第87話 追跡
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「はあっはあっ!!ったく何なんだよ!?」
先ほどこちらを急襲してきた妙な集団。そのうちの一名が突如自爆したのだ。
間一髪走って逃げきれたものの、喰らっていたら防御魔法を全開にしても相当なダメージを受けていただろう。
おまけに先ほどの爆発により、野次馬がわんさかと現場方面へ歩いていくのが路地の物陰から見える。
走っている最中、俺はあることに気づいた。
新世界の冒険者の服装、いわゆる旅人が着るような服装のままだと今更気づいたのだ。
“まずいな・・・。こんな格好じゃすぐばれるし。夜だから目立たなくていいけど、住民がそこら中からくるといくら何でもマズイ”
おまけに派手な爆発のせいで人が続々と集まってきている。
俺はとりあえず路地の中でもでかい水がめとかが置かれてある目立ちにくい一角に隠れて人が通り過ぎるのを待つことにした。
“替えの服なんか何にも用意してきてないし・・・。仕方ない。幻覚を見せる呪文を応用してみるか”
ダークゴブリンの老人宅で呼んだ魔導書。その中に敵を幻惑させる呪文があった。よくロープレの戦闘場面で唱えることで敵の攻撃がミスしやすくなる、まあありきたりの補助呪文みたいな魔法だ。
俺はこの場でその魔導書を読んだときの解説を一字一句思い出し、それを即席でマイナーチェンジする。
‘魔法は術者の心の中にある認識を物理的な世界にまで現出させることである’
‘魔法使い、魔術師など、いわゆる魔法・呪文を扱う者たちは自らの脳内で空想のイメージを作り上げる思考力・想像力を極限まで鍛えることにより、自らの思考内における空想を現実において他者へ直接影響を及ぼすまでに引き出すことができる。これがいわゆる魔法や呪文と呼ばれているものである’
‘目の前に広がる世界はすべて脳の中での反映である’
‘魔法使い・魔術師と呼ばれる者たちは、目の前に広がる世界とはすべて脳内で処理された認識であるにすぎないという発想から誕生した。ならば、自分たちの思考や思念、想像の中で描いたものも何らかの方法で目の前に現出させられると考えた。丁度、道具を作ってそれを生活に役立てるような感覚で’
‘魔法・呪文の類も、いかに頭でイメージできたことを現実にまで持ってこれるかで習得できるか否かが決まる。イメージを作り上げて目の前の世界へと他者に影響を及ぼすまでに持ってくるにはそれなりの修行が必要である’
‘取得希望者自身の生得的な素質、魔法力をさらに増やす努力の他、この世界には磁場があり(本書は新世界で書かれた※サトシ注)、その力をわが物にできる者にはほぼ魔法・呪文の習得は容易である’
(ガルフ・バード著 “魔法概論1 魔術概念の包括的解説”より。著者は今から3千年くらい前のエルフらしい。氏族までは不明)
魔導書に書かれていた魔法使いの心構えを思い出し、俺はひたすら集中して思念する。
目的はこの幻覚系の呪文で俺の服装をこの現実世界の服装に見えるようにすること。
人間の思考することは何でもできる。その思いこそが一流の魔法使いになる鍵である。
何度も魔導書に書かれた思考集中法を思い出してその場で念じる。
すると自分の体が光に包まれて、くたびれた布製の上着にズボン、マントという旅人風の服装は現実の中学生の私服に変わった。
長袖の上着にジーンズ、スニーカーという出で立ち。それになぜか黒いくたびれた革ジャンを羽織ったスタイルになった。
ファッションなんて無頓着だった俺はこれくらいしかイメージできなかったから仕方ないか。
ともあれこれで自他ともに現実どこにでもいる中学生になれた。
とはいえこんな時間まで歩いてたら中学生でも非行少年と間違われるか・・・・。
“それはそうとさっき襲ってきた奴らはどこだ!?”
“仲間を回収せずに逃げるとかどういうことだ!?”
“そして置き去りにされた奴も自爆しやがって・・・”
俺は路地を走っていくと車道が見えた。
出ると、細い歩道が両端にある車道へ出た。東京によくある難易度の高い細い車道だ。昔少しだけ仲良かった奴の兄が免許取り立ての時、東京の細い道を嫌がっていたと聞いたのを思い出した。
すると、なんと先ほどの男たち5名が歩道にいるのを見つけた。
しかも、こっちの姿に気づくと再び走って逃げだした。
俺はそのあとを追う。
なんでタイミングよく奴らがここにいた?
もっと遠くに逃げられる余裕位あったはずだ。
まるでわざと俺を待っていたかのような感じがしなくもなかった。
とにかく走って奴らを追う。
奴らは銃器を持っていたはずだが、しまったのか持っていない。ボストンバックをわきに担いで走っているからその中にしまったのか?
暗くなってきたことも相成って黒ずくめの服装が不自然なまでに周囲に溶け込んでいる気さえした。
細い歩道を歩いていくと、大きな公園に出た。
あたりは広々としていて薄暗くなっているせいか人もまばらだ。
公園に俺が足を踏み入れてしばらく、奴らはそれを見計らったかのように再びこちらを見た。




