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異世界実録路線 少女は魔の現実に立ち向かう  作者: 幻影摩天楼


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第95話 東京駅到着

「ヒャヒャヒャヒャ!!!!どうしたんだよ勇者様よお!!!逃げてばっかじゃもう詰んじゃうヨ~♬!!!!」


目の前のサイコ殺人鬼風の野郎は氷の刃で刃渡りを延長したガーバーマーク2サヴァイヴァルナイフをめちゃくちゃに振り回しながら間合いを詰めてきた。


太刀筋そのものは速い。


息継ぎをほとんどせずに連続で左右の袈裟斬りと、左右横の薙ぎ払いをほぼ同時に繰り出してくる様は、適当に振り回しているようでこちらに逃げ場を与えないほど隙がない。

まるで高速回転するプロペラが不規則な角度から左右同時に襲ってくるようで、奴が通ると電車の手すりが鈍い音をたててスパスパ切れていく様は、それだけで相手に恐怖を感じさせて平常心を削ぐのに十分と言える。


上野公園で襲い掛かってきた豚オーク野郎とは違った剣技。


だが、豚野郎ほどの練度は感じられない。


我流で長年獲物を狩ってきたという感じで、体系的な武術ないし魔法の類はあまり学んでいない気がする。


さっきナイフの刃を延長したのは凍結させる系統の魔法か・・。


いちいちこんなのに付き合ってはいられない。

ならば。


俺は懐にしまってあった袋に手を入れた。

それから水晶のような塊を取り出した。


「いちいち魔力を浪費したくないんでな。こいつを喰らいな!」


俺は所々尖った水晶のような塊をチンピラめがけて投げつけた。

同時に俺は叫ぶ。

「極寒の起源を封じし魔水晶よ!すべてを解放し凍土の獄を目の前の愚者に示せ!!」

俺が解放の言葉を叫んだ直後、青白い水晶のような塊はチンピラのほぼ手前で砕けた。

そして、すさまじい冷気が目の前のチンピラめがけて襲い掛かった。

こちらにもまるでドアを開けた冷凍室の手前に差し掛かったような冷気が感じられる。

そのまま受けていたら確実に凍傷を負うとはっきりわかる皮膚を刺すような痛みのある冷たさだ。


「ゲッ!!!!これは“凍土の微笑み”!!!!ウっ!!!!んごおおおおお!!!!!!」

一瞬のうちにチンピラの全身がその場で凍り付いた。

辛うじて顔の半分だけが凍り付かずにいた。


連結部のドアの前に陣取っていたヒッピー風の仲間は動揺した。

「それは攻撃型マジックアイテム“凍土の微笑み”!!てめえ!!そんなもんまで手に入れてやがったのか!!」


「色々もらったのさ」


「おっおい!!見物してねえで助けてくれ!!!」

チンピラは仲間に助けを呼ぶ。


が、すぐに俺が仲間を恫喝する。

「動くな!!下手な真似したらこいつを対抗してくる電車の前に放り出すぞ!!」

俺は山手線の大きな窓を氷系の攻撃呪文でぶち破り、目の前の置物と化した野郎をつかんで半分ほど窓から出した。


つかむとやっぱり冷たい。

使い捨てで魔法力を消耗せずに済むアイテムだからこういうシチュの時に助かる。

さながら魔法のインスタントアイテムってとこだな。

ダークゴブリンの老人宅に大量に転がってたからまとまった数持ってきといてよかった。


「まっ待ってくれ!!俺は賞金目当てであんたを狙っただけで、誰かに頼まれたんじゃない!!ほんの出来心なんだ!!!今回だけ勘弁してくれ!!!」


「ずいぶんしおらしくなったなチンピラ野郎!誰に頼まれて俺を襲った?」


「そ~、それ~は~♬」

半ばふざけたごまかし口調の野郎の発言は俺の癇に障るのに十分だった。

「言いたくないならいいよ。空中分解してくれ」

俺は奴にさっきとは別のアイテムを取り出した。

にやつく小太りの悪魔の小さな像であるそれに対して、内部に封じ込められた魔法を解放するコードを叫ぶ。

直後、その像から黒い霧が噴出し、チンピラを覆っていく。すぐに黒い霧は消えたが、気のせいかチンピラの全身がやや薄くなったように見えた。

「こいつは“沈黙の魔人”というデーモン系モンスターが作ったらしいアイテムでな。一か月間、気配を消して誰にも気づかれない効果がある。外に投げ出されてもお前に気づく人間は誰もいない。たとえ電車にひかれてバラバラになろうとその間は誰も臭いにも姿にも気づかん。まあ、お前らがこの電車にかけた魔法と同じことだ。誰にも看取られることなく屍をさらしな」


俺はゴミを放り投げる感覚でそいつをガラスが割れた窓から対抗する電車が来る直前に放り投げた。


「こ・・・んの・・人でなしいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!」


ドガアアアアッッッッッッ!!!!!!!グシャアアアアッッッッッッッッッ!!!!!!!


顔以外は凍結した刺客は絶叫とともに対抗する線路から来た上野方面行の電車にはねられた。

凍結した体がはねられた衝撃でバラバラになるのが一瞬見えた。

魔人像に封じられていた認識疎外の魔法の効力は一か月以上、それまで誰も気づくことはない。

それまで醜く腐敗しようが、悪臭を放とうが誰も気づくことはない。

対向電車にも魔法の効果でぶつかった衝撃自体気づかれていないだろう。

それまでは電車についたへこみなども気づかれることはない。

気づかれるのは約1ヶ月後だ。



「クッッッッ!!!!このガキャッッッ、おとなしくしてりゃつけあがりやがって!!!!」


ヒッピー風の風貌の男がみるみる正体を現し、うろこのある緑色の皮膚をしたモンスターの姿になった。

見たところ爬虫類と人間が合わさったような種族・リザードマンの系統の様だ。


「質問に答えろ!何者だ!お前!」


「ケッ!オムニの町を拠点に賞金稼ぎしているブルバンとはオレ様のことよ!!!」


“オムニの町?聞いたことのない街だな”


「オムニとは新世界の町の事か?なぜ俺を襲った?」


「さっきの野郎と同じ理由よ!少し前からお前の首に賞金が賭けられている!!オレはお前が殺した野郎と臨時で組んでお前の首を狩りに来たわけよ!!」


ヒッピー風の男は、どこから取り出したかは知らないが、両腕に武闘家が使う鉄の爪のような手甲をはめた。

手甲からは鋭い刃の付いた爪が3本ついており、構えからそれなりに練度はありそうだが、さっきの奴と大して変わらない。


めんどくさそうな奴だから速攻で片付けよう。


「いいだろう。勝負だ!」

俺がそういった瞬間、奴は爬虫類特有の舌を下品にたらしながら襲い掛かってきた。


俺はタイパンを抜くふりをして、すぐに懐に手を突っ込み、例の袋からS&Wモデル66・4インチバレル・357マグナム6連発ステンレス仕様を取り出した。

そして、目の前のリザードマンに銃口を向けると、片手で至近距離から引き金を引いた。


タァーン!!!

地響きのような乾いた音がした直後、俺の放った357マグナムはリザードマンの右太ももを直撃し、奴はその場にあっさりと倒れた。


「ブヘッェ!!!!!!きっ、きたねえぞてめえ!!!勝負に銃を使うとは、外道め!!!!」


「戦いとは騙し合いだ。拳銃を使用してはならないなんて誰が決めたんだ?まさか騎士の決闘でも考えていたのか、お前?」

「第一、フーテンヒッピー風のスタイルで、緑色の爬虫類ごときにそんなことを大真面目に言われてもなんかの笑い話にしか聞こえねーよバーカ!」


俺は奴の首をつかんで持ち上げ、すぐに顎をしたから突き上げるようにつかんで、もう片手で357マグナムの銃口を向ける。

「知っていることを全部吐いてもらおう。さもなくばさっきの野郎と同じ羽目になるぞ!」


「わっ、分かったよ!!何でも言うから殺すな!!」


「誰に雇われた?」


「雇われたんじゃねえ!!オムニにある酒場で賞金首を張り出してあるフロアがあって、そこでお前のことが書いてあっただけだ!」


「どうやってこの世界に来た?」


「張り紙に書いてあったところへ連絡したら、覆面をした野郎が酒場へ来て、人間に化けるマジックアイテムとかをくれて新世界と人間どもの行き来するデカい出入り口を通ってきた!」


「!?」

たしか、新世界と現実とをつなぐ大型の入り口は政府が管理しているはず・・・。

公式にはモンスターのことは認めていない政府のことだから秘密裏に通したということか?


「デカい出入り口!?もしかして10年くらい前に開いたこっちとお前らの世界を行き来する大きな出入り口の事か?」


「そっ、そうだ!!」


「なぜ人間の管理する出入り口をお前が通れた?」

リザードマンは目線を俺からそらして黙ろうとする。

俺はリザードマンの首を絞めながら、さっきと同じように窓からそいつの首の部分だけを投げ出す形で外に出す。


「わっ、分かった、言う!!言うからやめてくれ!!!!おっ、お前ら普通の人間は知らねえかもしれねえが、新世界ではよくお前ら人間関連の仕事はよく俺らに依頼が来るんだ!!超人族共とかお前らの政府が表ざたにできねえ仕事を新世界にいるその筋の腕自慢にその都度依頼が来るわけよ!!」

じたばたと弱弱しくあがくようにリザードマンは叫ぶ。


「超人族について知っているか?小笠原とかいう奴は?他に鳩崎秀樹という野郎は知っているか?」


「なっ、何も知らん!!はっ、放してくれよ!!!」


こいつからもそれほど情報はとれないか・・・・・・。

俺は窓から片手でそいつを車外に放り投げた。

直後、対抗する電車に仲間と同じように派手にはねられた。

「ブィィィィンンンゴォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!」


対抗する電車にはねられたモンスターは派手に血をまき散らしながら、自動車の衝突試験で使われる人形のように軽々と宙に舞い、線路の中央付近に落ちるのが走行中の車内からかすかに見えた。


奴にも同じく、認識疎外の魔法をこっそりもう一個の像でかけておいた。

一か月は誰にも気づかれることはない。奴がまき散らした血や臓物も同様だ。

俺を誰にも気づかれることなく葬ろうとした奴らがそうなる羽目になるとは・・・。


まあ、同情などしない。

どのみちチンピラの殺し屋らしい末路だ。



そうこうしているうちに電車は東京駅に到着した。

ホームには多くの人が並んでいるが、誰も俺の乗ってきた山手線に気づく者はいない。

認識疎外の魔法は術者が死んでもしばらくは続く種類のものがあるらしいから、この車両もしばらくは大衆に気づかれまい。


だが、運転手と車掌は恐らく魔法がかけられる前に乗車してたから効果がないのか?

現に、この電車を運転しているのは運転手だし、車掌も乗車しているということはこの電車の存在に当然気付いているはず。

だが、車掌は俺の戦闘にも存在にも気づいている様子はない。

ダークゴブリンの老人によると、魔法も予期せぬ事象や条件が重なると、エラーのようなものが発生することもあると聞いた。

今回の認識疎外の魔法の類なら、ある部分は効き目があって相手に気づかれなくなっても、ある場面は相変わらず効き目なく認識できてしまうこともあるらしい。


ロープレとは違い、結構現実というものは魔法にもアバウトな部分があるようだ。


だが、早く下車しないと。

窓が割れたことがばれるとマズイ。


だが、車掌はしかし、まだ窓が壊れていることなどには気づいていない。

どのみちバレるだろうが、俺の事には気づくまい。


俺はそそくさと電車を下車した。

周りの人間は俺や電車にはまるで気づいていない。


俺は久しぶりの東京駅に降り立ち、小笠原がいるであろうエンペラーホテルへと向かった。


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