第91話 淫靡なる刺客
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「それで公子さん。小笠原冥さんってどのような方なのですか?エレーヌさんは本当にその方のところにいるのですか?」
「現時点で手掛かりはそれしかないわ。まずは冥に会ってあのミーシャという女を知っているか事実関係を確認しないと!!」
「本当は部下を呼びたいところだけど、時間がないわ!!!」
現実世界、東京都心。
律子は公子とともに、ミーシャ自身が自分を雇ったと叫んでいた殿上人・小笠原という人物の元に急いでいた。
公子は内心嫌なものを感じていた。
本当に小笠原という人物があのミーシャに命じてエレーヌを拉致したのか、確証が持てないのだ。
おまけにこちらに戻ってきてから、不自然に力が制限されている違和感を感じていた。
“おかしい・・・。普段なら通信呪文で冥とホットラインで連絡できるのに・・。それに、部下に呼びかけても応答なし。こっちに戻ってきてから何かの妨害をされている!?一体だれがこんなことを!?”
長い髪をなびかせながら公子が走りながら立て続けに律子に説明する。
「あのミーシャという女が小笠原冥に雇われたと発言していたのは律子も聞いていたわよね。殿上人で小笠原と言えば小笠原財閥しかいない」
「ええ、小笠原財閥というのはもちろん知っています。よく電車の中から外を見たら小笠原財閥の系統の会社がよく大きな電子看板を立てているのをよく見ますから」
「でも、何か変なの・・・」
「どういうことなのですか?」
「私の知る限り、冥は合理的な考えをする子なの。どちらかというと、あまり意味のない戯れを好む方ではないわ」
「殿上人の中には非合理的なことをする存在が多いのは事実。でも小笠原冥は物静かで、それでいて、特に冷徹に自分の利益の事だけを考える人なの。そんな彼女があんな突拍子もない意味不明なことをしでかす黒幕とはとても思えないの」
律子も走りながら一寸口元に右手親指を当てて考えた。
「はっきりとはわかりませんが、私も公子さんの話を聞く限りそう思います。根拠はありませんが、あのミーシャとかいう変な女性は何か別の意図があってエレーヌさんを攫ったんだと思います」
「でも、公子さん。たしかあのサトシという少年。その小笠原という人と関係のある人なのでしょう?どういう関係があったのですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
走りながらの会話。
だが、公子は律子が発したサトシに関する質問に口をつぐんだ。
苦虫をかみつぶしたような表情を崩そうとしない。
「私にはあの男の子のことがよくわかりません。どうしてエルードさんのところにいたのか?そして、あの人はどうして魔法を使えたりしたのか・・・。あの人はどうも現実世界の人の感じがしたんですがなぜあそこにいたんですか?とても研修か何かで来ているようには思えなかったのですが・・・」
「それはまたの機会にじっくりとお話しするわ律子。今は小笠原冥と会って話をすることだけに集中しましょう」
2人は走りながら近くの路地の角を曲がった。
すると公子は足を止めた。
律子も慌てて足を止める。
目の前に誰かがいる!!
夜だから薄暗くてよく見えない。
だが、それは一歩一歩こちらにゆっくり歩いて近づいてきた。
暗くてよく見えない全身が電柱の明かりに照らされてはっきり見えるようになった。
そこにいたのは、社会常識から逸脱した格好をした少女だった。
「葦國公子様に上総律子様、ですね?」
少女は無機質な声で公子に話しかけた。
「だったらどうなのかしら?」
「ワタクシ、魔法少女アケミと申します」
律子はこの少女を見てかなり引いていた。
“何、この人・・・?”
“丁寧な口調だけど、人の感じがしない・・・”
“それになんかとんでもなく派手な格好をしてて、見てるこっちが恥ずかしくなってくる・・・・・”
公子と律子の前に立ちふさがった少女は、明らかに一般人の雰囲気ではなかった。
年は中学生高学年か高校生くらい。
背は160をちょっと超えるくらいか。
髪は金髪で短め。自毛なのか、染めているのかはよくわからない。
それでいて禍々しい感じの目玉をかたどった感じのヘアピンを生え際に付けている。
目つきもとても異様だ。
焦点というか、ハイライトがない。
まるで自我というものを喪失した無表情の目つきで、ロボットのような、それでいて異様な妖艶さを持つ目つきをしている。
そして、何よりも目を引き付けてしまうのは、凡そ公共の場にふさわしくないきわどい格好だ。
両腕はやや赤紫色がかった黒の光沢のある長手袋をしていてる。
胸がへそまで大胆にあらわになったレオタード風の衣装は、かなり派手な水着の様で、手袋と同様光沢のある禍々しい黒と赤が混ざった色合いとデザインで飾られ、足ぐりがかなりきわどい・・・スーパーハイレグのかなりするどいものになっている・・・。
おまけに太ももの鼠径部近くまであるハイヒール状の長いブーツを履いており、色はレオタードや長手袋と同じ赤紫がかった禍々しい黒。
首から胸、そしてへそまで真ん中があらわになっているレオタードのようなボディスーツから見えるへその下には、おそらく目玉をモチーフにした赤黒い不気味な刺青のようなものが見える。
おまけにへそと両耳には、ヘアピンと同じ目玉をかたどった不気味なピアスをつけているのだ。
全体的に、洗脳されて悪に寝返った魔法少女のようなスタイルに身を包み、みだらな肉体を公衆の面前でさらけ出す少女がそこにいた。
よくあんな風俗とかいかがわしいところの人みたいな恰好をしていられると、律子は身震いしながら思った。
無意識のうちに律子は公子の後ろに隠れていた。
目の前にいる少女の格好といい、雰囲気と言い、淫乱かつ不気味で直視できなかったのだ。
新世界で遭遇した存在の数々の方がまだましと思うくらい、律子はショックを受けていた。
それにより異様なのは、今は夜。
それなのにあの少女の背後の影がやたら濃く見えるのだ。
少し街頭に照らされて影ができるのは夜でも当たり前だが、何か不自然に彼女の影は黒すぎるのだ。
「私のかわいい子をよろしくネ、お二人サン♬」
なんと、目の前の少女の影から人の声が聞こえた!
「誰!!」
公子は瞬時に身構える。
「フレイムブレイド!!!」
公子は高速で呪文を唱えると、瞬時にスローイングナイフ状の炎のナイフを作り出し、目の前の少女の背後にある不自然な影めがけて3本分放った。
炎のナイフは影に寸分の狂いもなく突き刺さった!!
次の瞬間、影が波を打つように動いたかと思うと、影がまるでスライムのように真上に伸びた。
そして、影はそのまま淫靡な格好の少女の横に立つと、影は人型になった。
影の人形のようなそれにヒビのような亀裂が入り、パリンッ!!という音とともに黒い影の黒い部分が割れて取れた。
その中から現れたのは、古典的な魔女の格好をした女性だった。
直後に彼女は両手で後頭部から金髪のロングヘアをかきあげるしぐさをする。
年は見る限り大学生くらい?
美しい碧眼で抜群のスタイルに、かなりの美貌の持ち主だが、その美しい目からは想像しがたいほど妖しい眼光を放っている。
濃紺の古典的な魔女の大きなひさしの帽子。
帽子の先端には逆五芒星の星をかたどった飾りがついている。
限りなく黒に近い紺色のローブを纏い、ローブの下は白っぽい服装。それにローブと同色のタイトスカートに黒タイツを穿いて高めのヒールを履いている。
服装は古典的な魔女の服に現代的な要素をミックスしている感じだ。
手には黄金色に輝く金属製と思われる杖。
杖の先端には血のような赤い宝玉がついている。
宝玉は中心部に黒い線が入っていて、まるで人間の目玉のように見える。
「オー!コワイコワイですネ。あのままだったら内臓に直接フレイムが注ぎ込まれてオシリス様の元へチョクツウにイッチャウところデシタ!!」
拍子抜けするような口調。
堪能だがどこか日本人からして不自然なイントネーションの日本語をおちょくるような感じで話す若い外国人の魔女がそこにいた。
「あなた、軍事魔導士ね。所属は・・・」
公子は魔女に問いただしたが、話の途中で一瞬だが律子の方に目線を向けてとっさに口を閉じた。
律子は気づいていない。
「あらあら、さすがはテンジョウビトサマ!」
「ごメイトです。ワタシハまたの名を冥府のアンジェリーナ。本名は秘密デース!こう見えてもニッポンのディフェンスに貢献させていただいてオリます。世界を股にかけるミリタリーウィッチですヨ!!!」
「軍隊系の魔女が私たちに何の用かしら?」
「これからとても楽しいパーティが開催サレマス」
「でもユーたちが参加されますとビミョーに困る事態になるとのことで、ここでユーたちをストップさせていただきマス!」
「なぜ私たちを止めるのかしら?」
「ワタシのダイジなオトモダチがこれからトッテモ大事なことシマス。ユーたちはそのステージが整うまでオガサワラサンところへ行ってもらったら困りマース!!」
「トいうわけで、ここでユーたちはしばらくストップしててもらいマース!!」
「サア!!それではオトモダチがワタシにくれたオモチャの性能試験を兼ねてレッツゴォォォォォォォォ!!!!!!」
「はい、ご主人様」
冥府のアンジェリーナを名乗る魔女が2人に向かって右手の人差し指をさした瞬間、淫猥なスタイルの少女は両手に魔法と思われるエネルギーを凝縮しながら、丸出しに近いお尻を自らの主人へと見せつけて公子たちに向かって突進していった!
「律子!!何があっても私のそばから離れちゃだめよ!!!!この者たち、結構厄介だわ!!!!」
公子の叫び声に魔女は楽天的とも不吉、どちらとも解釈できる笑いを浮かべ続けている。
そして、オモチャと呼ばれた淫靡な少女のうなじのあたりには“INDECENT”というスペルが刻印されていた・・・・・・。




