第14話 強くなる方法
「違う」
父さんの木剣が。
俺の木剣を。
弾いた。
次の瞬間。
額に。
軽い衝撃が走る。
「痛っ」
「考えすぎだ」
父さんが。
呆れた顔で。
俺を見る。
「剣を振るたびに考えてたら、間に合わねえぞ」
俺は。
木剣を構え直した。
父さんに。
剣を教わり始めて。
三日目。
まだ。
一度も。
父さんに。
剣を当てられていない。
◇◇◇
剣術。
やること自体は。
単純に見えた。
相手を見る。
攻撃を避ける。
隙を見つける。
剣を振る。
それだけだ。
だが。
実際にやると。
まるで違う。
父さんの肩が動く。
右から来る。
そう判断した時には。
もう。
木剣が。
目の前にある。
避ける。
遅い。
受ける。
間に合わない。
反撃する。
その前に。
次が来る。
「ほら」
また。
肩を叩かれた。
「遅い」
「分かってる」
「分かってる奴は、もう少し避ける」
腹が立つ。
だが。
事実だ。
俺は。
一度。
距離を取った。
そして。
父さんを見る。
《解析眼》。
【リアム・アルヴァ】
身体能力:A
戦闘適性:A
剣術:A
危険察知:A
状態:良好
相変わらず。
高い。
父さんが。
木剣を肩に乗せる。
「どうした?」
「考えてる」
「だから、それが遅えんだよ」
また言われた。
俺は。
黙って。
木剣を構えた。
◇◇◇
その日の夜。
俺は。
一枚の板を。
机の上に置いた。
上に。
文字を書く。
――戦闘能力。
その下に。
項目を並べる。
連続で振れる回数。
父さんの攻撃を避けた回数。
父さんに剣を当てた回数。
模擬戦の時間。
自分の能力値は。
《解析眼》では。
見えない。
だが。
結果は。
測れる。
俺は。
板の端に。
書いた。
――記録する。
――比較する。
――改善する。
翌朝。
俺は。
父さんとの訓練を。
記録し始めた。
最初の日。
父さんの攻撃を。
避けられた回数。
三十回中。
二回。
剣を当てた回数。
ゼロ。
模擬戦。
十二秒。
次。
十三秒。
その次。
十七秒。
少しずつ。
伸びている。
数字にすれば。
分かる。
俺は。
昨日より。
強くなっている。
◇◇◇
一週間後。
俺は。
また。
父さんの前に立っていた。
父さんが。
木剣を振る。
俺は。
避ける。
一歩。
横へ。
今度は。
間に合った。
すぐに。
反撃する。
だが。
父さんの剣が。
俺の剣を。
簡単に止める。
「今のは悪くねえ」
初めて。
褒められた。
「ただし」
父さんの木剣が。
俺の脇腹に触れる。
「次がねえ」
「……分かってる」
「頭で考えてから動いてちゃ遅え」
「何度もやれ」
「考えなくても、体が動くようになるまでな」
俺は。
木剣を構えた。
反復。
習慣化。
標準化。
前世で。
何度も使った。
言葉が浮かぶ。
「もう一回」
「おう」
◇◇◇
それから。
毎朝。
剣を振った。
夜には。
記録した。
うまくいったこと。
失敗したこと。
次に変えること。
それを。
繰り返した。
一か月後。
父さんの攻撃を。
避けられる回数は。
明らかに増えた。
剣も。
何度か。
父さんの服に。
触れるようになった。
もちろん。
父さんが。
本気ではないことくらい。
分かっている。
それでも。
ゼロではない。
前に進んでいる。
◇◇◇
だが。
剣だけでは。
足りない。
この世界には。
もう一つ。
戦うための力がある。
――魔法。
使える可能性があるなら。
試さない理由はない。
俺は。
魔法についても。
調べ始めた。
冒険者。
旅人。
魔法を使える人間には。
できるだけ。
話を聞いた。
運よく。
簡単な初級魔法について。
書かれた本も。
手に入った。
必要な投資だ。
最初に。
選んだのは。
水魔法だった。
理由は。
単純。
失敗しても。
燃えない。
本には。
魔力を感じ。
水をイメージし。
形を与える。
そう書いてあった。
曖昧だ。
前世なら。
仕様書として。
差し戻している。
だが。
文句を言っても。
魔法は出ない。
俺は。
右手を。
前に出した。
魔力。
それらしい感覚を。
探す。
目を閉じる。
集中する。
「……ウォーターボール」
初級水魔法。
水球を発生させる。
最も基本的な。
水魔法の一つだ。
だが。
何も起きない。
もう一度。
「ウォーターボール」
何も起きない。
三回。
四回。
五回。
出ない。
俺は。
板に。
一本。
線を引いた。
失敗。
次。
魔法を使ったことのある冒険者の。
話を思い出す。
腹の奥から。
魔力を。
手へ流す。
そんな感覚。
もう一度。
試す。
何も起きない。
次。
水そのものではなく。
コップに入った水を。
具体的に。
思い浮かべる。
指先が。
少し。
冷たくなった。
俺は。
目を開く。
一滴。
水が。
指先から。
落ちた。
「……出た」
結果が。
変わった。
なら。
再現できる。
◇◇◇
そこからは。
実験だった。
呼吸。
姿勢。
イメージ。
魔力を流す感覚。
集中する時間。
一つずつ。
変える。
試す。
記録する。
失敗する。
また。
変える。
数日後。
一滴だった水は。
小さな水の塊に。
なった。
さらに。
少し離れた。
木の板へ。
飛ばせるようになった。
威力は。
ほとんどない。
板が。
濡れるだけ。
だが。
初級の。
水魔法。
少なくとも。
使える。
◇◇◇
剣。
魔法。
どちらも。
まだ。
大したことはない。
父さんには。
一度も。
勝てない。
本気を出されたら。
数秒も。
持たないだろう。
魔法も。
使えるのは。
初級の。
水魔法のみ。
威力は。
板を濡らす程度。
戦力と呼ぶには。
まだ。
弱すぎる。
だが。
以前とは。
違う。
俺は。
板に。
新しい項目を。
書き加えた。
――剣術。
――身体能力。
――魔法。
――固有スキル。
世界の頂点に立つ。
そのために。
足りないものを。
一つずつ。
埋めていく。
まだ。
始まったばかりだ。
◇◇◇
もちろん。
俺には。
やるべきことが。
他にもある。
俺は。
いつものように。
近くの村へ。
農業の相談に。
向かっていた。
畑を見て。
話を聞く。
問題を整理して。
いくつかの。
改善方法を伝える。
仕事を終えた俺は。
村への道を。
一人で歩いていた。
この辺りでは。
魔物は。
ほとんど出ない。
だから最近は。
一人で。
近くの村を。
行き来することも。
増えていた。
しばらく。
街道を歩く。
その時だった。
前方に。
人だかりが。
見えた。
「……なんだ?」
近づく。
荷車。
馬。
商人。
旅人。
何人もの人間が。
足を止めている。
その先には。
一本の川。
そして。
川に架かっていた。
木造の橋が。
途中で。
崩れていた。
俺は。
足を止める。
橋を見る。
《解析眼》。
いつものように。
固有スキルで。
現状を分析する。




