第102話 ホテルへの突入
「行きなよ。君が目的にしている人がいるところはあそこだよ」
アミが指さした先にはひと際格式のある立派なホテル。
いつの間にここまで来たのか!?
空を飛んだり、着地したり戦いに集中していたせいで今どの場所にいるのか正確にはわかっていなかった。
だが、間違いない。
あのホテルの中から奴らの魔力を感じる!
俺を虫けらのように扱い消そうとした自称女神の女!!
あのホテルには確か小笠原もいる場所・・・。
魔力が小笠原なのかクソミーシャのものなのかは分からない。
だが、そのどちらかはあの建物の中にいるはずだ。
でも・・・、都合がよすぎるんじゃ・・・。
それになんだ・・・。
さっきから周囲に妙に人が集まりだしている気がする。
それもこういう高級ホテルがある場所とは似合わないような風体の、訳の分かんない政治団体の活動家みたいなのがさっきからちょくちょく目に付く。
でもそんなことはどうでもいい!!
ここまで来たら乗り込むまでだ!!!!
でもまずアミさんをどうすれば・・・・。
「…どういうことなんだ!?アミさん!!」
「私が君の相手をしていいのはここまでってご主人様とのひとまずの約束なの。それじゃあね。また会いましょう♬」
「あっ、忘れてた♬」
そういった直後。
ドガッッッッ!!!!!!!
一瞬で再び至近距離まで接近した彼女から強烈な前横蹴りが放たれた!!
「ブウゥゥッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!」
通常の前蹴りを足の向きを横にすることでより強烈な前蹴りとなる。
それはサトシのみぞおちを直撃し、彼は派手に後ろに吹き飛ばされた。
「それじゃあね。サトシ君。また近いうちに・・・」
先ほどまでの激戦の余波が冷めやらぬ中、驚くほど落ち着いたそぶりで彼女は宙を舞い、暗闇の夜空へと消えてしまった。
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彼が吹き飛ばされた方向には目的地のエンペラーホテル!
ガシャアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッ!!!!!!!!!!
サトシはエンペラーホテル正面玄関のガラス扉をたたき割ってホテル内部に放り込まれた。
エントランス付近の立派な柱。
そこに彼は大の字で背中から叩きつけられ、地面へとうつ伏せに倒れた。
「なんだ!?」
「何かの不審者か!?」
周囲にざわめく声をよそに、サトシは朦朧とした思考を必死に働かせる。
“・・・ッッッ!!!痛いってえっ!!!!アミさん何て蹴りかますんだよ!!!?”
「おっお客様!大丈夫でしょうか!?お怪我は!?」
「おい!!誰か救急車!?」
すぐに駆け付けたホテルのボーイの声掛けを無視して、サトシはボーイに叫んだ。
「オイ!!小笠原冥っていう奴はどこにいる!?」
「はっ?」
「どこにいるかって聞いているんだよ!!!小笠原冥って奴はよ!!!!」
小笠原冥。
その言葉をサトシが口にした瞬間、ボーイは急に黙りこくってしまった。
そして、他のホテル従業員にめく合わせをしたあとに発せられた言葉は不自然なまでに落ち着いた声へと変わっていた。
「お客様。そのお方に何のご用件でしょうか?」
「そいつに会わせろ!!」
「それはできません」
「なぜだ!?」
サトシが問い詰めてもボーイは答えない。
そうこうしているうちにホテルの奥から数名の黒いスーツ姿の男たちが現れた。
見るからに屈強な男たちが素早くサトシの周囲を隙間なく取り囲む。
動きからして素人ではないとサトシは直感で感じ取っていた。
「お迎えに上がりましたって顔じゃないな?」
「君、小笠原冥様に何の用だ?」
「ちょっと別室まで来ていただきましょうか?」
ぺっ!!!
血の混じった唾をホテルの床へと吐き捨ててサトシは悪態をつくような口調で言った。
「なんでそんなところに行かなきゃいけないんだよ!?デカブツ野郎!!」
「身の程を知るっていう言葉を学校で習わなかったのかボウズ?ここはお前みたいなみすぼらしいガキが来ていい場所じゃない!」
「さあ来るんだ!!」
男の一人がサトシの襟をつかんで立たせようとしたが・・・・。
ドッ!!!!!
「ゲエッッッッ!!!」
ドチャッ!!
サトシの正拳突きが男のみぞおちをきれいに捉えた。
屈強な男は不意を突かれたせいもあってかあっさりとその場に倒れこんだ。
「!!このガキ!!!!!!」
近くにいた男が懐に手を入れる。
素早く取り出したのはH&KSFP9.
取りだしたそれをサトシに向けようと構えかけた瞬間。
パーンッッッ!!!!
ギンッッ!!
ガチャッッッララッッ!!!
乾いた銃声がホテル内に響き渡り、何かが床に落ちる音が同時に響いた。
「イジッ!!!!」
黒い背広の男の手から拳銃がなすすべもなく落ちた。
「早撃ちの練習もまあまあしといて正解だったぜ」
サトシの手にはS&W・M686・4インチモデル。
使用弾薬は357マグナム弾。
それでH&KSFP9を一瞬で男の手から落としたのだった。
「速力増強魔法!!」
同時にサトシは陸上選手のようなクラウチングスタイルになりながら魔法を唱え、目の前の男たちに向かって突っ込んでいく!!
他の黒スーツ男たちは顔色を一気に変えた。
「テロリストが館内に不法侵入した!!全員に麻酔銃の使用を許可する!!できるだけ殺すな!!!背後関係を吐かせる!ぶわっ!!!!」
救援を呼ぶ間もなく黒の背広集団が次々と蹴散らされていく。
素早さを強化する魔法で常人の十倍ほどの速力で目の前の男たちを叩きのめす。
短期間ではあったが、鍛錬したことは無駄ではなかった。
確実に目の前の危機を突破する力を得ていたのだ。
己の正義は己の力だけが担保するのだ。
“ぐずぐずしてはいられない!”
“小笠原とクソ女神はどこにいやがる!!!!”
サトシはホテル内へと全力で走っていく。
魔法で脚力を一時的に向上させた彼の移動速度を従業員や警備員たちは誰一人捉えることができない。
“どこだ!?どこかに小笠原の居場所がわかる案内板か何があるはず・・・”
ホテル内を強行突破して走っているとまもなく、エレベーター近くに各階ホールの催し予定が書かれた大型モニターがあった。
その中には小笠原冥の名前。
“36階。鳳凰の間。小笠原財閥●●周年記念祝賀会・・・・見つけたぞ!!小笠原!!!”
さっきから上の階からかすかに魔力を感じる。
念のために魔力探知水晶を取り出して確認する。
その水晶は魔力を持つ者が近くにいることを示す赤い光を出した。
近いぞ!
やっぱりミーシャの奴もここにいるのか!?
「いたぞ!!」
“ちっ!もう追手か!!!”
“エレベーターは閉じ込められるかもしれない!!疲れるが仕方ないか!!”
サトシはエレベーター近くの非常扉を開けて、非常階段を脱兎のごとく駆け上がっていった。




