第99話 電磁波適合者36号
「久しぶりね、サトシくん」
マントに身を包み、妖艶な笑みを浮かべる少女が一人。
間違いなくそれはアミさんだった・・・。
新世界の謎の施設で連れ去られて以来、何処にいたのだろうか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここはドコなの・・・・。
目の前は真っ暗。
何も見えない。
確か私はサトシ君たちと一緒に冒険してて・・・。
ううっ、お腹のあたりが痛い!!
それに頭も痛い!!
確か、サトシ君と一緒に変な工場を見つけて・・・。
そうしたら急に銃か何かで撃たれて・・・・・・・。
それからサトシ君に運ばれて。・・・
・・・・・それからどうなったの・・・・・・。
何が起こったのかそれ以上思い出せない・・・・。
ここはどこなの・・・・。
・・・・・・・でも、何も見えないほうがいい・・・。
小さい時から両親がいなかった私は、施設で育った。
私は親の愛情を知らない。
あなたを助けてあげるという宗教にすがったこともある。
でも、私をもてあそぶだけで肝心な時には知らんぷりするか、場違いで人の足元を見る発言ばかり。
宗教の人は怖い話をしてそのたびにトラウマを植え付けられて、変な夢を見るようになった。お金と人の時間を教団に捧げることばかりに熱心な人たちだった。
話を聞かされるたびに何かおかしな、それでいてコワイことを頭に刷り込まれるような気がした。
それから人の言うことに無条件に従うことが多くなった。
折檻を受けることも多かった。
親の愛情なんか知らない。
施設でも学校でも人には言えない目に遭った。
それで私はあの世に行けば楽になると思って自動車に飛び込んだ。
死だけが唯一の安楽だと思ったから。
そうしたらいつの間にかあの女神ミーシャ様の元に召喚されてた。
どうやってそうなったのか分からない。
別の世界に転生したとだけ言われたけど、よくわからない。
あの方は私に別の世界で生きる希望を与えてくれると約束して・・・。
それからサトシ君たちと会って・・・・。
それから・・・、冒険中に・・・・、私ケガをして・・・・。
それから・・・。
「お目覚めかね、お嬢さん!」
冷たい響きの男の人の声で、私はようやく意識が現実に戻ってきた。
「博士、このデータを見てください。気になることが」
かすんでいた視界が徐々に明瞭になってくると、そこには異様な光景が広がっていた。
何かの医療器具と思しき機械、白を基調とした無機質で薄気味悪ささえ感じる部屋。
病院か研究施設を連想させる場所に私はいた。
いや、正確には囚われていた。
多分、何かの手術台か何かと思しき台の上に、私は両手両足に枷をはめられていたのだ。
なんで!?
私は確か新世界の魔王を倒すために女神ミーシャ様に召喚されて・・・・。
それからサトシ君たちに出会ってパーティを組んで一緒に冒険してて・・。
でも・・、それから何かに攻撃されて、意識を失って・・・・・。
何でこんな変なところにいるの!?
少女の疑念をよそに、この場の責任者らしき初老の白衣の男が愚痴をこぼすような口調で助手らしき男に吐き捨てた。
「わしが殿上人様から命じられた研究で忙しいのはわかっているだろ!こんな不適合者のことを見ろとは一体何があったんだ!!この娘はさっさと特別慰労施設送りにしろ!!まったく!!!」
すると、助手らしき若い白衣の男が、めんどくさいと悪態をつくひげを蓄えた男に何やら文書が書かれた紙を渡した。
「この少女、選別石での判定は不適格でしたが、これまでの戦闘で収集された脳波データを見たところ、興味深いことが判明しております」
若い男から書類を受け取った初老の男は、めんどくさそうに口をくちゅくちゅとガムを噛むように動かしながらそれに目を通す。
数枚の書類を手早く見る手つきから、その男は明らかに何らかの研究に打ち込んできた専門家ということがわかる。
すると、男の手がぴたりと止まった。
「・・・フム、これは実に興味深い!これなら試験中の電磁波兵器による細胞変化に適合できるかもしれん」
「はい、新世界の磁場には補助装備で臨時適合していたにすぎませんが、装備使用中の魔法使用時の積み重ねにより、脳の神経回路に通常と異なる変化が見て取れます。これなら電磁波兵器による細胞変化措置を施せば、人工適合者になる可能性があります」
「フム、やってみる価値はありそうだな。成功確率は10%にも満たんが、失敗しても貴重なデータ取りにはなる」
白衣の男たちの会話から、少女は本能的な恐怖をすぐさま感じ取った。
“何を言っているの!?”
“でも、声があげられない!!“
“一応意識はあるけれど、自分が自分ではない感じ!!!”
「にしても、この新世界での勤務はホントに疲れる。なにせこの首輪をはめておらんとすぐに木偶の坊になってしまうからな」
「ごもっともです。何せ磁場のせいで我々一般人はこの装置なしでは実験体と同じ状態になってしまいますからね」
“何を言っているのか分からない。でも、不吉な感じがするのは確か”
“口を開こうにも、動かない。意識はあっても自由に自分を動かせない!!まるで海でおぼれて意識はあっても体が動かせなくなるような・・・。それが意識の面でもそうなっているような、とてつもなく怖い感じ・・・!!!”
マスクをした医者のような数名が、何か手術道具の様なものを持って彼女に迫る。
“なっ何をするの!!??いやっ!!!!やめてっ!!!!”
うつろながらも恐怖に満ちた顔をする少女に白衣の男はニヤリとした。
「そう怖がるな。君はこれから素晴らしい世界へ行く可能性があるのだからな。宝くじと思って安心したまえ」
抵抗する間もなく、少女は白衣の男の一人に何かをかがされて、意識を失った。
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数時間後。
「素晴らしい!!まさかこれほどの適合値を示すとは!!」
「考えられません!吉原温泉施設へ回す予定だった小娘にこれほどの素質があったとは・・・。おそらく後天的な突然変異の類でしょうな」
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目が覚めたら私は今までにない力を手に入れていた。
そばで話をする人たちの話を聞いていると、私はあれから体や頭をいじくりまわされていたことは薄々わかる・・・。
私のためにやってあげた、大きな力を得ることに成功したと言っている・・・。
要は実験台にされたのだ・・・。
でも別にいいのだ。
私は大いなる力を手に入れて、自由になれたのだ。
もう私を苦しめる者は何もない。
バカにする者もいない。
だったら、洗脳されようが実験台になろうが、むしろそれでいいのだ。




