第38話 現実という無理ゲーの中ではどの選択肢をとってもバッドエンドになります
「カズオさん!ヒデキさん!みんな、どこ行ったんだよ。アミさんを治療しなきゃいけないのに!!」
僕はアミさんをおんぶしながらハンフォードの町に向かって走り続ける。
本来トムスクからハンフォードまでは3日くらいかかるが、飛行魔法を使って途中アルザマスに立ち寄りながらも何とかハンフォード近くまでたどり着いた。でも、アミさんの傷を回復する魔法を時々かけながら飛行するのにとうとう限界がきて途中からわずかな体力だけを頼りにハンフォードの町を目指さざるを得なくなった。
僕の回復魔法では傷が化膿して悪化するのをかろうじて遅らせるくらいのことしかできない。一刻も早く医者か本格的な回復魔法ができる人のところに行かないといけない!
それに、途中立ち寄ったアルザマスでのあの光景・・・・・。あれは一体なんだ!?トムスクで見た工場と同じような無機質な建物。緑や黄色の混じった変な石を精製しているような、得体のしれない施設だった。そしてそこには銃で武装した人間がいた・・・・。何が何だった言うんだ!
ここは魔王に支配されている世界じゃなかったのか?いや、魔王はすでに現実の技術とかをこの世界にまで持ちこんでいるだけかもしれない。でも、あの変な石は何?
そしてそれを大量に運びこんでいたのは一体何のため・・・・?
念のため、女神さまに心の中で通信魔法で呼びかけてみた。しかし全く応答がない。ヒデキさんやカズオさんにも何度も試したが同様だった。まさかハンフォードにも何かあったのか!?アルザマスでもトムスクにあったのに似たおかしな施設ばっかりが建てられていたし、エルフの女の人たちが枷をはめられて大勢連れていかれていたし、いったいどうなっているんだ!!
アミさんのお腹からは素人でも明らかにやばい勢いで血が流れている。アミさんは魔法を封じられてしまっていていまだ解けないし、僕の回復魔法でも治療が追い付かず、回復系の薬草を入れていた魔法の袋は僕の手元からいつの間にかなくなっていた。森の手前に置いてきたリュックサックもどういうわけかなくなっていたし、しかもこんな時にカズオさんとヒデキさんは行方不明になっちゃうし・・・・。
サトシは頭がおかしくなりそうな状況の中、ようやくハンドフォードの町の入り口にたどり着いた。
ところがサトシは町を走っていくとすぐに異変に気が付いた。町に人気が全くないのだ。まだ昼間の13時くらいのはずなのに、建物にも通りにも人影は全くなく、いつもなら人でにぎわっているはずの場外市場も人が全くいない。
でも今はその理由を考えている時間はない!まずはミーシャ様にアミさんを助けてもらおう!事態の把握はそれからだ!僕はミーシャ様の館へまっすぐ向かった。
僕は残り少ないと自分でもわかる体力を振り絞ってアミさんを抱えながら走る。こっちに来てだいぶ体力はついたが、激しい戦いの後に走るのは今までやったことがない。少し気を抜くとアミさんごと倒れてしまいそうだ。
ミーシャ様の館にたどり着いた。だが、ここも人気がまるでない。僕は扉を開けてみる。
中は真っ暗だ。僕は残る力を振り絞って叫ぶ。
「ミーシャ様!!だれかおられませんか!!僕です!!サトシです!!アミさんが大けがを負ってしまって大変なんです!!助けてください!!」
「アミさん。もう大丈夫だよ。ミーシャ様のところまで来たから。もうすぐ誰か来るはずだ」
アミさんは少し安心した表情で僕に微笑んだ。しかし、次の瞬間彼女の表情は恐怖にひきつった。
「サトシ君!!危ない!!!」
「えっ!?」
ドゴォォォォ。
「ぐぅぅ・・・・・・!!!!!」
自分に何が起こったのかわからぬまま、僕は数メートル先の石の壁に叩きつけられた。同時に口から今まで経験したことのない量の血反吐を吐いたのだけが自覚できた。僕はなすすべもなく冷たい石の床に全身を強打して倒れこんだ。




