死国
https://note.com/yokoze_asahi/n/n90d08d66bfd8
大きな半島を一周しかけた頃、地図を確認して、このまま進み続けると追手のシマを踏むことに気付いた私は、近くの港のフェリーターミナルから違う島へ渡ることにした。
朝に半島の一番下の駅から列車に乗ったが、乗り換えの待ち時間もあってか陽は落ちかけていた。
夕方の便、待合室に乗船開始のアナウンスが流れタラップを渡り乗船、客室に入った。
自動販売機で缶ビールを買い、窓際のコンセントが付いている座席につき、携帯電話を充電しながら出航を待った。
船の出航と同時に缶ビールを開け、海を見ながらビールを飲み干し、携帯電話の充電もある程度できた所で私は階段を上ってデッキに出た。
左舷から沈みかけの太陽が見えた。この大海原を照らす力をほぼ失った太陽に私は見惚れた。昼間の眩しくて鬱陶しい太陽とは違う、とても優しい光だった。その太陽を見ながら私は色々な歌を口ずさんだ。
艫の方に舵のレプリカのようなものがあった。ビールを飲んですっかり酒に酔った私は「おもぉかぁじ」とつぶやいて舵を時計周りに回した。行きたい街があった。三十年ほど前の震災がなければ、日本一の港になっていただろうあの港町に。
高揚した気分の後に暗い気持ちと寒さが襲い掛かってきて、私は「神戸に行きたいな」とつぶやいて客室に戻った。
携帯電話の充電を再開し、出航から約二時間で目的の港に着岸した。陽は既に沈んでいた。
今まで旅をしてきた島とは違う島、八十八ヶ所の札所があるお遍路の島に上陸した。




