第37話 新世界の不吉な現実
サトシとアミが逃げ込んだ建物の中は、何かの工場のようだった。
いまのところ人気はないが、奥から音がする。僕たちは見てみることにした。
そこには白い服装にガスマスクをつけた作業員のような人間たちがせっせと大量の石を運び込んでいる。どうやら設備からしてその石のようなものを加工するか何かをする様子だった。
「一体何かしら、この工場?いるのはみんな人間みたいだし、防毒マスクとか全身防護服みたいなのをつけていて変よ?」
「何かやばいものを作っている感じだ・・・。アミさん、早くここを離れた方がいいかも」
そう僕がアミさんに話しかけた瞬間、
タンッ!!タン!!タン!!
突然、乾いた響きとともにアミさんが糸が切れた操り人形のように不自然に倒れこんだ。アミさんのおなかのあたりが見る見るうちに血が滲んでいく。
「アミさん!!!!!」
僕は彼女の体を素早くつかんで物陰に引きずって隠した。
今のは・・・、もしかして銃!?そんな、確かに現実世界にも魔王は進出してるって聞いてたけど、今まで銃で武装してた敵には遭遇したことがない。だが、アサルトライフルで武装した警備員風の者たちが僕らに気づいてこっちに向かってきた!
サトシはアミをおんぶすると、素早く工場のような施設の出口に向かった。幸いすぐに外に出れた上にさっきまで追いかけてきた勇者一行らしき影はいない。よかった!
追ってきた警備員風の奴らは何やら指示をして僕の隠れているのとは反対方向に行ってしまった。
僕は茂みに隠れて追手をまくとアミさんの具合を見た。
かなりひどい銃創を負っている。今すぐ手当てしないと・・・。
魔法の袋から薬草を・・・・、ない!!どこだ!持ってたはずの魔法の袋がない!リュックサックは森の入り口に置きっぱなしにしてきたし、しかもさっきの奴の呪文のせいでアミさんは魔法が使えなくなっている。早く手当てしないといけないのに!!僕の回復魔法ではこの深手は完治できない。早く薬草か治癒魔法をかけないとまずい!
カズオとヒデキは周囲にいない。森の中ではぐれて彼らがどこにいるのかもわからない。
「さっきの施設は何だったんだ?魔王は現実世界の技術を新世界にも持ち込んでいるのか?でも銃器で武装している奴はモンスターっぽくなかった。しかも、カズオさんとヒデキさんはどうして僕の呼びかけに答えずにどこかに行っちゃったんだよ!?どうなっているんだよ!?」
サトシはやむを得ず、消耗の激しい飛行魔法を使ってここから一番近いアルザマス砦の跡地に向かうことにした。そこにはミーシャ様の軍勢が陣を敷いてエルフたちと協力して町を再建しているはずだ。そこなら薬草か回復魔法を使える人がいるはずだ。
「ううっ!」
「アミさんしっかりして!今アルザマスに向かっているから!そこなら治療できる人がいるはずだ!」
飛行魔法はミーシャ様からもらった魔法の一つだ。だが、これは魔法力の消耗が激しくてそう頻繫には使えない。おまけにアミさんは軽いとはいえ人一人を負ぶって飛行するのは魔法力の消耗が通常より激しい。早くアルザマス砦に行かないと!!
精一杯とばして飛行し続けた結果、半日でアルザマス砦跡が見えてきた。
「よかった。人影がたくさんいる。み・・・・」
みんな、助けてくれ!そう言いかけた僕は本能的に叫ぶのを中断してすぐ近くの森に着地して身を隠した。
アルザマス砦とエルフたちの村があった場所、その一帯はなにか得体のしれない人工的な建物が建てられ始めているのが見えたのだ。一瞬見えただけだったが、それらはさっきトムスクで見つけた建物にそっくりだった。即席っぽい建物ながら現実世界のコンビナートのような工場っぽかった。まさかここにも何か得体のしれないことが起きているんじゃ?
サトシはアミをおんぶしたまま、気づかれないようにエルフの村のあたりに移動し、村の様子を見た。そこでサトシは信じられない光景を目にした。
村々から複数のエルフの女性たちが手に鎖のついた枷をはめられてトラックに乗せられていく光景が見えたのだ。女性たちはいずれも容姿端麗で若く、中には幼女や小学生くらいの子さえいる。
一体何だこれは?しかも、トラック周辺にはAKMアサルトライフルを持った人間が複数いる。紛争地帯でよく見る旧ソ連製のアサルトライフルだ。僕もFPSをよくやってたからすぐにわかった。それも通常の民間人の服装にボディアーマとかを付けた不可解な奴らだった。なんかPMCっぽい奴ら。何でそんなのが新世界にいる!?
ここにいてはまずい!サトシの本能がそういっていた。
アミさんの様態も急を要する。早くハンフォードに戻ろう!
サトシはアミをおんぶしたまま、残り少ない魔法力を振り絞って再び飛行し、その場を離れた。




