第20話 頭目との死闘
そして、後詰めの増援が戦場に到着した。
「ルーマン正規軍、見参!」
名乗りと共に突撃を開始する。
「残敵の掃討は彼らに任せよう! 中に突入して、頭目を討ち取る!」
ユイルが叫ぶ。
「了解!」
レオン、カテリーナ、ラームが即答する。
走り出したユイルの横に、カテリーナが並んだ。
「ユイル、少し援護させて」
彼女はささやくと、呪文の詠唱を始めた。
「我、カテリーナが命ず! 剣士の剣に、炎を! ソード・フレイム!」
ユイルの両手の剣の刀身が、赤い炎に包まれた。燃え上がる炎には、剣の攻撃力を倍加させる効果があった。
「ありがとう、カテリーナ!」
大きな勇気を貰って、ユイルは疲れを忘れて疾駆した。飛び出してくる敵を次々に斬り倒し、奥を目指す。
負けじと、チャンドラが恐るべき破壊力で敵をなぎ倒していく。
「烈風よ、敵を切り裂け! ウィンド・カッター!」
レオンの魔法も、確実に敵を撃破していった。
ユイルたちパーティーは、猛々しい力の奔流となってアジトの中を席巻した。何者も、彼らを止めることはできない。
ついに一行は洞窟の最深部に到達した。
そこには、樫の木で作った無骨な椅子に座している大男がいた。
不敵な面構えと、筋肉の塊のような見事な体躯。
不機嫌そうな表情で、大男──盗賊の頭目はユイルたちを迎えた。
「よくも俺の配下たちを。貴様ら、絶対に生きては帰さん」
頭目が立ち上がる。その身の丈は二メートル近い。
丸太のような腕で、傍らの大剣を掴む。その刀身は幅広で分厚く、相手を斬るというより、叩き潰すためにあるような業物だった。
ユイルはどう攻めるか思案した。力では、あちらに分がありそうだ。それならば、速さで圧倒するしかない。
かつて兄弟子のアレクが見せたような光速の双剣を、ユイルは再現した。
頭目がブンブンと振り下ろす大剣を、間一髪でかいくぐり、鋭い左右の突きをお見舞いする。
頭目の腕や腹に、流血の赤い花が咲いた。
しかし、浅手だった。速さを優先したため、攻撃に力を込められない。
致命傷を狙いたいユイルの目の前で、頭目が大剣を左手に持ち替えた。一瞬の隙と見て、ユイルは突進した。
頭目がニヤリと笑い、隠し持っていたダガー(短剣)を投擲してくる。わざと隙を見せ、ユイルを誘ったのだ。勢いのついていたユイルは、予想外の攻撃を避けられなかった。ダガーが、獣皮鎧を貫いて、深々と右胸に突き刺さる。
ユイルは激痛に耐え、後ろに飛んで敵との間合いを確保した。
ダガーを引き抜く。更なる苦痛がユイルを襲った。
満を持して、頭目が両手で大剣を振りかぶり、猪突してくる。
その瞬間、カテリーナの呪文が繰り出された。
「我、カテリーナが命ず! 癒しの光をユイルに! ヒール!」
詠唱と同時にユイルの傷口が光り輝いた。
一瞬で傷がふさがり、痛みも消え失せる。
カテリーナへの感謝を胸に、ユイルは頭目の攻撃を凝視した。
大剣の、風を生むような猛烈な振り下ろし。
太刀筋を見切って、ユイルは飛んだ。高く飛び上がり、体を一回転させる。頭目が気付いたとき、ユイルは床を穿った大剣の上に着地していた。驚異的なバランス感覚だった。
驚愕する頭目に、双剣のクロス攻撃を叩き込む。右手の剣が頭目の右肩に、左手の剣が左肩に食い込んだ。両方の刃が勢いに乗って、頭目の肉と骨を粉砕する。
ユイルは後ろに飛んだ。くるりと一回転して着地を決める。
ユイルの視線の先で、頭目が仰向けに倒れていった。地響きを立て、地面に横たわる。
カテリーナの助けを得て、ユイルは大きな武勲を挙げることができたのだった。
「やったわね、ユイル!」
駆け寄ってくるカテリーナを、ユイルは抱きとめた。
「君のお陰だ。カテリーナ!」
心からの感謝を口にする。
「ヤッタネ! ユイル!」
勝利を祝して、ラームが後ろから抱きついてくる。
カテリーナとラーム、二人の美少女に、ユイルはサンドイッチのように挟まれる格好になってしまった。
嬉しいような恥ずかしいような、複雑な気持ちに頬を赤らめる、十五歳の少年、ユイルなのだった。




