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同期卒業-同期、恋人になりました-  作者: あおきつばさ


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第15章:緊急招集!東陽町ガサ入れ風紀検査

第15章:緊急招集!東陽町ガサ入れ風紀検査


うれし恥ずかしでジェットコースターのような一週間が終わった土曜日。


夜の七時、私は門前仲町の居酒屋に、香織と真央の二人を緊急招集していた。


「──というわけなの。絶対に、会社には内緒で付き合いたい。でも、あいつの距離感バグのせいで私の心臓が持たなくて、どうやってここからオカンを脱却して関係を深めればいいか、知恵を貸して!」


焼き鳥のつくねを片手に一気に食べ尽くすと、二人はあきれたように顔を見合わせた。


「なるほどねぇ」


香織がビールをあおりながら、ニヤニヤと笑う。


「社内秘密厳守ね。でも美奈、あんたのその焦りっぷり、完全に湊斗くんに振り回されてるじゃない。オカン脱却なんて考えてる時点で、まだ守りに入ってるわよ」


「そうだよ」


一児の母である真央が、冷奴ひややっこをつつきながら冷静に言葉を継ぐ。


「男なんてね、言葉で『オカンじゃなくて女として見て』って言うより、既成事実を作っちゃうのが一番早いの。ほら、女物の部屋着とかコスメを彼の部屋にさりげなく置いて、外堀を埋めちゃうのよ」


「えっ……部屋着を置く!?」


私の脳内に、ジェラートピケ的なもこもこしたパジャマが湊斗の部屋にある光景が浮かび、一気に顔が熱くなる。


「そうよ! 思い立ったが吉日! こっからだと……門前仲町から東陽町なんて東西線ですぐじゃない。今から突撃して、女の私物を置いて外堀を埋めに行きましょう!」


香織がやけに勢いよくジョッキをテーブルに置いた。


「ええっ!? 今から!? 待って、まだ心の準備が──」


「はいはい! 遅くなったらなったで三人で行くのおかしいでしょ。今行くわよ!」


二人の圧倒的な行動力に押し切られ、私たちは居酒屋を飛び出して東西線のホームへと駆け込んだ。



ガタゴトと揺れる電車の中、私はパニックになりながらバッグの中でスマートフォンを操作した。

画面が小刻みに震える指で、湊斗へのLINEを叩きつける。


【美奈】

『今から友達と一緒にあんたの部屋に行くことになった! 大至急片付けて!!』


しかし、一向に既読がつかない。


焦った私は、


「ちょっと電話する!」


と通話ボタンを押そうとしたが、隣から香織の手が伸びてきてスマホを叩き落とされそうになった。


「ダメよ美奈! 抜き打ちだからこそ、男のリアルな生態が暴かれるのよ。連絡なんてさせないわ!」


「いや、リアルな生態はこないだ見たから! 本当にやばいから!!」


私の必死の抵抗も虚しく、電車はあっという間に東陽町駅へと滑り込んだ。



ホームに降り立った瞬間、私のスマートフォンが激しく振動した。

湊斗からの着信だ。


香織たちのすきを突いて、私は大急ぎで通話ボタンをスライドさせた。


「もしもし、湊斗!? 今どこ!?」


『み、美奈!? ごめん、今ジムから帰ってきてスマホ見た!』


受話器の向こうから、湊斗の悲鳴のような声が響く。


『大至急片付けるから!! 頼むから駅の改札前で十分……いや、十五分だけ時間を稼いでくれ!!』


「十五分ね、分かった、なんとか──」


「はい、電話没収ー!」


背後から香織にスマホを奪い取られ、通話は強制終了となった。


「さあ、案内しなさい、浅田チーフ」


香織と真央が不敵な笑みを浮かべる。

私は心の中で湊斗に、(ごめん、私の力では五分しか稼げない……!)と深く謝罪しながら、重い足取りで彼のマンションへと向かった。


「あ、コンビニで……ほら、飲み物とか……」


なんとか時間稼ぎの手段を考えてひねり出したのがこれだ。

しかし、間髪入れずに香織が言う。


「はい、そこのコンビニでマッハで済ますわよ!」


「美奈は飲まないからウーロンね、あとビール六本パックとおつまみ数種……」


と、主婦の真央は有無を言わせず買い物かごに投げ入れて、レジ前にもう立っている。

なんとか抵抗しないと……苦し紛れに言ってみる。


「あ、酔ってたから道あんまり覚えてないや……」


「ダウト!」


二人がハモった。


人事部舐めんな! 同期の住所くらいすぐ分かる!」


(おい、真央よ。それはコンプラ違反だぞ!)


「分かりました……ご案内します……」


か細い声しか出なかった。あとは……牛歩戦術しか無い……。


とぼとぼと歩き始めると、二人にガシッと両脇を抱えられた。

しかも真央のスマホの地図アプリには、既に湊斗の家が目的地設定されてしまっている。


「散歩嫌がる柴犬みたいなことすんじゃ無いわよ! 連行するわよ!」


(いや、首輪とリードされてたら絶対かみ切って逃げてやるけど)



「……ここ、です」


駅から徒歩数分。

私がインターホンを押すと、数秒の沈黙の後、ガチャリとドアが開いた。


そこにいたのは、前髪がまだ少し濡れていて、Tシャツを前後逆に着た、見るからに臨界状態の湊斗だった。


「い、いらっしゃい……美奈、あと、お友達の皆さんって……真央と香織かいっ」


「お邪魔しまーす!」


香織と真央が遠慮なく部屋に踏み込む。


部屋の中は、一見すると床に物は落ちていない。

どうやら湊斗が火事場の馬鹿力で泥縄の片付けをしたようだった。


しかし、長年彼を見てきた私の目は誤魔化ごまかせない。

ローテーブルの上が微妙にベタついているし、クローゼットの隙間からスウェットの袖がはみ出している。


つまり、「まだ少し散らかった部屋」がそこにあった。


「ふーん、男の一人暮らしにしては綺麗きれいにしてるじゃない」


香織が部屋をぐるりと見渡しながら、鋭い目を光らせる。


「でも甘いわね。男の子の部屋に来たら、まずはこれがお約束よ。風紀検査! 持ち物チェック開始!!」


「えええ!? ちょっと香織、何やってんのよ!」


私の制止を無視して、香織は楽しそうにクローゼットや棚をあさり始めた。

付き合いたての恋人の部屋で、まさかの女友達によるガサ入れが始まってしまうのだった。


「ちょっと男子ぃ! ベッドの下のいかがわしい写真集とか薄い本とか出しなさい! 没収よ!」


人妻の真央までうれしそうに悪ノリを始める。


「そんなもんねぇわ! 昭和かよっ」


と、湊斗は叫ぶがそれ以上抵抗もしない。


(ねえ、なにはともあれ、みんな何がしたいのよ……ゴールポストが全速力で逃げてる気しかしないんですけどっ)


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