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異世界実録路線 少女は魔の現実に立ち向かう  作者: 幻影摩天楼


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第14話 研究所跡地の探索

私、上総律子が荒木先輩と一緒に倉富氏のところへ新世界の話を聞きに行って2週間が経過した。


今、私は荒木先輩とともに旧陸軍の研究所跡地に行くべく、最寄りのバス停にいる。


本日は土曜日。時刻は午前8時35分。


先週の金曜日、私は荒木先輩と新世界に関する手掛かりを探るべく、倉富氏が言っていた研究所跡地に行くことを決心した。


あれから私は急遽、いざという時に備えるために家にあるキャンプ用品の一部を準備するとともに、父が買っていた軍事やサバイバル関連の本を読み漁った。


軍事やサバイバルのことは気休め程度の知識だが一応頭に入れておこうと思った。


何もないだろうと高をくくっているときに限って非常事態は来るものだ。



研究所跡地は当然のことながら今は誰もいない。


が、インターネットで調べたところ、戦後90年も経つにもかかわらず、何と今だ当時のままの状態らしい。戦争遺跡として何度か登録すべきだという住民の声と、取り壊しを主張する国との間で長年争われ、結局決着がつかないまま今日まで至っているという。


一応誰もいないと分かっているとはいえ、浮浪者やヤンキーなどが不法侵入して得体のしれない人間のたまり場になっている危険性も考慮し、何か異変があったら即座に逃げるプランも荒木先輩とこれまで打ち合わせてきた。


そして今日、再び荒木先輩とこうして待ち合わせて現地に向かうことになったのだ。


父と母には荒木先輩に家に勉強を教えてもらうためにお泊りをさせてもらうと説明すると納得してくれた。荒木先輩は霞先輩と並ぶほど成績優秀で、その人に勉強を教えてもらえるというのはなかなか貴重な機会だからと説明した。もちろん、将来のことも大事だからあとで荒木先輩に勉強を教えてもらう約束だ。今回のことに巻き込んだ後ろめたさからなのか、荒木先輩は自分の勉強法を私に直々に教えてくれるらしい。中堅校といっても苛烈な競争社会化している今、優秀者は自分の技術を教えることはめったにないといわれる中、優秀な先輩から教えてもらうというのは冗談抜きで本当に貴重なことなのだ。


霞先輩には申し訳ないけど、荒木先輩に教えてもらえるのも正直、素直にうれしい。



一応、最低限のキャンプ用品くらいは持ってきた。


もし新世界への見つかっていない出入り口があってそこに間違って入ってしまったりしたら本当に危険なことになる。


生きて帰れるかもわからない。


そんなことはないと思いつつも、最悪の事態を想定した最低限の装備を整えてきたつもりだ。


防水マッチ、コンロ、私の家に伝わる戦争時に曾祖父が使っていたという2重に重ねられる軍隊飯盒、キャンプ用の小型食器、フリーズドライ食品、チョコレート、水を濾過する器具、最低限の水、着替え一式、災害時によく使う軽量で寒さを防げるアルミ製の簡易防寒シート、シースナイフ1本、常備薬一式、小型の高性能懐中電灯、非常用のお金など。


あと念のために双眼鏡も持ってきた。


一つのリュックサックにうまくコンパクトに入れることができた。



荒木先輩とは前と同じく午前9時に待ち合わせ。


今度は路線の関係上、バスで行くことになったため、駅前のバス停での待ち合わせになった。


午前8時45分、荒木先輩がやってきた。


「おはようございます。荒木先輩!」


「おはよう、律子さん。早いね」


「今日は緊張しまして。今も落ち着かなくて」


「そうね。私もよ。でも、危ない感じだったらすぐ逃げよ」


「はい」


「それはそうと律子さん、休日なのに制服を着てきたの?」


「あっ、これは荒木先輩の所で勉強するからという名目で来たので、かしこまったところにはちゃんとした服で行かないといけないと思ってつい・・・・・」


「ふふっ、律子さんらしくていいわ。私、律子さんのそういうきちんとしたところ好きよ」


律子は顔が真っ赤になってしまった。


荒木先輩は慎重さと前向きな姿勢が混じったような表情をしている。


同時に、明るい口調ながらやや表情は暗い。私を巻き込んだことを公開する発言をされていたからだろうか?


でも、私も霞先輩を助けたいという気持ちでここまで来たんだ。


迷いはない。


私は荒木先輩とともに、定刻通り9時20分のバスに乗った。



バスは定刻通り出発。次の目的地のアナウンスが流れる。


「荒木先輩。今回の研究所跡はここから確か3駅くらいあとのバス停の近くに位置すると聞いていましたが、ネットで調べているとバスだと6駅先ですね」


「そうなのよ。私もネットで調べたらバスダイヤの改正とバス停の増設でそうなったみたい。私、ネットで法務局のページを見て登記簿を調べるサービスがあって調べてみたら、この研究所跡地は元々軍用地だった関係で市街地に近い割にはあまり住宅として開発されていないみたいなの。ごく最近まで国有地だったみたいで、最近になってようやく民間に払い下げられ始めたばかりらしいけど、まだ宅地開発されていない空き地が多い感じね」


荒木先輩とはそんなやり取りをしていたら、40分ほどで目的地に着いた。


バスが何事もなかったかのように去っていく。


周囲は市街地から近いとは思えないほど閑散とした感じで、空き地が多く住宅もあまりない。


周囲は田んぼや畑が多く、小規模な田舎町を思わせる。


「確かここから数キロ離れたところが、第2研究所のあったところ。そこが今、政府管轄の新世界への公式の出入り口があるところよ」


荒木先輩と目的地へ行く途中、古い鉄道の線路を見つけた。


赤茶色に錆びた線路の周囲は草がぼうぼうに生え、近くには廃棄されたであろう貨車が車体に意味不明な落書きをされて放置されている。


一目見ても使われなくなってかなりの時間が過ぎていることがわかる。


かつての旧陸軍の鉄道部隊が使っていたものだろうか?



しばらく歩くと、バス停から10分くらいで目的の研究所跡地に着いた。


研究所の跡地はまさに廃墟そのものだった。


周囲はおそらく昭和の時代に設置されたであろう錆びだらけの立ち入り禁止の看板とフェンスに囲まれ、背の高い草が敷地内全体に生い茂り、建物にはツタが所狭しと張り付いていて、入り口に入るのも一苦労な感じがした。


「荒木先輩。どうしましょう」


ここで荒木先輩が持ってきた長いナイロンケースを開けた。


するとその中から大型の山刀が出てきた。


「荒木先輩。どうしたんですか、その刀?」


「うん、たぶん草が思いっきり生えているだろうと見越して通販で買ったの。アメリカ製のマチェットていう藪こぎ用の鉈で、米軍が今も使っているやつよ」


荒木先輩は錆びて半分倒れかけているフェンスを通り越す。


私も後に続く。


荒木先輩は草を山刀でこぐように切りながら前進していく。


しばらくすると入り口らしき場所が見えてきた。


想定していたのとは違って、ヤンキーや浮浪者が入ったような痕跡はない。


ドアは鍵がかかっていた。


しかし、その隣の窓ガラスが風雨で近くに立てかけられていた木材が倒れたらしく、壊れて人が一人中に出入りできるようになっていた。


「よかった。中に入れなかったら鍵を無理やり壊そうかとも思っていたのよ」


荒木先輩は懐中電灯を取り出して中に入っていく。


私もなんか不気味で怖いという気持ちを押し殺してついていった。


「さすがに埃っぽいわね」


内部は予想していたことだが、とにかく埃っぽい。


「へっくしゅ!!予想していましたがとにかく埃っぽいですね」


「そりゃそうね。なにせ90年以上前に建てられて長年放置されているんですもの。おまけにすんなり入れた割には人が侵入した痕跡はなし。戦争の時から時が止まったままって感じの場所ね」


荒木先輩は懐中電灯と山刀を手に、臆することなく各部屋を調査する。


各部屋は映画とかで見るようないかにも昭和戦前期っぽいデザインのドアノブがついたドアがあり、それらにはカギがかけられていなかった。


研究所といっても2階までしかなく、2階から先に調査し、何もなかったので続いて1階を調べてみたがほぼ何もなかった。


「残るはこの部屋のみね」


私たちは残り一つとなった部屋の前に立った。


荒木先輩がドアを開ける。


ガチャッ、ギィィィィィッ。


何十年ものあいだ開閉されてこなかったであろう扉が悲鳴のような音を立てて空いた。


その部屋にも何もなかった。


ただ古ぼけた事務用と思われる古いテーブルと椅子があるのみ。


「荒木先輩。結局何もないようですね。もっと何かあると私も思っていたのですが・・・・・」


「待って律子!」


荒木先輩が叫んだ。


先輩は床を照らしている。


「この床、何か取り外せそう」


そう言って荒木先輩はリュックからバールを取り出して、その床のわずかな隙間にそれをひっかけてこじ開け始めた。


「うーん・・・・・。そりゃ!」


バタン!!


床がバールによってこじ開けられ、床下へと続く階段が現れた。


「ビンゴ!何かこの下にあるわね」


荒木先輩は臆さずに進む。


私も覚悟してライトを照らしながら進む。


下に着くと、何やらかすかに赤い光が見えた。


「荒木先輩。何かあります!」


「誰かいるの!」


荒木先輩が叫んだ。しかし返答はない。人気はないので人ではないようだ。


恐る恐る赤い光に近づいていく。


するとその光の正体は魔法陣のようなものだった。


「荒木先輩・・・・・。これって?」


「何だろう。私もこんなの見たことがない。」


ファンタジー映画に出てくるような魔法陣。それが私たちの眼前にあった。


戦時中の陸軍の研究所地下に何でこんなものが?


出入り口の雰囲気からして誰かが後からいたずらで作ったものとは思えない。


それにこの魔法陣の赤い光、明らかに電灯などの感じとは違う気がする。


私は調べようとするあまり魔法陣に近づいていった。


「律子さん!何があるかわからないからそれ以上は近づかないほうが」


「はい、わかってます」


律子がそういった瞬間だった。


突然、魔法陣らしきものがひときわ光り輝いて、その律子を飲み込んだ。


「えっ何!!きゃあああああああ!!!」


「律子さん!!!」


光が消えた後、その部屋には荒木唯一人だけになっていた。


そして、魔法陣のようなものも跡形もなく消えていた。


「律子さん!!!どこにいるの!!!律子さん!!!いたら返事をして!!!」


無人の研究所跡に荒木唯の悲痛な叫びだけがこだました。


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