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異世界実録路線 少女は魔の現実に立ち向かう  作者: 幻影摩天楼


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第46話 現実世界に関する葬り去られたはずの資料は異世界にあった

老人の後を追って、サトシは階段を下りていく。


階段を下りながら老ゴブリンは再びサトシに質問した。


「聞きそびれていたが、おぬしはどうやって人間どものところから脱出できたのじゃ?」


「俺が拠点としていた町で女神とか称していたクソ女になんかの攻撃で叩きのめされて・・・。気が付いたら変な洞窟の中みたいなとこにいて、そこにあった岩みたいなのに手を触れさせられたんだ。それで適正なしとか奴らは言ってた。それで俺は無我夢中でそこから脱出したいって念じたら、自分でも信じられない力が出て、それでその変な洞窟というか上は研究所みたいなところを脱出して、なんか飛行魔法も使えてがむしゃらに飛んでたらここまで来たんだ」


サトシの話を聞いて老ゴブリンは足を止めた。


「何と!あの選別石に触れておったというのか!?それでなお自我をもって力を得ていたとは・・・。ひょっとしたらとは思っておったが、どうりでこの世界でも人間でありながら自我を保っておられるわけじゃ。わしがおぬしをここに案内しようと思ったのは間違ってはおらんかったわ!」


「選別石?あの青白い変な岩みたいなのか?」


「そうじゃ。あれに触れたものは超越的な力を得ることができるとされておる。だが、大半の人間は特異な磁場の影響で自我を失い、力を得られずただ他の者の言いなりになってしまう者がほとんどじゃ。運よく一定の力や能力を得られたとしても、己の自我に重大な欠陥を抱えてしまう場合が多い。例えば他人を同じ人とみなさなくなるような・・・」


「選別石に触れて自我を失わず力や能力を得られるのは超人族のほかはごくわずか。おぬしはそれができたということじゃ」


老ゴブリンの言っていることに俺はなんといえばいいのかわからなかったが、とりあえず少しは自信がついた気がした。その超人族とかいうのと同じくらいの力が持てたというなら俺の復讐を実行するうえで悪くはない。


「おれにそんな力があるというなら、俺は現実に戻って復讐したい。俺をこんな目にあわせたやつらは殿上人だろうと誰だろうと関係ねえ!」


「殿上人?確かそれはおぬしの世界における超人族共の名称じゃな。そいつらにあったのか?」


「いや。ただ、俺をこの世界に連れ込んだクソ女神はその殿上人とかいう権力者の手下っぽかった。誰の手下なのかまでは口にしていなかったけどな」


「超人族、おぬしらの世界でいう殿上人。そいつらにおぬしは復讐したいと言うのか?」


「当然だ!丁度そんな強大な力を得られたってんなら話は早い!あいつらを現実世界に戻って殺してやる!!」


老ゴブリンはサトシの返事を聞いて前を向きなおすと、地下室の扉の前についてそれを開けた。


下に着いた。やけにかび臭い。老人はどこからか明かりを地下室全体に付けた。


するとそこには膨大な書物や資料、新世界側の武器や防具、さらには現実世界の武器弾薬などが所狭しと並んでいた。


「ここはわしらダークゴブリン族が再起をかけて集めた人間どもに関する資料じゃ。超人族共との戦いは講和が結ばれたとはいえ奴らの狡猾さを理解していたわしらは奴らへの再戦を誓った」


「戦いの要とは相手を知ること、すなわち情報収集が勝利のカギを握る。超人族との戦いの最中からわしらは奴らの力の源は何か必死で考えた。その研究の中で到達した奴らの強さの秘密は2つある」


「一つは歴史や言葉の意味を自在に改変する事。もう一つはそれによってあらゆる種族を洗脳する力じゃ。ならば奴らはどのようにして洗脳などの力を身に着けて行使し、権力を盤石なものにしているのかを究明すれば奴らに勝てるヒントがあるのではないかとわしらは考えた。それからというもの、わしらは必至で超人族と奴らが移り住んだ地球という世界に関するありとあらゆる資料・情報を集め続けた。それがここにある資料じゃ。ここには超人族どもが焚書したり、戦災や災害などで地球上ではすでに現存していない物もここにはある」


「ここにある資料にはお前たち一般の人間がまず知らされていないであろう地球の歴史や超人族共の手口が記されている。この世界の魔法や特殊能力をマスターするための魔導書も数多くそろえてある」


かなりの広さのフロアにはまるで図書館のように大きな棚が並んでおり、数多くの本やファイルが隙間なく整然と並べられている。資料の棚の横にはこの世界や現実世界の武器などが並ぶ倉庫のようになっている。ぱっと見た感じ手前にはこの世界の剣や槍、防具類。その奥には現実世界の銃器やナイフなどが並んでいる。それもかなりの数だ。


俺は武器の置かれている場所を歩きながら見ていると、ふと気になったナイフがあった。たしかダガーナイフという日本で禁止されている奴だ。ダガーナイフは突き刺すことをメインにした戦闘用のナイフで刃体は細見であることが多いが、これは刃幅が広く刃厚も厚い。いかにも耐久性に優れた外見に、明かりに照らした時の合金特有の光の反射ぐあいからこいつがステンレス鋼でできていることが分かる。よく見るとステンレス鋼でありながら刃には日本刀のような刃紋が見えていた。リカッソの部分にはしかもJapanと表記されている。


「それはコールドスチールタイパンサヴァイヴァルナイフじゃ。アメリカ合衆国というおぬしらの世界にある国のナイフを製造するコールドスチールというところが作ったとされている。それも実際には日本という国の岐阜県という地域の服部刃物という製作所でおぬしらの世界の暦でいう2010年代前半ごろまで生産されていたということが分かっておる」


日本ではもう持つことができないナイフを俺は持っている。そしてそれはほかならぬ日本で作られてた物だった。不思議な感覚と、銀色に輝く刃は俺の心情に訴えかける何かを秘めていた。


「おっさん。なぜ俺をここに連れてきたんだ?」


「わしはお前に一つ賭けてみることにした。ここにある資料と武器などはすべてお前が自由に使え。これらをどう使うかはお前が決めろ。」


「え!なんでこれをおれに?」


「もうこの資料を託せる仲間はおらん。みんな戦争で死ぬか、生き残った者も戦争の傷がもとで死んだ」


「お前が人間という種族でありながら元の世界へ戻って自分を虐げた人間ども、超人族共に復讐するというならわしとお前の利害は一致する。この資料の山をどう活用するかはお前次第。あとは好き勝手にせい。わしの見たところ、おぬしの力は短期間であらゆる力を極めることができる性質のものとわしはみている。今のお前なら超人族を凌駕する力と知識、知恵を得られるやもしれん。少し疲れた。わしはデビルバッカスをあおって部屋で寝ることにする」


「おっさん。モンスターとエルフが団結すればその超人族、俺の世界では殿上人って言われているそいつらを倒すことってできんじゃねえの?」


「無理じゃ。モンスターもエルフもそれぞれ多くの種族があり、その中にはさらにそれぞれ部族・氏族が多くある。利害関係が対立しておるからそう簡単に超人族打倒に立ち上がるほど簡単ではない。以前の大戦では超人族共はモンスターとエルフの絶滅を目的にしていたからモンスターもエルフも利害を無視して団結できた部分があったが、超人族共は途中で戦略を変えて種族間の分断を図った。それにより、講和と不可侵条約が結ばれるもモンスター・エルフそれぞれに超人族と利害が一致する親超人族派が出てきてしまった。要は超人族共の分断工作にのせられたということじゃ。それが超人族がお前さんの世界に大勢移住してもなおこの世界で今日まで引き続き支配地域を維持することができている理由じゃ」



「おっさん。ほんとにいいのか?こんなの俺にくれて。おれはあんたらの大嫌いな人間なんだぜ」


「昔、超人族の中にもわしらを公平に扱う心のある者がいた。わしはその時のことを忘れてはおらん。最もその者は同じ超人族に殺されてしまったがな。支配者に公平な心というものはたまらなく邪魔ならしい」


「おっさん。ありがとう」


サトシは老ゴブリンに生まれて初めて心から感謝の言葉を言うことができた。


老ゴブリンは何も言わず手を挙げて答えた。そして先に階段をけだるそうに上がっていった。


俺はこの資料を読み込んでやる。そして俺を陥れたやつら全員に復讐してやる!!


サトシは決意を胸に、目の前に広がる資料の大海へと向かった。


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