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異世界実録路線 少女は魔の現実に立ち向かう  作者: 幻影摩天楼


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第45話 ダークゴブリンの軍医

「わしはかつてダークゴブリン族の軍に属する軍医じゃった」


「軍医?軍医って確か軍隊に属する医者のことだろ?ゴブリンの中に軍隊ってあるのか?」


サトシの問いかけに老ゴブリンは顔を曇らせた。


「あった。かつてはな・・・。もう今はない・・・・」


「おぬしらにとってゴブリンとはずる賢い邪悪な種族と思われておる。だが、わしらダークゴブリン族は違う。わしらはこの世界で最も早く自分たちの国を作り、皆で共同して政治を行い、種族の繁栄と安寧のために国造りに努めてきたのじゃ。早い段階から新世界の磁場に適応したわしらは高い魔力と知恵を持つことに成功した」


「だが今から数千年前、わしらより遅くにこの世界に誕生した超人族どもが急激な進化ののちにこの世界の磁場をわがものとして強大な力と自我を手にして台頭してきた」


「超人族共はやがてわしらモンスターやエルフを凌駕する勢力を持ち始め我々を侵略し始めた。わしらは千数百年にもわたる死闘の末、両者ともこれ以上の犠牲は払えぬと講和を結び、相互不可侵の条約を結んだ。だが、わしらはいつか超人族共に再戦を挑むべく、超人族どもに関する情報と資料を集め続けた。やがて超人族共が地球という別の世界へ大挙移住すると、わしらは地球にも人間に化けてスパイとして侵入した。お前さんの世界で妖怪とか妖精と呼ばれて伝承されておるのは、地球にスパイとして侵入したわしらの同胞のことじゃよ。大方超人族共がこの世界のことが一般の人間どもにバレぬように空想の化け物としてごまかしてそのような伝承が伝えられているのじゃろう」


「おい、おっさん!まってくれよ!それだけ情報を集めたりして戦略を練ってたりしたんだったら人間ともう一回戦っても十分勝てたんじゃ」


「それがダメじゃったのじゃ」


老ゴブリンはカップに入った酒を少し飲むとため息をついて説明する。


「超人族共の狡猾さはわしらの想像を超えていた。奴らはお前の世界、確か地球とかいう。そこに移住する前にこちらに残存させた同族はわずかだった。不可侵条約を結んでいたとはいえわしらはそれを超人族共に復讐の好機と当初は思った」


「だが、超人族はわしらモンスターやエルフと不可侵条約を結ぶ際、同時に秘密裏にモンスターやエルフの中で超人族と利害が一致する種族・部族・氏族たちと密約を交わし、わしら反超人族派の者たちと戦うようけしかけていたのじゃ」


「後になって分かったことじゃが、これは超人族共が地球上に移住してからも地球の人間どもを支配するために同じ手段を用いていることが分かった。確か地球にスパイに入った同胞からの報告によると超人族共はそれを“Divide and rule”とか“分割統治”などと称しておったな。わしらの軍はこの策略により親超人族派のモンスターやエルフと数百年にわたる戦争になり壊滅的な打撃を受けて超人族共への復讐どころではなくなってしまった。おまけに長年の戦争は同じモンスターやエルフ同士の間に深刻な亀裂を生じさせ、我々の団結は事実上不可能になってしまったのじゃ」


ダークゴブリンの老人が語る歴史はあまり勉強をしてこなかったサトシにもかなり興味深く、かつ深刻なものであると理解できた。直感的に地球上で起こっていることと同じだと感じたのだ。


ダークゴブリンの老人はそういいながら立ち上がると、床に向かって何かを唱え始めた。次の瞬間、床の一部が消えて地下へと続く階段が現れた。


「ついてこい、小僧」



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