごっ。
一歩。
ごっ。
また。
一歩。
疲れない。
痛みも。
感じない。
当然だ。
相手は。
魔法生物。
俺たちだけが。
削られている。
「来る!」
アレンが。
叫ぶ。
正面。
ゴーレムの。
右拳。
分かっている。
避ける。
右へ。
そう。
身体を。
動かした。
だが。
足が。
一瞬。
遅れた。
疲労。
ほんの。
一瞬。
身体が。
遅れた。
拳が。
腹に。
めり込んだ。
「がっ――!」
息が。
消える。
身体が。
浮いた。
景色が。
流れる。
どんっ!
背中から。
岩壁へ。
激突した。
肺の。
空気が。
全部。
吐き出される。
声が。
出ない。
身体が。
落ちる。
膝を。
つく。
木剣が。
手から。
転がった。
「レオン!」
アレンの声。
遠い。
腹が。
痛い。
背中も。
痛い。
息が。
できない。
視界が。
揺れる。
くっ。
しまった。
これは。
まずい。
立て。
立て。
俺。
だが。
脚に。
力が。
入らない。
ゴーレムが。
こちらへ。
向きを変える。
「レオン!」
アレンが。
俺の前へ。
出た。
「アレン!」
やっと。
声が出る。
「逃げろ!」
「え?」
「お前は」
「逃げろ!」
「俺が」
「時間を稼ぐ!」
何を。
言っている。
立てもしない。
それでも。
言うしかない。
二人で。
ここで。
死ぬより。
一人でも。
逃げた方が。
いい。
「大丈夫」
アレンが。
木剣を。
構える。
「僕が戦う!」
「馬鹿!」
「勝てないんだぞ!」
「それでも!」
アレンが。
前を見る。
「レオンを置いて」
「逃げない!」
ゴーレムが。
迫る。
俺の前にある。
小さな背中が。
俺を。
守ろうとしている。
「フレイムアロー!」
火の矢。
直撃。
効かない。
アレンが。
走る。
拳を。
避ける。
木剣を。
振る。
火魔法。
剣。
火魔法。
全部。
効かない。
それでも。
アレンは。
止まらない。
「やめろ……」
声が。
出る。
「アレン!」
「もういい!」
聞かない。
本当に。
こいつは。
◇◇◇
アレンの。
動きが。
少しずつ。
遅くなる。
当然だ。
こいつも。
疲れている。
人さらいと。
戦って。
落下して。
その後。
ずっと。
ゴーレムと。
戦っている。
限界は。
近い。
「アレン!」
俺は。
壁に。
手をつく。
立とうとする。
腹が。
痛む。
膝が。
震える。
それでも。
立て。
立て。
その時。
ごごっ。
音がする。
ゴーレムは。
正面で。
アレンと。
向き合っている。
魔法だ。
どこだ。
右。
違う。
左。
見えない。
暗い。
「アレン!」
「後ろだ!」
叫んだ。
だが。
遅かった。
暗闇の。
背後から。
岩の弾。
アレンも。
気づいていない。
振り返る。
その瞬間。
どんっ!
石弾が。
背中へ。
直撃した。
「っ――!」
アレンの。
身体が。
前へ。
吹き飛ぶ。
地面を。
転がる。
手の炎が。
消えた。
暗闇。
「アレン!」
返事が。
ない。
「アレン!」
「……だい、じょうぶ」
小さな。
声。
生きている。
だが。
立てない。
俺も。
立てない。
暗い。
見えない。
ごっ。
音だけが。
近づく。
ごっ。
また。
近づく。
終わる。
このまま。
何も。
できずに。
終わる。
前の人生と。
同じように。
突然。
何も。
選べないまま。
全部。
終わるのか。
――。
いや。
ふざけるな。
俺は。
拳を。
握る。
ここで。
終わって。
たまるか。
俺は。
まだ。
何も。
成し遂げていない。
頂点の先に。
何があるのかも。
まだ。
分かっていない。
なのに。
ここで。
終われるか。
俺は。
行く。
世界の。
頂点へ――。
見えない。
なら。
見えるところまで。
もっと。
深く。
表面じゃない。
こいつの。
中を。
構造を。
弱点を。
止める方法を。
見つけろ!
《解析眼》!
――違う。
今までと。
何かが。
違う。
暗い。
視界の中で。
ゴーレムの身体が。
透けて見える。
岩。
魔力。
関節。
魔力の流れ。
核。
今まで。
見えなかったものが。
見える。
そして。
文字が。
浮かんだ。
【固有スキル進化】
《解析眼 Lv2》
《潜在解析》
俺は。
目を見開く。
もう一度。
ゴーレムを見る。
《潜在解析》。
【ゴーレム】
岩石外殻:硬度A
右脚関節:脆弱
左腕部:損傷
土属性耐性:A
火属性耐性:B
水属性耐性:C
魔力循環:胸部へ集中
――魔力核。
胸部中央。
俺は。
笑った。
「……見つけた」




