第21話 討伐の恩賞
手向かう者はことごとく討ち取られ、少数の捕虜を残して、盗賊の一団は壊滅した。
アジトの宝物庫からは、莫大な金銀財宝が接収された。
ルーマを人体に喩えるならば、その喉元に刺さった棘のようだった盗賊のアジトは、完全に駆逐された。
頭目を打倒したユイルの武名は、大きく高まった。弱冠十五歳の少年が示した武勇に、誰もが賛辞を惜しまなかった。
ユイル一行、ルーマン正規軍、義勇兵の一群は、馬首を連ねてルーマに凱旋した。
都市の門をくぐると、数え切れないほどの民衆が、大通りの両側に人垣を作ってユイルたちを出迎えてくれた。
市民たちの歓呼に、ユイルたちは手を上げて応えた。カテリーナがその美しい笑顔を見せると、民衆のボルテージは否応なく高まった。
凱旋パレードの終点は、法皇宮殿だった。
カテリーナに先導されて宮殿内部に入ると、ユイルたちは大理石の列柱の間を抜け、謁見の間に案内された。
正面の壁には、ルーマン法皇国の国旗、白地に金糸で十字架を描いた華麗な旗が掲示されていた。
その前には、十段ほどのステップがあり、最上段に法皇の玉座が据えられている。
玉座には、現法皇、レオ三世が座していた。
獅子のたてがみを思わせる長い金髪、凍てついた氷のような碧眼。荘厳さと華麗さを兼ね備えた、ルーマンの絶対君主は、魅力的な笑顔でユイルたちを出迎えた。
「ご苦労だった。剣士ユイル」
ゆっくりと立ち上がり、ユイルたちを労う。
ユイルは片膝をついて一礼した。
「猊下のご威光を持ちまして」
レオ三世は大きく頷き、
「カテリーナも、大儀であった」
妹を気遣って声をかけた。
「無事戻れました。兄上」
カテリーナも兄に返礼する。
レオンも二人の後方に控えて、深く頭を垂れていた。法皇をこんな間近で見るのは、初めてだった。
ラームはといえば、アズライルとチャンドラ、それに水着のような服装をとがめられ、宮殿に入ることが許されなかった。仕方なく、外でユイルたちが戻ってくるのを待っている。
「剣士ユイル、そなたの父は、ルーマンの騎士だったと聞いたが」
「はい、猊下」
ユイルが誇らしげに答えると、レオ三世はステップを優雅に降りてきて、ユイルのすぐ目の前に立ち、祝福するように右手をユイルの額にかざした。
「この度の手柄に褒美を与えるとしよう。剣士ユイル、そなたを我がルーマンの騎士に任ずる」
ユイルは心の中で歓喜した。孤児になってから五年、彼はついに父親と同じ騎士になれたのである。
「謹んでお受けいたします。法皇猊下」
凛々しい表情で、ユイルは新たな身分を受け入れた。
すぐ後ろで、カテリーナも嬉しそうに笑顔を見せている。
(ユイルには、誰よりも騎士の資格が相応しいもの)
カテリーナは、心からユイルを祝福していた。
騎士になると、その役目として、宮殿内の警備の任が与えられるのが常である。
ユイルに会う機会が増えるかもしれないと、十四歳の少女は期待したのだった。




