第76話 律子と公子、ホワイトエルフの館にて
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レナードとサラは律子と公子を馬に乗せて自分たちはその馬を引く形でホワイトエルフ族の城の裏門前まで来た。
「私だ!通せ!」
「これはレナード様にサラ様!了解しました!」
レナードが衛兵に一声かけると、衛兵は速やかに門を開けた。重厚な門の開く音が響き渡る。
「すごい・・・。改めて見るとホワイトエルフの方のお城ってかなり広い・・・」
以前エレーヌさんと来た時も大きな町だと漠然と思っていたけれど、門から改めて入るこの町は以前よりも大きく感じる。そう思うくらい立派な城壁に律子は改めて驚いた。前回は極度の緊張が長引いたせいで漠然と感覚的にとらえていたことが改めて見るとその大きさに意識を改めさせられた形だ。
「ここから10分ほどで館に着きます。しばしご辛抱を」
サラの声に公子が答える。
「ええ、ご丁寧に馬にまで乗せていただいてありがとうございます」
「ありがとうございます、サラさん」
律子も続いてさらにお礼を言った。
律子は思った。前は空からきてすぐに館まで来たけれど、この城壁の中は広大な町が広がっていて、レンガや石で作られた立派な建物が軒を連ねている。人通りも多く、一般のホワイトエルフたちもきらびやかな服装をしている者たちが多く、平均してかなり豊かな部族であるという印象を受ける。
律子にとって馬に乗るのは実はこれが2回目である。小学校の頃、家族で近郊の乗馬クラブで体験乗馬して以来のことだ。久しぶりの乗馬にやや戸惑ったがレナードが下で馬を従えながら歩いてくれるので一度乗ってしまうと後はほとんど緊張しなかった。
振り返って後ろを見るとサラが従える馬に乗った公子が律子の後をゆっくりとついてくる。その姿は優雅そのものだった。下でサラが引いているとはいえ、公子自身が人馬一体になっていると表現できるくらい馬を乗りこなしているように見えた。馬が歩くたびに彼女の長い黒髪が風にたなびく。これがとても様になるのだ。彼女の身分上、乗馬も教養として習っていることが素人目にもうかがえた気がした。
そうこうしているうちに館の前に着いた。律子にとってこれが2回目のその館は美しい外見からすぐにそれと分かった。
「お待たせいたしました。それでは応接間にご案内いたしますのでどうぞこちらへ」
律子と公子は馬から降りると、レナードとサラの後について館の中へと入っていった。改めて思うがスペインのイスラム建築を思わせるこの館は外見も内部の装飾や丁度も大変美しい。幾何学的に複雑な模様と青と白を基調とした色彩感覚が見る者に心なしか安らぎを与えてくれる気がした。
!?
公子の表情が一瞬険しくなった。周囲には気づかれていない。
“人間の気配がする・・・。殿上人ではない、一般の人間?こんなところに人間はいないはず・・?”
「第一応接間は現在使用中のため、こちらの第二応接間でしばらくの間お待ちくださいませ。じきにエレーヌ様がお見えになります」
律子と公子はレナードに案内された応接間に入り、なりゆきでエレーヌを待つことになった。前回律子が案内された応接間とは装いがやや異なるも、こちらも上品で落ち着いた趣のある部屋でとても良い。
3分ほどで使用人と思しき格好をしたエルフがティーカップとティーポットを持ってきてくれた。その方は手慣れた手つきでカップにポットから紅茶を注いでいく。上品で控えめな紅茶の香りが博物館のような部屋の調度品と合わさってアロマのように律子の気分を癒していく。
「それではごゆっくりおくつろぎくださいませ」
使用人と思しきエルフは律子と公子に向かって一礼すると、丁寧に扉を開け閉めして退室した。ソファー前のテーブルに置かれたティーカップの紅茶が、律子と公子の顔を透明な茜色の中に天井の幾何学的な彫刻とともに映し出している。
「すごくいい感じですよね公子さ・・」
律子は公子の方を見ながらそう言いかけたが、途中で口にするのを止めた。先ほどから時折、公子が何か考え事をしている気がするのだ。
“この感じは・・・、やはり現実世界の一般の人間の気配!?なぜそれがエルフの町にいるの?”
公子さんは徐々に険しい表情になっていった。何か気まずいことでもあったのだろうか?
「公子さん、どうしたんですか?何か体調が悪いとか?」
「ううん、気にしないで。ちょっと考えごとをしていただけよ」
律子が心配になって公子に声をかけたその直後だった!
ドゴォォォォ!!!!バリィィィン!!!
館の上品な静寂を突き破る轟音とともに、物が派手に壊れる音が律子と公子の耳に飛び込んできた!!




