第50話 公子は律子を外出に誘う
翌日も、さらにその次の日も、公子さんは私の通学路で待ち構えていた。
何かをしてくるかというと、何もしてこない。ただ他愛のないごく普通の学生としての会話をしてくるだけだ。最近何を好んでいるの?勉強の具合はどう?友達とはどうして遊んでいるの?こんな感じでこの人は次々と質問しながら朝学校に着く手前までついてくるのだ。
「律子、浮かない顔をしているわね?ちゃんと寝れている?何か悩みでもあるの?」
悩みの種はあなたですよ!公子さん!
私は表で言えない本音を心の中で叫ぶ。誰にも聞こえないがそう言うしかない。何せこの人は私が新世界に行ったことを詳細に知っているみたいだし、もしそれを周囲にばらされたら大変なことになる・・・・・。
でもこの人はそれをネタに私を脅してくる気配は全くない。それどころか私が自分から公子さんの部下になりたいと言わせて見せる、などど言うのだ。
そのせいなのか、この人はとてもいい人という感じで毎日接してくる。ただ、不安なのは私がこの人と一緒にいるところをいぶかしげに見られたりしないか心配だった。でもそれは杞憂だった。紗月ちゃんが現れる直前にいつもタイミングよくこの人はお別れの挨拶を言って去っていくし、通学路にいる警備のボランティアの人もこちらを全く気にしている様子がない。まるで公子さんのことが見えていないような、それとも目に見えていても気に留めていないかのような感じなのだ。公子さんは相当な名門校の制服で、本来なら目立つはずなのに・・・・・。
「私がこのあたりの人に気づかれていない気がする。友達の紗月という子と会う直前に私が都合よく去っていくのはなぜ?って思ってる?」
「どうしてあなたは私の心を透視するようなことができるんですか?」
「それくらい常識よ。私たちの世界はそれが前提でさらに色んな駆け引きをするのよ」
「そうだ律子。今度の土曜に時間はある?」
突然の申し出に律子は戸惑った。
「あることはありますけど・・・。何か・・・?」
「私と2人で出かけない?今度は久しぶりに時間がある日なの?」
「一応今週の土曜は私も何も予定がない日ですが・・・・・・。でもどうして私を誘うんですか?あなたほどの人なら他にも多くの友人がおられるのでは?私はあなたが足を運ばれるような仰々しい場所には行ったことがありませんし、あなたのような方と付き合えるような物をそろえる準備はありませんよ」
「いいの。私はあなたが普段行くようなところに一緒に行ってみたい。あなたと2人で」
公子の何気ない返答に律子は少しドキッとした。
「あなたのことをもっと知りたい。構えた態度からはわからない素直な心を見てみたい」
「あなたは私が新世界で身に付けた力があなたたちにとって脅威だと言っていました。それが目的なのですか?」
「両方よ。あなたの力も、頑なな心を持つあなた自身も」
律子は考えた。まあ、悪い人ではなさそうだから一緒に行くくらいならいいけれども・・・・・。まさかこの人は私を口説いているんじゃ・・・・・?えっ!私にそういうのは・・・・・!?
律子は何か微妙に顔を赤くしてしまった。
「そういうことで決まりね。また私から連絡するわ。そうそう、あなたのメルア・・・・・。あっそういえば聞かなくてもいいわね」
なんやかんやで律子は今度の土曜朝、公子と2人で出かける約束を強制的にさせられた。
その日の夜に私のスマホに公子さんから連絡がきた。公子さんにメルアドは教えていないはずなのに・・・・・。
律子の不安は尽きない。




