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第19話 レオンとの絆

 一行は荷物をまとめると、最後の行軍に出発した。

 程なくして、朝日に照らされた目標の山が見えてくる。

 そこからは相手に悟られぬよう、慎重に馬を進めた。

 虎のチャンドラも、獲物に近づくときのように、足音のしない歩き方をしている。

 山の麓で、ユイルたちは馬を降りた。手綱を近くの木に結びつける。ここからは徒歩で近づくのだ。

 ラームもチャンドラの背から降り、素足で歩き始める。

 平らだった地面が次第に斜面になり、獣道は山の起伏に沿って上へと昇り始めた。

 パーティーは一列に連なり、まばらに生える樹木を遮蔽にしながらアジトを目指した。

 やがて。

 その悪の巣窟は、ユイルたちの前に空ろな口を見せた。

 山の中腹に、ぽっかりと洞穴の入り口が開いている。自然の洞窟を利用した、天然の要塞だった。

 アジトの入り口には、若い盗賊が一人、見張りに立っている。

 ユイルは仲間を顧みた。

「手はずどおりに行く」

「ユイル、後ろから味方が登って来ているわ。もうすぐ合流してくれるはずよ」

 背後を窺っていたカテリーナが報告する。

「了解だ」

 ユイルは弓を構え、矢を引き絞った。細心の注意を払って狙いを定める。

(行け!)

 戦闘の火蓋を切る一撃を、ユイルは放った。

 解き放たれた矢は音もなく飛翔し、見張りの左胸に吸い込まれるように突き刺さった。

 声も立てられず、見張りはその場に崩れ落ちる。

(次!)

 ユイルは、矢尻に油を浸した布を巻きつけた矢を取り出した。レオンが、懐の火種を近づける。

 緋色に燃える火矢が誕生する。ユイルは間を置かず、炎の一矢を洞窟の奥深くへと撃ち込んだ。

 ユイルは弓を捨てると、背中の双剣を鞘走らせ、攻撃態勢を取った。

 すぐに、蟻の巣をつついたかのように、盗賊たちがわらわらと飛び出してくる。手には小剣や弓を持っている。

「行くぞ、みんな!」

 ユイルは叫んだ。

 全力で駆けて、敵との間合いをつめる。

 その横を、ラームを乗せたチャンドラが追い抜き、鋭い爪で二人の盗賊を血祭りに上げた。すぐさま、尖った牙が光る口で正面の敵の喉笛を噛み千切る。アズライルもラームの肩から飛び立ち、一人の男の顔に鋭いくちばしを突き立てた。顔面から鮮血を迸らせ、男は昏倒した。

「やるな!」

 猛獣たちの活躍を横目に、ユイルは双剣を振るった。

 右手の剣で一人の首を断ち、左手のデュランダルでもう一人を斬り伏せる。レオンがすぐ後に続いていた。

 初めての戦闘に、レオンは混乱していた。

 呪文を唱えなければならないが、心が定まらない。

 スタッフを持ちローブを着たレオンの姿を見て、目ざとい盗賊の一人が声を上げる。

「ウィザードだ! ウィザードがいる!」

「先に倒せ! 魔法を使われる前に!」

 別の声が命じる。

 盗賊たちが陣形を変え、レオンに殺到してくる。その数は、ユイルの想定を超えていた。

 レオンを背にかばいながら、ユイルは奮戦した。

「たあ!」

 一人を斬り倒し、

「エイッ!」

一人を頭頂部から両断する。

 休む隙がなく、ユイルの息が少しずつ上がり始めた。

 それでも自分を鼓舞し、

「みんな、怯むな!」

仲間に声をかける。

「大丈夫よ、ユイル!」

 カテリーナも乱戦の渦に巻き込まれつつも、メイスで果敢に戦っていた。

「兄さん、平気ですか!?」

 レオンが義兄を気遣う。

(この数・・・)

 ユイルは思った。

(レオンを守りながらでは、オレもこいつも命を落とすかもしれない・・・)

「兄さん、もう僕を庇うのは止めて下さい」

 レオンが決意を固めたかのように、静かに言う。

「レオン」

「これ以上・・・、これ以上、兄さんの足手まといになるのは──嫌です!」

 レオンはスタッフを高く掲げた。

「我、レオンハルトが命ず! 炎の矢よ、敵を貫け! ファイアー・アロー!!」

 詠唱と共に、複数の炎の矢が四方に散り、盗賊たちを貫き燃焼させる。

 形勢は、たちまち逆転した。

「レオン、お前は、足手まといなんかじゃない」

 ユイルは背中合わせになったレオンに告げる。

「お前がいてくれて、本当に良かった」

「兄さん・・・」

 泣きそうな顔で、レオンが応える。

 二人は今、兄弟であると同時に、共に敵と戦うかけがえのないパーティー(仲間)となったのだった。

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