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異世界実録路線 少女は魔の現実に立ち向かう  作者: 幻影摩天楼


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第75話 サトシ一行、ホワイトエルフ族本拠地に到着する

1時間後、サトシたちのいる会議室の中に転移魔法の入り口が開き、そのなかから先ほど通信魔法で対面していたエルフの青年が現れた。身長は170センチほど、耳はエルフ特有のひときわ長い特徴的な形をしていて、精悍な顔つきの好青年といった感じである。


「改めまして。わたくし、ホワイトエルフ族の物質精製術士を務めておりますファーゴ・エスプリオスと申します」


到着するなり、ファーゴはサトシたちにまず挨拶をした。通信魔法で見たときと同じように腰の低い礼儀作法をわきまえた人物で、現実世界でも一流大企業で通用しそうなくらい清潔感がある。服装はファンタジー作品によくある布製の上下だが見たところパリッとした布の感じからかなり高級な生地でできた服装で、その上から魔法使いが着るようなマントを羽織っている。マントの内側は上品な朱色で、彼が動くたびマントの内側の朱色が見えてお洒落な印象を受ける。左腰にはレイピアと推測される細身の剣を帯びている。


「思ったより早く来たなファーゴとやら。わしとこのオークのロズブーンも小僧と同行するがいいのかな?」


ダークゴブリンの老人が質問する。


「もちろんです。私の上司が許可しているので問題ありません」


と、ファーゴは丁寧な口調で返答した。


「それではこの転移魔法を潜ってください。この先にわがホワイトエルフ族の館がございます」


「小僧、何度も言うが引き締めていくぞ」


「おう」


「おれも覚悟していくぜ」


3人がお互いの意志を確認後、ロゴスが言う。


「それじゃ気をつけていきな。ロズブーン、紹介料は今度の取引の時にコルタンの代金から引いておくぞ」


「ああわかった。だがあまりぼったくるなよ、こっちも厳しいんだから」


ロズブーンが言うとロゴスは苦笑いしていた。


3人はファーゴの案内に従い、転移魔法の中を潜って行った。



転移魔法を潜るとそこは見知らぬ館の正門の前だった。何百キロ離れたところに来たかはわからない。


周囲は何もない新世界の平原地帯のようだが、この館の立っている場所は見たところ丘陵地帯で、館の周囲は石でできた城壁と物見用の堅固な塔が建ち、そこで兵士が常時四方を監視している。周囲を軽く見渡してみると、大きな川が2本流れているのが見えた。転じて正門周りを順に見ていくと正門両側は高い城壁が両サイドに続いていて館というより砦や城に近い。


ファーゴが正門両脇上部にある監視小屋に合図を送ると、正門が重厚な音をたてて開いた。

サトシたち3人はファーゴの後についていく。サトシは中に入るなり驚愕した。正門を開けた先に広がっていたのは予想をはるかに上回るレンガ造りの立派な建築が広がっていたのだ。どうも、一つの町を城壁ですっぽりと囲っているようだ。


しかし、見たところすべてが石造りの城壁ではない。所々小高い丘と崖になっているところには石の城壁を設けずにそれ自体を天然の城壁として利用するなど、地形の利を合理的に生かしている感がある。そのため周囲を高い石造りの城壁で囲むヨーロッパ式の城塞の趣もあるが、部分的には天然の要害を有効利用した日本の城塞建築に近い部分も感じられる。


「ぱっと見たところ相当大きな城だな。いや、町そのものを城にしていると言った方が正確かな。天然と人口それぞれの城壁を組み合わせて町をすっぽり覆うなんてまるで小田原城の総構(そうがまえ)みたいだ」


「わしもこれほどまでに立派な城と町が融合した場所は初めて見た・・・。前回、ホワイトエルフの連中と会った時は前線の陣中でのやり取りじゃったから奴らの本拠地には行ったことがなかった。情報では大規模な城郭を作る傾向があるとは聞いておったが、超人族共の情報収集に精一杯になってホワイトエルフのことまでは気が向いていなかった。奴らここまで立派な要塞を築いておったとは・・・」


立派な街並みをすっぽりと覆う城塞の見事さにダークゴブリンの老人も息を呑んだ。


しばらく歩くと中央に噴水がある広場があり、そこに4頭立ての立派な馬車が待機していた。


「ここからは族長様の館まで距離がありますので、この馬車にお乗りください」


3人は馬車に乗り込み席に腰かけた。すぐに馬車が動き出す。


馬車の中から街並みを見て、サトシはあることに気が付いた。

町の住民はみな豊かで華やかな服装をしていると同時に全員なにがしかの武器を持ち、所々では軍事教練と思しき光景が見られた。槍を構えて分列行進をする者たち。槍で案山子のような的を掛け声とともに突き刺す者たち。横隊に並んで攻撃魔法を的に向かって発射する者たち。一瞬内心をヒヤッとさせる耳をつんざく教官と思しき者の怒鳴り声など。


馬車の車窓から一瞬見えただけだが、いずれも整然と区画整理された町の一定距離ごとにある広場や運動場で老若男女すべてが戦闘訓練と思しき教練に励んでいた。


「ファーゴさん、ホワイトエルフ族って結構軍隊的な教練を重要視しているのか?」


サトシの質問に横に座っているファーゴの口が開く。


「ええ、超人族との戦い以来、他種族ともいさかいが絶えませんから常に氏族全体の戦闘能力を鍛錬しております」


「あれはなんだ?」


サトシが指さした方向には地下へ続く入り口のようなものがあった。重そうな鉄製っぽい観音開きの扉が片側半開きになっており、武装した兵士が話をしながら中に行ったり来たりしている。


「あれは食料の貯蔵庫です。保存食を保管してあるんですよ」


ファーゴは淡々とした口調で言うだけでそれ以上は何も言おうとはしなかった。それがサトシにはやや違和感が感じられた。


ダークゴブリンの老人は外の光景を黙って見続けている。ロズブーンはメモを懐から取り出して何やら書いていた。


約15分ほどで馬車はひときわ大きな館の前に着いた。スペイン南部のイスラム建築を彷彿とさせる見事な宮殿ともいうべき建物は、この城の主が住む居館であることをわかりやすく示していた。


館の前の詰所から1人の兵士が出てきて、馬車の扉を開けるとファーゴとサトシら4名が下りる。


「それではこちらです。」


ファーゴの案内で3名は館の中へと入っていく。彼らはひときわ立派な応接間へと案内された。部屋の天井は高く開放感があり、それでいてきらびやかな細工が施された支柱や、見るからに高価な調度品の数々。サトシたちは自分たちが博物館ではないか?と錯覚しかけるほど美的感覚に優れた部屋に息を呑んだ。


「すぐに族長様がお越しになられるのでしばらくおかけになってお待ちくださいませ」


3名は部屋のソファーに腰かける。現実世界でもめったにないようなやわらかな座り心地に、これは社長室などに置いてありそうなものだとサトシは感じた。


そして3分後、応接間の扉が開いて族長と側近と思しき老エルフ、ファーゴの3名が入ってきた。


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