第44話 老ゴブリンは語りだす
俺はダークゴブリンというゴブリン系の種族の老人を家まで連れて行った。
酒場のオークにかなりこっぴどく殴られたらしく、体のいたるところに内出血のあとがある。肩を貸して歩いているが、普通のゴブリンよりも身長が高いとはいえ160センチくらいしかなく、俺もそれほど身長は高くないとはいえ肩を貸しながらだとぎこちない歩き方しかできなかった。
老人は強気と弱気が入り混じった複雑な表情で俺に向かって口を開く。
「なぜわしを助けた?人間とわしらは相いれる存在ではないのだぞ」
「おっさん一応俺のこと助けてくれたじゃん。俺、帰る場所がないんだ。だからやることないし、とりあえず空気読んでやってみただけ」
「空気を読む?人間どもの中でも特殊な地域でしか通用せんことをぬかすんだな小僧」
「おっさん人間のこと知ってるのか?なんかさっきオークがおっさんのこと何か言ってたけど?」
「昔の話じゃ。あとそこの角を曲がればわしの家じゃ」
話をしてるうちに何とかこの老人の家にまでたどり着いた。今度は俺が家にそなえ付けてあった薬箱の中の包帯や消毒薬でこのゴブリン老人の手当てをする。
サトシは見応見まねで老人ゴブリンの手当てをする。痛がってはいたが老人ゴブリンも意外と我慢強く、スムーズに手当ては終わった。手当てが終わるや否や、ゴブリンはサトシに質問した。
「おぬし、帰る場所がないとか言っておったな。いったいどういうことじゃ?わかっておるだろうがここは人間が一人もいない最果ての町。そもそもなぜおまえのような小僧がこの町の近くで行き倒れておったのじゃ?」
「俺は地球というところからだまされてこの世界に来た。地球と、今俺がいるこの世界は両方とも魔王が支配してるからそれを倒して両方の世界を救えって吹き込まれて・・・。俺は地球では親からも周りからも疎まれて孤立して家に引きこもってたんだ。そうしたらある日女神を名乗るあの糞女が出てきて・・・・」
「だまされてこの世界に送り込まれた。そしてモンスターやエルフの居住地を攻めるように命令されたというわけじゃな」
老人の話にサトシは驚愕した。ゴブリンの老人はその顔を見てやはりという表情で続ける。
「なんでそのことを知っている!?という顔をしているということは図星だったようじゃな」
「今から約10年前、お前が来た地球という世界と通じるゲートが突如この世界のあらゆる箇所で大規模に開かれた。かつてこれほど異世界と通じるゲートが開かれたのは超人族共が別の世界に移住して以来のことで、わしらモンスターやエルフは皆驚いた。そしてそうこうしているうちに今度は超人族共とは別種族の人間どもがこの世界に大挙して現れるようになった。そして奴らはこの世界の磁場の出る場所の上に奇怪な建築物を建ててそこを拠点に今度はわしらモンスターやエルフの領地を侵略し始めたのじゃ」
サトシは老人がこの世界と地球で起きている状況を正確に把握していることに驚く。
「なんでおっさんはそんなことを知っているんだ!一体おっさんは何者なんだ?」
サトシの問いに老人は神妙な面持ちで事の真相を語り始めた。




