第34話 祝賀
「ぷはあー!やっぱり仕事の終わった後はビールに限りますね!サトシ君もいかがですか!?」
「ちょ、カズオさん!ぼくまだ未成年ですって!」
「ここは新世界ですよー!昔は15歳で元服してたんですから問題ありませーん!」
アルザマス地方の砦を攻略完了した僕たちは、ハンフォードの町に帰還して町の酒場で祝賀会を開いていた。この世界では未成年には飲酒させちゃダメだって決まりは特にないらしく、特に酒が入るとカズオさんはよく僕にビールを勧めてくる。
「カズオさん!私とサトシ君は未成年なんですからお酒はダメですよ!」
アミさんがカズオさんをたしなめる。
「そうですよカズオさん。俺も飲み会で結構アルハラされたから人に酒強要すんのは感心しないっすよ」
ヒデキさんもたしなめる。
「みずくさいなあ、みんな。まあ、アルザマス砦を落とせたんだし今日はお祝いしましょう」
アルザマス砦を攻略してハンフォードの町に帰ってきた僕たちは女神ミーシャ様から大いに祝福され、一躍町の英雄という扱いになった。町の人たちは僕たちが歩くたびにこちらをほめそやしてくれる。僕はちょっとした有頂天になったくらいだ。
「サトシさん。今回は私のことも気遣ってくれてありがとうございます。私、初めて本格的なお城攻めをしたもので怖かったんです」
アミさんは僕に砦攻めのことを話す。
「いやいや、アミさんってすごく勇ましかったよ!結構金属棒でエルフを殴り飛ばしていたし、僕の方こそ感謝しないと」
僕の返事にアミさんは顔を赤らめる。僕は一瞬ドキッとした。こんなになれなれしくアミさんと話すのってよく考えたらこれが初めてじゃ?これまで戦闘とか冒険のことにばかり気を取られていて事務的なこととかしか話してこなかったけど、結構かわいい人だ。髪をおさげにした感じは何か余計な解説をしなくても素直にかわいいと思う、うん。
「アミさん。君はどういう経緯でこの世界に来たの?」
僕の質問にアミさんは顔を曇らせる。
「あっごめん!つらいことだったりしたら聞いて悪かった!」
「いいえ、そんなことありません・・・。ただ・・・」
「ただ?」
「私、前世の記憶が親に殴られたり、学校で暴力を振るわれたり、あとは見知らぬ大人の人にさらわれそうになったりとか・・・、そういう怖い嫌な記憶しか覚えてないんです。ミーシャ様にこの世界に転生させていただいてこうして皆さんとお話ができるのがまともな人と話した初めての経験の気がして・・・・」
しばしの沈黙の後に、サトシは口を開く。
「アミさん。大丈夫だよ!もう君を虐げたような人はいないんだし、僕らがいるじゃないか!僕が君を守って見せる!」
!!勢いで飛び切り恥ずかしいことを言ってしまった!
「ありがとうございます。サトシさんに私はついていきます」
アミさんのはっきりとした口調に僕は本気で緊張している。まるで経験したことのない告白みたいで・・・・・。
突然、僕とアミさんの会話を見ていたヒデキさんが割って入ってくる。
「サトシ、お前も戦いで結構成長してきたな。昔引きこもりだったとかいう割には結構やるじゃねえか?」
「そ、そんなことないですってば」
僕は照れている自分を必死で隠す。アミさんもかなり顔が照れている。
「君らはまだ中学生だし、初々しいとこ見ると羨ましいよ。俺なんて学生時代にいろいろとあってね・・・」
「俺は昔カルト宗教に引っかかったことがあったんだ。そこは伝統的な神社とか仏教の寺とかに浸透して、それらを乗っ取って素朴に神社とかを信仰している人たちを洗脳していく卑劣極まりない奴らだった。俺は素朴に神社とか寺を大事にする心につけ込まれてそいつらに取り込まれた。そこをミーシャ様に助けられてこうしてお前の仲間になったのさ」
「そんな過去があったんですか」
ヒデキさんの何気ない過去の告白に僕は少々驚いた。カルト宗教みたいなのに絡まれていたって話は知ってたけど、普通の神社とかお寺にそんなカルトが入り込んでるんだ・・・・・。
僕たちは夜遅くまでこうして帰還後の祝賀を楽しんだ。僕が他の人とこうして祝いの場で盛り上がる経験をするのは初めてだったのでとてもうれしかった。
翌朝、僕たちはミーシャ様の館に呼ばれた。
「みなさんおはようございます。先日のアルザマス砦の攻略はお見事でした。改めましてあなたたちに感謝いたします」
「ミーシャ様。先日のアルザマス砦ではエルフと思しき者たちが砦に立て籠っていましたが、あれは何だったのですか?」
「彼らは魔王に侵略された際、魔王に寝返ったエルフたちです。あなたたちがあの砦を陥落させてくれたおかげでエルフたちの村も開放することができました。あなたたちの後に来た私の軍勢は、エルフの村々を解放するために差し向けたものだったのです」
ミーシャ様の説明は僕が予想していたこととほぼ同じことだったのでホッとした。一瞬、エルフの城か何かを間違えて攻めてしまったのではないかと心配していたのだ。
「サトシ。アルザマスを落としたばかりで申し訳ないのですが、急遽あなたに向かってほしい場所があるのです」




