↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界実録路線 少女は魔の現実に立ち向かう  作者: 幻影摩天楼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/104

第56話 復讐の前段階 魔法を使用したプロパガンダ工作 大衆に向けて感情的に

「おぬし、本当に超人族共に戦いを挑むのか?奴らは一筋縄でいく奴らではないぞ」


「ああ、分かっている。だから俺は当面自分を鍛えることと、今できる戦いを地道にしていくことにした。おっさんの遺産を存分に活用させてもらうぜ」


「訓練は厳しいぞ!覚悟しておけ!」


ダークゴブリンの老人に現実世界と新世界の事実を知る機会を与えられて1か月、俺は自分でも信じられないくらいの速度で知識を吸収していた。


ダークゴブリンの老人が言うには、俺が選別石とかいうあの変な石の磁場に耐えられた最大の理由は、俺の心の中に潜む復讐心が強かったからだとのことだ。通常、あの石の磁場の影響下で完全に自我を維持できる人間は殿上人とかいう現実の支配者階級と、ごく一部の人間しかいないらしい。一般人が殿上人と同じことができる確率は極めて低く、狙ってできるような芸当ではないらしい。そんな宝くじを当てるようなことを俺はやってのけた。今まで不幸続きで貯めていた幸運を土壇場で使ったかのような気分だ。偶然の産物として自我と能力の両立ができた。ありえねえ。自分でもありえねえとしか言いようがない!今まで心の奥に押し殺していた鬱憤を極限下で無意識に開放しただけでそうなっただけだってのに!


そして、俺が獲得した超越的な力、ロープレ風にいうところのスキルは“学習能力”。それもただの勉強と知識習得のみならず、格闘などの身体能力に関するスキルを超速の速さで習得できるということらしい。


確かに、今までの俺の頭ではまず理解できていなかったであろう書物や記録の山を自分でも信じられないくらい瞬時に理解してしかも身に付いていることが実感できる。おかげでこの世界の魔法の知識とか身体能力・闘気などを生かした特技技もかなりの水準で理解してきている。


俺なりに今の人間社会の構図を整理してみたら大体次のような構図にまとめることができた。



・自我を維持し、かつ超越的な力を手にした人間

=超人族・殿上人。


・自我を一部のみ維持し、一部の超越的能力または人間としての機能向上ができた人間

=現実世界における表面上エリート層に入る人間(実態は殿上人の高級奴隷)。


・自我を全く維持できず、超越的能力または機能向上等が全くできなかった人間

=現実世界の大半の人間(ブラック企業などで一切文句を言わずに働く奴隷労働層。権利を主張するなどの人間としての自己主張する意識自体がない奴隷ロボットのような存在。新世界で磁場を浴びる研修を受けた者の大半はこのカテゴリーに入る。主に現実世界における貧困層や、政府の方針により生産性なき存在とされたニートなどの層が多い。政府の真の狙いは新世界の磁場を利用して現実の人間の大半をこの部類の人間にすること)。


・新世界に行ったことが現時点で一度もなく、磁場の影響を今のところ受けていない層

=現実世界の大衆のまだ多くはこの層に入る。この層を構成するのは、絶滅寸前の中間層、大半の貧困層、不適格者の層である。中でもなぜか殿上人層は中間層を目の敵にする傾向あり。


・殿上人ではないにもかかわらず自我を維持し、かつ超越的な力を手にした人間

=ほとんど存在しないが、極めてまれに出現するらしい。但し、このカテゴリーに入る人間は出現が確認されるや否や即時殿上人が甘言を弄して高級奴隷として取り込まれて無力化されるため、殿上人の権力基盤を破壊するだけの勢力の形成を一度たりともできたためしがない。



さて、俺は現実世界を支配する殿上人と呼ばれる超人族の連中に復讐戦争を挑もうと決心した。歴史的経緯を見ていくと、奴らが俺のような人間を虫けらのように選別して陥れた張本人であることは明らかだ。よく問題になるが一向に減ることのないいじめ問題も、その正体は気に食わない人間を精神的に追い詰めて人生を破壊するために支配者層によって計画されているとのことだ。いわば我々現実世界の人間は生まれたときから殿上人どもによってある種の選別にかけられているのだ。戦うことに何の迷いもない。


だが相手は強大な勢力を持ち、現実、新世界両方に盤石の地盤を持つ殿上人だ。


対して俺の方の戦力は事実上俺一人、ダークゴブリンのおっさんは参謀役みたいな形で知恵を授けてはくれるがそれ以外は今のところいない。モンスターやエルフで超人族に不満のあるやつらを糾合するという案も考えはするものの、多くの部族・氏族に分かれていてお互い利害関係がバラバラのそいつらを団結させるのは容易ではないし、超人族共が分断工作をした関係で親超人族派も多数いると聞いている。


正面から戦うなんてとても無理なことは火を見るより明らか。いくら俺が特殊能力を獲得したといってもまだ完全に使いこなせるまでに至っていないし、習得すべき知識や能力はまだまだ山ほどある。


そこで俺は自分の能力向上のためしばらくは鍛錬に励みつつ、まず取得した複数の人間に同時に映像を見せることのできる魔法をアレンジして使ってみることにした。ゴブリンのおっさんが収集していた魔導書の中にあった“共感幻覚”と呼ばれるこの魔法は、元々遠く離れた仲間と同時に交信をしたり、またはトラウマなどの精神疾患を負ってしまった者を治療するための魔法らしい。まるで現実世界のネット通信のように大勢の仲間と遠距離から同時に会話ができるテレビ電話みたいな機能を持つ魔法で、最大数万単位で同時に映像を各自の脳内に出現させて会話をすることができる。また、こちら側が頭の中でイメージした映像を相手の脳内で直接映像という形で見せることも可能だ。


俺はこの魔法が現実世界の人々の不満を権力へ向ける宣伝工作に使えると判断し、まずはこの魔法を習得した。


次にこの魔法をカスタマイズし、現実世界で不満を持つ人間を自動で探り当てることのできる魔法を併用してインターネット経由で現実世界に広まるようにしておいたのだ。


現実に不満を持つ人々は俺が作り上げたサイトに誘導されるようにし、この魔法がプログラムされたサイトを見た人々に各自の人生で味わってきた屈辱的な記憶をまず映像という形で再生する。そして、権力への不満が必然的に増幅するような映像と言葉がそれぞれの記憶をもとに再生されるようにし、時間をかけて大衆に向けて感情的に訴えかけていくことにしたのだ。少なくとも俺が現実世界で殿上人と戦う際の基盤となる大衆の支持をまず構築しておこうと考えたのだ。



現実世界はどうなっているのか?魔法でインターネットを見ることができるのでかなりリアルタイムで向こうの様子はわかるが、人間の生の情報はさすがに入ってこない。それが歯がゆいと言えば歯がゆい。


現実世界で心残りがあるとすれば、引きこもりだった俺に唯一優しくしてくれた近所のおばさんのことだ。あの人は今どうしているだろうか・・・・・・。俺が失踪したとかで両親は無関心でもあのおばさんは俺のことを心配してくれているはずだ。現実世界に潜入する機会があったら一度はあいさつに行かないとな。



トレーニングは準備体操で体の柔軟を徹底的にやることから始め、腕立て伏せ各種、プランクによる腹筋、スクワット、走り込み、開脚など一通りの鍛錬を行い、それから魔法技、闘気系のエネルギーを発射する訓練、徒手格闘技、武器を使った訓練をダークゴブリンのおっさんの下でこなす。おっさんは超人族と戦った軍歴があるせいか、マジで軍隊の教練そのもののメニューをこなすことになった。


皮肉だが、あの糞女神の下での冒険や、死に物狂いでこの町まで逃げてきたことが俺の身体能力と精神力を自分の想像以上に向上させていた。おっさん曰く、一見関係ないように見える魔法なども、実は相当な精神力を消耗するため本当は肉体の基礎鍛錬をみっちりしておかないと一流の魔法使いにはなれないらしい。


生きるか死ぬか、殺すか殺されるか。おまけに現実の政府自体が俺を弾圧した上に、本物の銃で撃たれる経験まで強制的にさせられてここまで来た。そして生きた心地のない中で今こうして何のめぐりあわせか生き延びている。そんな今の俺には日々のトレーニングもハッタリなしにつらさは感じない。むしろ今まで押しつけられてきた自分らしさの開放、己が強靭になっていくという今までにない満足感を与えてくれる毎日はかつて味わったことのない充実感を感じていた。


戦って生き延びれた!


かつてない強者になって復讐できる歓び!


自己が強くなっていく喜び!


そこにかつてのニートとしてみじめな生活を強いられていた俺の姿はなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。