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異世界実録路線 少女は魔の現実に立ち向かう  作者: 幻影摩天楼


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第85話 崩れ行く倫理・黒魔術の悪臭

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現実の世界。一般の家庭。


父親と思われる男がリビングでテレビの討論番組を見ている。

テレビからは聡明そうなキャスターの女性が与党政治家に社会問題を鋭く質問していた。


「大崎さん。それは説明がなっていないように思います」


「ですからそれは!!!ちょっ、ちょっと説明させてください!!!」


「ビジネスのスキルが向上するという言葉をうたい文句に新世界への研修へ行った方の中に人格が変わってしまった、それで過酷な労働環境の場に進んで働くようになって家庭が崩壊したという問題が相次いでいるという指摘についてどう思われますでしょうか?」


「・・・・・・・・」


「新世界が発見されて十年以上になりますが、あの世界には何があるのでしょうか?公表されていない問題点があるのではないでしょうか?」


国営放送NKKでは、看板キャスターの邦屋優子が与党自由友愛党幹事長・大崎敏夫を鋭く問い詰めていた。


貧富の格差によって社会問題が蔓延し、その中でろくに国民救済の政策一つしようとしない与党への反感は国民の間で高まりつつあった。

そんな中、与党政府を鋭く糾弾する数少ないメディア人として彼女の存在価値は高まりつつあった。


ソファーにごろ寝しながらテレビを見る男が独り言をつぶやく。

「このキャスターいいな~。今時ここまで臆することなく物言えるって、大丈夫かなって思うけど」


テレビを前にする男に緊張感はない。

このキャスターを評価はしても、所詮世の中は変わらないとあきらめているような表情を浮かべながらおかきを口にした。



NKK本社。

「邦屋さん。お疲れ様です」


「ありがとうございます。与党の幹事長相手ではなかなかうまく本音を引き出すのは難しいわね」


彼女が放送局の廊下を歩いていた時だった。


彼女は何の前触れもなく突然倒れた。


「邦屋さん?邦屋さん!!大丈夫ですか!?」


「う~!!!!!!!」


「おい!!早く救急車!!!」


その日を境に、彼女は番組を降板に追い込まれた。継続を希望する現場の意見を無視して上層部が一方的に決定したという噂が流れている。



「ノウマク・○○○○○○ ○○○○○○○○○○ ○○○○○○ ○○○○○○○○○○ ○○○○○○○○○○ ○○○○○○ ウンタラタ カンマン!!!!!!!!!」


国会議事堂地下36階。開かずの間。


薄暗い部屋に極彩色の装飾が施された奇妙なコントラストを放つこの部屋は、一目見て立ち入るべき場所ではないことを警告しているように思える。


部屋の中央には密教の須弥壇が置かれ、その中心に置かれた火を燃やす炉は三角形の形をしている。本尊と思しきものは固く封じられて外部からは見えない。炉の中からは激しい炎が立ち込めており、僧侶と思われる一人の男がひたすらに真言を唱えている。。


供え物を置く段には写真が置かれていた。

写真に写っている女性の丁度心臓あたりを小型の刃物のようなものが突き刺されている。


「恩師様。この度も御修法のほど、まことにありがたく存じ上げます」


「顔をあげなさい池永先生。何の問題もございませんよ。怨敵を調伏するのはわたくしの役割なのですから」


総理大臣・池永輝明。自由友愛党第代総裁。そのそばには他にも名だたる衆議院議員が脇に控えている。彼は何か政治的に息詰まると必ずこの祈祷師の元を訪れるのだ。


「そもそも密教とは朝廷に逆らうものを抹殺する目的で当時の国家予算を投じてまで導入されたものです。先生はこの国を支えていかれるお立場故、それに協力させていただくのはごく当たり前のことなのです」


「ありがたきお言葉です!!火山院先生!!」


「ありがたきお言葉!!」


無条件の礼賛を送る声がその場に響く。

そこには与党のみならず、野党の主要関係者、さらには日本の各宗教団体、芸能界、マスコミ関係、言論界のトップ層が一堂に会していた。


燃え盛る須弥壇を背に向けて、一人の男がそこに座っていた。


火山院玄斎。


光明家族総裁にして、政治家との癒着など黒いうわさが絶えない謎の祈祷師。

平安貴族のような出で立ちで烏帽子をかぶったその男はその装束の上から袈裟を着込み、密教の法具である三鈷を持つという異様な出で立ちをしている。本来密教の僧侶が修する祈祷をやや場違いなその姿で行っていた。


年齢は外見上20代の若者。だが、その顔つきに不釣り合いな落ち着き払った雰囲気は権謀術数に長けた公家を思わせる雰囲気を漂わせていた。


日本の名だたる有名政治家がその若者の男に頭を下げていた。


「火山院様にはいつものことながら恐れ入る。我々にチャチャを入れてくるハエどもを落としていただけるのだからな」


「そうですとも先生。靴の中の小石を取り除くのは公然とはムリですからなあ~」


「現実は魑魅魍魎の世。こうして魔道を修するのもお国のために必要なことでございます」


「ありがたき幸せ!!!!!!!!」

その場の一同が一斉に頭を下げる。

日ごろ、大衆が対決関係にあると信じ込まされている与野党やイデオロギーの対立はそこにはない。


魔道の修行を積んだ一宗教団体のトップは、日本の権力を掌握していた。



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