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第17話 消えた少年

アレンが。


初めて。


村へ来てから。


三か月が経った。


最近では。


アレンが来ても。


誰も。


驚かない。


「レオン!」


今日も。


村の入り口から。


聞き慣れた声がする。


振り返る。


金色の髪。


青い瞳。


そして。


いつもの笑顔。


「来たよ」


「見れば分かる」


俺は。


木剣を持ったまま。


答える。


最初の頃は。


少し離れた場所に。


必ず。


二人の護衛がいた。


だが。


最近は。


その姿も。


近くには見えない。


村にいる間くらい。


自由にさせてほしい。


アレンが。


そう頼んだらしい。


俺には。


どうでもいい話だ。


アレンが。


木剣を取り出す。


「今日もやろう」


「最初からそのつもりだろ」


「うん」


否定しない。


俺も。


木剣を構えた。


◇◇◇


アレンが。


踏み込む。


速い。


右。


俺は。


木剣で受ける。


乾いた音。


すぐに。


次が来る。


三か月前なら。


ここで。


終わっていた。


だが。


今は違う。


一歩。


下がる。


剣を流す。


反撃。


アレンが。


身を引く。


木剣が。


服の先を。


かすめた。


「おっ」


父さんが。


声を上げる。


アレンが。


嬉しそうに。


笑った。


「今の危なかった」


「次は当てる」


「じゃあ」


「僕も次は当てる」


「今まで当ててるだろ」


また。


構える。


三か月。


何度も。


戦った。


まだ。


一度も。


アレンには。


勝っていない。


だが。


差は。


確実に。


縮まっている。


ただ。


一つだけ。


気になることがある。


時々。


こいつには。


俺が動く前から。


次の動きを。


読まれているような。


感覚がある。


剣術の。


経験の差か。


それとも。


単に。


俺の癖を。


覚えただけか。


まだ。


分からない。


「もう一回」


俺は。


木剣を構え直す。


アレンも。


いつものように。


笑って。


剣を構える。


その時――。


「誰か!」


村の方から。


大きな声がした。


「誰か!」


「俺の息子を知らないか!」


木剣が。


止まる。


◇◇◇


男が。


走ってくる。


村の農夫だ。


顔色が。


明らかに。


おかしい。


「どうした?」


父さんが。


木剣を置く。


「息子がいない」


「姿が見えないんだ」


「家にも」


「畑にも」


「どこにもいない」


周囲にいた。


大人たちが。


集まってくる。


「いつからだ?」


「朝だ」


「早朝の畑仕事から帰ってきた時には」


「もういなかった」


「昨日は?」


「普通だった」


「何か言ってなかったか?」


「何も」


男の声が。


震えている。


村の子供が。


朝から。


消えた。


単に。


遊びに行った。


可能性もある。


だが。


もう。


昼を過ぎている。


父さんが。


周囲を見る。


「手分けするぞ」


「畑」


「川」


「森の入り口」


「街道」


「それぞれ探してくれ」


「見つけたら」


「すぐ知らせろ」


「私たちも手伝います」


いつの間にか。


アレンの護衛も。


集まっていた。


父さんが。


二人を見る。


「助かる」


「なら」


「一人は街道」


「もう一人は川沿いを頼む」


「分かりました」


二人は。


それぞれ。


走っていった。


他の大人たちも。


それぞれの場所へ。


散っていく。


「レオン」


父さんが。


俺を見る。


「お前は村にいろ」


「分かった」


父さんも。


他の大人たちと。


走っていった。


残ったのは。


俺と。


アレン。


アレンが。


大人たちの背中を。


見ている。


いつもの。


笑顔はない。


「レオン」


「僕たちも探そう」


「大人が探してる」


「でも」


「早く、探してあげないと」


「もしかしたら、その子は」


「どこかで泣いているかもしれない」


アレンが。


俺を見る。


「僕とレオン」


「二人で探そう」


「……」


面倒な奴だ。


だが。


何もしないで。


待っている必要もない。


「村の周りだけだ」


「うん」


「何か見つけたら」


「すぐ大人に伝える」


「分かった」


俺は。


念のため。


木剣を持ったまま。


歩き出した。


アレンも。


ついてくる。


◇◇◇


まず。


家。


その周辺。


畑。


道。


川沿い。


子供が。


通りそうな場所を。


順番に見る。


だが。


何もない。


「レオン」


「どうする?」


「探し方を変える」


人を探す。


では。


範囲が広すぎる。


見るべきなのは。


少年そのものではない。


少年が。


残したもの。


俺は。


村の外れへ向かう。


土の道。


畑と。


山へ続く道が。


分かれる場所。


地面を見る。


《解析眼(アナライズ)》。


【地面】


地表状態:普


踏圧痕:複数


車輪痕:有


異常状態:不明


情報が。


多すぎる。


村人。


荷車。


家畜。


毎日。


多くのものが。


ここを通る。


これでは。


絞れない。


もう少し。


人の少ない場所。


道の端。


草。


柔らかい土。


俺は。


しゃがむ。


《解析眼(アナライズ)》。


【地面】


地表状態:良


踏圧痕:有


小型足跡:有


大型足跡:複数


進行方向:北西


俺は。


足跡を見る。


小さい。


子供のものに。


見える。


その周囲に。


大人らしい。


足跡。


一人。


二人。


いや。


複数。


「アレン」


「これ」


アレンも。


しゃがむ。


「足跡?」


「たぶん」


「子供と」


「大人」


「一緒に歩いたのかな」


「分からない」


決めつけるのは。


早い。


足跡がある。


それだけだ。


だが。


確認する価値はある。


俺たちは。


跡を追う。


少し進む。


また。


柔らかい地面。


《解析眼(アナライズ)》。


【地面】


小型足跡:有


大型足跡:複数


踏み荒らし:有


進行方向:北西


同じ方向。


さらに。


木の枝。


折れている。


草が。


倒れている。


誰かが。


通った。


しかも。


一人ではない。


俺は。


顔を上げる。


その先。


山。


村の北西にある。


山だった。


アレンも。


同じ方向を見る。


「あっちは……」


「山だ」


そして。


あの山には。


ダンジョンがある。


◇◇◇


ダンジョン。


魔物が。


発生する。


特殊な空間。


村の人間は。


ほとんど。


近づかない。


山へ入っただけなら。


まだいい。


だが。


足跡は。


山の方へ。


向かっている。


子供が。


一人で。


向かう場所ではない。


しかも。


大人の足跡が。


複数。


偶然。


同じ方向へ。


歩いただけ。


その可能性もある。


だが。


村の少年が。


朝から。


姿を消した。


そして。


子供と。


複数の大人の足跡が。


山へ向かっている。


偶然にしては。


一致しすぎている。


「一度戻るぞ」


「え?」


「父さんたちに伝える」


「この先は」


「俺たちだけで行く場所じゃない」


アレンが。


山を見る。


「でも」


「もし」


「その子が連れていかれたなら」


「早く行かないと」


「だから大人を呼ぶ」


「戻ってる時間は?」


「数十分だ」


「その数十分で」


「何かあったら?」


アレンが。


山を見る。


「今も」


「泣いてるかもしれない」


「……」


俺は。


答えない。


アレンの言っていることは。


分かる。


だが。


俺たちは。


八歳だ。


木剣しか。


持っていない。


相手は。


人さらいかもしれない。


何人いるかも。


分からない。


武器を。


持っている可能性もある。


山には。


魔物もいる。


合理的に考えれば。


戻る。


大人を呼ぶ。


それが。


正しい判断だ。


「戻るぞ」


俺は。


踵を返す。


その時。


足音。


振り返る。


アレンが。


山へ向かって。


走っていた。


「……は?」


一瞬。


理解が。


遅れた。


「おい!」


「アレン!」


止まらない。


「待て!」


アレンが。


振り返る。


「レオン!」


「僕は先に行く!」


「ばか!」


俺は。


思わず。


叫んだ。


何を。


考えている。


相手も。


人数も。


状況も。


分からない。


情報が。


足りなさすぎる。


なのに。


あいつは。


迷わず。


走っていく。


腰には。


木剣。


それだけ。


「……くそ」


俺一人で。


大人を呼びに戻る。


その選択肢が。


一瞬。


頭に浮かぶ。


だが。


アレン一人で。


行かせる方が。


危険だ。


俺は。


木剣を。


握り直す。


「アレン!」


走る。


山へ。


消えていく。


金色の髪を。


追いかける。


本当に。


面倒な奴だ。


俺は。


アレンの背中を。


追って。


ダンジョンのある山へ。


走り出した。


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