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逃亡代行  作者: 横瀬 旭
第三章(二)
33/43

ワン・パーフェクト・サンライズ

https://note.com/yokoze_asahi/n/nf8d34a79f20f

 列車が終わり、ホテルも取らず夜を徹して歩き続けようと思い真っ暗な海岸沿いを歩いていると、通りすがりの自動車が私の横で停車して、運転手に「ちょっと乗っていけ」と声をかけられた。助手席に乗り込み、シートベルトをすると車は発進した。


 運転手は若い男の人だった。歳は私と同じくらいだろうか。「寒かっただろう」と男は私に声をかけた。


「いや、この辺は暖かいですよ」


「どこから来た?」


「それは...」


私が言いよどむと運転手の男は


「まあいいや。訛りがないから多分俺と同じような所だろう」


そう言って彼はアクセルを踏み込んだ。


 「これはどこへ向かってるんですか?」


「灯台だよ。趣味なんだ。真夜中に灯台を撮るのが」


ループ橋を渡ってしばらく走ると、駐車場に車を止めた。


駐車場から灯台までは徒歩で向かった。道中男が「上を見てみろ」と言ったため言われた通りにすると、星がたくさんあった。ずっと見ていると、どんどん星が増えた。星座はオリオン座しか知らないけど、それすら見つけられないほど多くの星があり、私の頭の上に粒だらけの天井があるようだった。


 十分ほど歩いて灯台に到着し、男は撮影を始めた。色々な角度から画像と映像を撮っていた。


私もキラキラと光って回るレンズに見とれていた。思えばこの逃亡で灯台を見るのは何度目だろうか。不思議な縁があるなと思う。


撮影を終え、駐車場に戻って車に乗ると男は「もう一基撮影する」と言って車を発進させた。


再びループ橋を渡り、しばらく走ると「観光タワー」と呼ばれている建物の横の駐車場に車を止め、また灯台まで歩いた。


 灯台の敷地には門があって灯台に近づけなかった。男は門の外側で撮影を始めた。


「距離も遠いし街灯が邪魔だ。真っ暗な中にポツンと光ってるのが孤高な感じがしてかっこいいのに」


渋々撮影している様子だった。「これでいいや」と男は言って車に戻っていった。車内に戻って男が「しばらく仮眠を取る」と言ったので私も少し眠ることにした。


 エンジンのかかる音で目が覚めて「ここはどこだろう」と一瞬戸惑ったが男と灯台を見たのを思い出し運転席を見た。男はフロントガラス越しの海と空を見ていた。


「ここは島の最南端。最南端からの日の出をついでに見たかったけど、この天気じゃだめだね」


男はそう言って音楽をかけ、車を発進させた。


 しばらく走り、男がバックミラーを見ながら「後ろを見てみろ」と言われたためヘッドレストの横から後ろを見てみると、燃えるような真っ赤な太陽が雲の隙間から顔を覗かせていた。


かかっている音楽にとても合うような太陽の光だった。曲名が気になったため、私が「これはなんという曲ですか」と問うと、イギリスのテクノユニット「オービタル」の「ワン・パーフェクト・サンライズ」だと教えてくれた。


 駅まで送ってくれた男は去り際に「次は綺麗な日の出をみよう」と言っていたが「もう会わないですよ」と私は返した。


列車に乗って大きな半島を上り始める。海沿いを走る列車の車窓から岩のような小さい島がたくさん見え、ずいぶん前に私が本名や身分証を捨てた宮城県の松島の風景に似ている気がした。

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