第51話 奇妙なインターネットサイトの噂
サトシが新世界で政府組織の監視下から逃れて行方をくらまして数週間後、現実世界では奇妙な現象が都市伝説として語られ始めていた。
失業者、大手企業でもパワハラに苦しむ会社員、ブラック企業に搾取される人、非正規雇用者、カルト宗教とのトラブルを抱える人またはその2世・3世、表面上従順でもひそかに政府に不満を持つ者、政府の謀略で不当な扱いを受けたにもかかわらず何の救済もなく泣き寝入りさせられた人、公害の被害者、暴力団に家族を殺害された人、数々の災害などで多大な損害を受けたにもかかわらず2035年現在に至るまで政府からの救済がほとんどかまったく受けられていない人など。
職種を問わず、それら様々な理由で現実に対して不満を感じている人のもとにある日突然、差出人不明の封筒またはメールが届くというのだ。
その中にはあるインターネットサイトのURLとその中のコミュニティサイトへ入るためのパスワードが記載された紙が1枚のみ入っているという。メールの場合も同様のURLとパスワードが記載されている。
そのサイトにアクセスしてコミュニティサイトへ入るログイン画面でパスワードを入力すると、アクセスした人はPCの画面に吸い込まれ、ローブを全身にまとう謎の老人の目の前に引き出されるというのだ。
その老人は真実を語る者とのみ名乗り、そこに来た人に2つの選択肢を与えるという。
“君が理不尽な目に遭わされている本当の理由を知るか、それともこのまま黙って帰るか”
後者の人はそのまま自分の部屋に一瞬で戻るという。
それに対し、前者を選んだ人はそれを選んだ瞬間、これまで各人が経験してきた職場やカルト宗教などでの理不尽な出来事がまるでDVDなどの録画を再生しているかのように目の前で再生される。
そしてその光景を見終わると、今度は各人を虐げている者たちがどのような組織に所属し、どのような方針でそのような虐待などを行っているのかが歴史的背景などとともに音声の解説付きで目の前に展開されてゆく。どの人の映像でも共通するのは、各人を理不尽な目に遭わせている犯人は権力、カルト・宗教、人権を重んずると称する者たちであること。そしてそれらは裏で三位一体で共謀しているという事実が証拠付で示されるという点である。
まるで1本のドキュメンタリー映画のように自分を弾圧している奴らの背後関係が目の前に映像の形で示され、各人はそれを見て唖然とするという。
そして同時に、一瞬でそれを見る人に世の中の構図を理解するための知識、歴史的経緯が頭に入ってくるというのだ。これにより、映像中で解説される難解な歴史的経緯、組織の歴史、政治権力の本質などがそれらの勉強をしたことのない人々にもすぐに分かるようになるというのである。どのような理屈でそうなっているのかはわからないが、体験者と称する者のネット上での証言によるとVRをよりリアルにしたような感覚があったが何か違う感じもあったという。
さらに続いて、各人がそのような目に遭わされていなかった場合の別の未来が示された映像が示される。そこでは自分らしく生きれる自己実現の未来があったこと、幸せな家庭があったこと、ごく平穏な日常生活があった映像がリアリティを持って流れる。
そして最後はこう締めくくられる。
“あなたはこれだけのお金を政府やそれとつるむカルト、ブラック企業、エセリベラル、暴力団、宗教団体などによって搾取されている”
その言葉と同時に、それらの搾取がなかった場合にその人が本来手にするはずだったお金が山積みになった1万円札の形で表される。山積みになった1万円札は、税金による搾取や、それらがカルト団体によって税金が不正流用されていることなどを示す解説も同時にその人の視界にゲームの表示のように示される。
そして気が付くと、アクセスした人は自分の部屋に戻っているというのである。
この奇妙なサイトのうわさがネット上の各サイトで広まり始めると、なぜかすぐにそれらのサイトは閉鎖されると同時に、それらがフェイクニュース系の陰謀論であると解説されたサイトが乱立しはじめた。そしてその奇妙なサイトもすぐに消滅し、それは都市伝説という形で現在大衆の間では評価されている。
だが、そのサイトは形を変えて別のサイトとして次々と復活と消滅を今も繰り返しているといわれている。
そして、実際にそのリアリティがありすぎる映像を見た人の中には、確実に自分を虐げたカルトなどへの憎悪と反感が少しずつ確実に燃え上がり始めていた・・・・・。




