第41話 自由への逃走
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はあっ、はあっ、はあっ!!!
サトシは無我夢中で非情階段を駆け上がり続ける!
地下6階から地上まで階段を上るのは結構長い。通常なら若者にとってこの程度の階段の上り下りは苦にはならない。だが、サトシが直面しているのは状況が違いすぎる。
目の前に続々と立ちふさがるのはアサルトライフルを携えたこちらを殺す気で向かってくるプロの兵士だ。サトシにとってFSPや幼稚園の頃のやった戦争ごっことはまるで次元が違う。全身から殺気を放ち、明らかに殺意のこもった銃弾を撃ち込んでくる相手はゲームオーバーをしても何度もやり直せるゲームの世界とは全く違うことを嫌が応にも思い知らされる。
「いたぞ、射殺せよ!!」
敵はサトシを発見するなり問答無用で銃撃する。
俺はここで死ぬかもしれない。こんな人生でよかったのか?心の中で自分の意志とは無関係に様々な不安が入り混じった言葉が浮かんでくる。
だが同時に絶対に死なないという根拠のない確信をサトシは感じ取っていた。何者にも負ける気がしないという闘争心がサトシの全身を突き動かし、矛盾する心情を両立させながら次々と前に立ちはだかる兵士を倒していった。
すべてから見放された引きこもりの少年の中で明らかな変化があった。異世界に転生して成功する妄想を抱いて自己満足に浸っていろという、娯楽の中にまで隠された不健康なメッセージへの明確な反抗心、目の前の死という現実を打ち砕こうとする闘争心が彼の自我を覚醒させたのだ。
敵兵は全員特殊部隊のような全身黒ずくめのスタイルにアサルトベストやボディアーマーを身に付け、ダットサイト付きのHK416を装備している。だが、サトシの動きは速すぎた。
まるで獲物に狙いをつけたチーターのごとき速さで敵兵が照準をつける間もなくサトシは間合いに入る。そこから強烈な拳の連打か、敵兵から奪ったHK416の正確な射撃で確実に敵を仕留めていく。がむしゃらの中に正確さ、狂気の中に正気、興奮の中に冷静さ、相矛盾する戦闘マシーンとしての資質を彼は自らの中で同居させることに成功していた。
地下2階まで来た。あと少しで地上だ!
サトシは倒れていた兵士が持っていたグロックのフィールドナイフ78を見つけ、それを手に取ってすれ違いざまに敵兵の首を斬りつけていく。血が噴き出るときもあったが気にしていられない。さっき研究員どもを吹っ飛ばした力が何なのか、なぜ自分にこれだけの動きと戦いができるのか、サトシには考えている余裕はなかった。ただ、本能的にこの場で使えるものは何でも使って目の前の敵を倒し、この場から脱出してできるだけ遠くにまずは逃げる。それだけがサトシを突き動かしていた。
敵兵をかなり倒したおかげか、敵はひるんで引き下がるそぶりを見せ始めた。サトシはチャンスとばかりに階段を駆け上がる速度をさらに早め、地上1階の非常階段扉を開けた。
「こっこちらE班!!被験体が1階ホール非常階段出口から出現!!!ホールにきゅうこ!!!」
非常階段扉を開けたその目の前にいた敵兵に持っていたグロックナイフを投げた。ナイフは敵兵ののどに突き刺さり、彼の仲間への支援要請の声は途中で途絶えた。
サトシはホール内のガラス張りの壁を一気に体当たりで打ち破ると、猛烈な勢いで走り続ける。後ろは振り返らない!打たれたらどのみち倒れてそこで終わり。自分でも恐ろしいくらい冷静な自分に自分を信じていいのかわからないくらいだ。
そうして走っているうちに、サトシは空が飛べる気がしてきた。飛べ!!俺は飛べるんだ!!心の中で強く無意識に願った瞬間、彼は大空へ飛んだ。すさまじい速度で彼は研究所からはるか遠くへ飛んでいく。自らの望みが彼の何かを進化させていた。
「緊急事態!!緊急事態!!被験体が研究所外部へ逃走!!被験体は飛行能力を会得している模様。繰り返す!!被験体が・・・・・!!!」
サトシはただひたすら飛んだ。何も考えずにとにかくこの呪われた場所からできるだけ遠くに。そして、アミさんを助けるためにも今はあえて逃げなければならないと、彼は驚くほど合理的に思考しながら逃走していた。




