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異世界実録路線 少女は魔の現実に立ち向かう  作者: 幻影摩天楼


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第78話 第一応接間の攻防

律子は何か妙な音がした気がした。バンッというような、何かが破裂したような音。


律子が気づくのと同時に、公子もまた何かを感じ取っていた。


「公子さん、今何か変な音がしたような・・・」


「ええ、これは恐らく非致死性の閃光弾よ!それに少しだけど異質な魔力の反応を感知したわ!」


その直後だった!


ドゴォォォォォォォオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!

バリィィィィッッッッ!!!!!


妙な破裂音に続いて、今度は何かが大爆発を起こしたような地響きを伴う爆発音が館全体にこだました。律子たちがいる応接間の調度品の焼き物が3点ほど衝撃で床に落ちて割れてしまった。天井からつるされている格調高いシャンデリアは地震の時のように大きく揺れている。明らかに爆発物か何かがさく裂したに違いない!!


公子はソファーからすぐに立ち上がると、爆発音のあった方向へ脱兎のように駆けだした!


この騒ぎ、特異な魔力の感じ。間違いない!!


「律子!!この爆発、私たちを襲ったのと同じ奴らよ!!」


「どういうことですか!?」


「向こうは隠しているつもりだろうけど微弱な魔力を感じるの。明らかにホワイトエルフのものじゃない。律子を襲った連中と同じものよ!」


公子は大きな音がした方向へまっすぐ廊下を駆け抜ける。すると廊下では兵士や使用人が数名血を流して倒れていた。先ほどの爆発に巻き込まれたのか、それとも誰かに襲撃されたのか分からない。


「律子!!この先の部屋よ!!」


公子は律子とともに爆発音の震源地と推定される部屋へと向かった。


すると、震源地の部屋へ向かう廊下の先に全身黒ずくめの人間らしきグループが立ちはだかっていた!



激しい光と感覚がマヒする甲高い強烈な音。先ほどの金属の塊のようなものから発せられた閃光と騒音で第一応接間にいたエルード族長とサトシたち計6名は床に倒れこんでしばらく起き上がることができなかった。激しい耳鳴りと写真のフラッシュを浴びたときの何十倍も激しい光の残像がチカチカと視界に残像として残り続け、まともに周囲を確認しにくい。


魔法!?違う!これは恐らく非致死性のグレネードの類だ。


朦朧とする中、6名の耳にきつい口調で叫ぶ女の声が飛び込んできた。


「悪いけどこの娘はもらっていくわ!」


エルード族長は声のする方向へ向かって叫ぶ。目がまだまともに見えていない様子であることがサトシには感じられたが、それでも敵の方向をある程度正確に認識しているように感じられるところは部族の長と言ったところか。

「わしの娘に何をする気じゃ!!この館の防衛線を突破するとは何者じゃ!!!」


「あんたに答えてやる義理はねえんだよ、オイボレ!あたしは小笠原冥様の命によりあんたの小娘を拉致って来いって依頼されただけなのさ!!」


サトシは何か違和感を感じていた。

“この声は女!?俺が知っている奴とは声が違うが、この口調、どこかで聞いたことがある。まさかあいつ!?いや、人違いか?くそ!まだ目がはっきりしねえ・・・”


「離して!!」


エレーヌと呼ばれた少女が必死に抵抗している声と音がする。すると主犯格の横にいた黒ずくめの何者かがエレーヌに対して何かを唱えた。直後、エレーヌは目を閉じて眠ってしまった。


やっとサトシは目が慣れてきた。見たところ敵は6~7名くらい、他にももっといるかもしれない。見る限り全員特殊部隊みたいに全身黒ずくめのスタイルに覆面をしていて顔はわからない。


「ギャーギャー騒ぐんじゃねえよ小娘!手間かけさせやがって!」


サトシが叫ぶ。

「待ちやがれ!いきなり乱入してきてお前何もんだ!」


サトシの叫びに主犯格とおぼしき覆面の女が一瞬歯ぎしりをした気がした。だが、返事をしない。


「まて!我らの城に不法侵入するとは何奴!?わしのメガフレイムで焼却されたくなくばエレーヌ様を返せ!!」


老エルフのマシル・ハクスはそう警告しながら、彼が持っていた銀の杖の先端に何かを念じ始めると、杖先端の赤い宝玉を中心に炎の渦が巻きはじめ、それが赤い宝玉の上で集束して巨大な火球が出現した。


ダークゴブリンの老人ことゼル・ファランクスもようやく目が慣れてきたのかその光景を見てうつぶせになりながら叫ぶ。

「あれはメガフレイム!火炎系攻撃魔法の最高位のうちの一つ。魔力を調整することで単体複数いずれにも対応するやつじゃ!命中すれば最後、相手を消滅させるまで消えることはない!」


だが、マシル・ハクスの警告にも黒ずくめの集団は全くひるまない。


「おっとおっさん!状況をよく見ろよ!小娘は我々の手の内にあんだよ!少しでも下手なまねしてみな!このきれいな娘の顔を切り刻むわよ!」


主犯格らしき女が太もも付近に身につけていたカイデックス製シースからガーバーマーク2サヴァイヴァルナイフを抜いてエレーヌの顔に近づけた。サトシにはそのナイフを知っていた。ゼル・ファランクスのところで同じものがあったからだ。アメリカの有名ナイフメーカー・ガーバー社がベトナム戦争の時代に発売したダガーナイフで、ある米陸軍大佐が古代ローマの短剣をモチーフにデザインしたとされている。ベトナム戦争の時に米軍特殊部隊や精鋭部隊に大変人気があったという古典的なスマートさのある細身のダガーナイフで、完全に近接格闘戦を想定した戦闘ナイフだ。某ハードボイルド小説の主人公が頻繁に愛用したことでも知られている。


エレーヌを人質に取られてはさすがのエルード族長もマシル・ハクスも、そしてなんとか立ち上がってレイピアを敵に向けて構えているファーゴも手が出せない。ロズブーンは気絶しているようだ。


「さて、それじゃさっさとずらかるとしようかしら。おい!館内の別班をここに集合させ・・・」


バラクラバで顔を隠した女は部下とともにその場から逃亡しようとした。だが。


ドンッ!!!バキッ!!!ズガサアアァァァァァァァァァァ!!!!!


派手な音とともに第一応接間横の壁が破壊され、黒ずくめの集団の仲間と思しき者2名が応接間の中に壁を突き破って飛び込んできた。その勢いのまま地面に着くと主犯格の女の手前まで勢いよく転がって力なく倒れこむ。誰の目から見ても2名は完全に戦闘不能に陥っているのは明らかだった。


ドンッ!!!ドゴォッ!!!!バタッ!!!


さらにもう1人が壁に空いた穴から勢いよくまた吹き飛ばされてきて、今度はそのまま窓際の壁に打ち付けられた。さらにもう一人も同じように・・・。


“これは・・!!風属性の魔法!?それも一点に魔力を集束させて破壊力を増した・・・!一体何者!?”


「ここに来るなり派手な爆発音と怒鳴り声が聞こえるかと思ったら、ずいぶんやってくれるわね!!」


女は声の主の方角を見た。その先には美しいロングヘアでブレザー姿の女子高生が一人。その姿を見て自信に満ちていた女の目つきは明らかに動揺の目に変わった。


“まっ、まさか殿上人の葦國公子!!!なんであの方がここに!?”


「公子さん!!いったいこれは!?」


後ろからついてきたセーラー服姿の少女を見て、女はさらに狼狽する。


“なんだと!?あれは間違いなく上総律子!!なんであの小娘がこんなところにいる!?さてはあいつらしくじったな!!!?”


女の部下らしき者が何か言っている。

「おい!別班!応答しろ!?クソ!リーダー!!別班からの応答なし!」


「馬鹿が!!できるだけ静かに警備を始末しろって命じたのに!派手な攻撃魔法使いやがって!!」


「おそらくこのホワイトエルフの城の警備の魔法使いが想像以上に手練れであったからと思われます」


黒ずくめ集団の会話をよそに公子が叫ぶ。

「魔力を最小限にして探知されないようにして忍び込む。アサシン系の組織が使う手口ね。変身魔法を用いて声まで変えているみたいだけど、私の目はごまかせないわよ!!」


公子は黒ずくめの集団に向かって唱えた。

「万物の起源に宿りし本質よ、偽りの仮面を剥いでその真実を現せ!!」


直後、青白い光が公子の手のひらから放射されると、黒ずくめの集団を覆った。すると、人間の特殊部隊風の服装をしていた黒ずくめの集団の正体が暴かれた。デーモン系2体、細長いオーク系1体、ゴブリン系1体、ミノタウロス系2体、そして最後にサトシにとって身に覚えのある女の姿。


その姿を見た瞬間、サトシは怒気のこもった叫び声をあげた。

「まさかてめえ!!クソ女神ミーシャか!!」


正体を現したモンスター一味は明らかに動揺していた。


「ゲエッ!!マジかよ!!」


「我々の変身魔法はそこいらの解除魔法では解けんはず!!なんだよあの小娘!?」


「おい!!あれってまさか殿上人の葦國公子じゃ・・・」


「ガチでやばいんすけど!!あんなバケモンと交戦する依頼じゃなかったはずだぞおい!!」


「ここは逃げた方が現実的な気がするガンス・・・」


サトシもまた、モンスター達と同様に突如現れた女子高生に驚愕していた。

“この女できる!!なんなんだ!?普通の女子高生っぽいのになんて桁外れな魔力なんだ!!一体こいつ何者!?それに、もう一人女子がいる?どうなってやがる!?”


モンスターの一味はサトシが見た感じかなり戦闘に長けた連中っぽかった。だが、突然現れた謎の女子高生から感じられる常識を超える魔力と戦闘力の高さに体が明らかに震えていた。


モンスターの内1名があの女子高生を殿上人と言っていた。サトシは直感で99パーセントの確率でそうだと確信した。殿上人ならあの魔力も戦闘力も合点がいく。

“葦國公子?もしかしてあの有名な財団の?まあ今はそんなことどうでもいい!だがどうする!?殿上人を正面から叩くのは今はまだ無理だ。でもどういうわけか知らねえけど向こうもあのモンスターとクソ女神を敵視してるみたいだし、とりあえずここはクソ女神への復讐に体よく利用させてもらうぜ!!”


サトシはそう思うと、腰に帯びていたコールドスチール・タイパン・サヴァイヴァルナイフを抜いた。その切っ先を宿敵ミーシャに向かって突き付ける。


「誰かさんかは知れねえが感謝するぜ女子高生さんよ!!俺の復讐相手の一人をあぶりだしてくれたからな!!」


公子と律子はサトシ達の方を見てまだ彼らが何者なのか分からなかった。


公子は心の中で状況を瞬時に分析する。

“この中学生くらいの子。さっきから感じていた人間の気配はこいつね。もしや新世界の研究所から逃走したとかいう冥のところの”勇者“ってこの子!?でもまずはあのテロリスト集団を片付けるのが先ね。正体は後で聞き出そう!”


7名の不法侵入者たちと、エルード族長たち3名、サトシたち3名(うち1名気絶中)、そして、公子と律子の2名が机や調度品がひっくり返った応接間で互いにナイフや剣、拳銃、魔法を出す構えを取りながら対峙していた。


魔法を中心とする新世界、近代的な技術を武器とする現実世界。その垣根を超える戦いがここから始まろうとしていた。




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