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毒女の妊娠が悪役令嬢の家庭を崩壊させる  作者: 悠木真帆


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3/3

3

屋敷から出ていくことを決断したリオーラはトランクに衣類をがむしゃらに詰め込みはじめる。


「すべてあの女が悪いのよ」


リオーラの直情的な行動を見かねたセバスは声をかける。


「お嬢様、お屋敷を出ていくことは一向に構いませんが行く当てはあるのですか」


「当てなんていくらでもあるわよ。学園の寄宿舎だってあるし、私にはクラン様がいるわ。

婚約者のクラン・スタッシュフォート様が」


「ですが、お家のことでスタッシュフォート家に押しかけては相手に迷惑です」


「クラン様は私を放っておく人じゃない。とにかく学園に戻ります」


リオーラが学園に戻ると“ロリ伯”の噂はすでに広まっている。


『いやだぁロリ伯の娘よ』


学園中どこを歩いてもひそひそ話が聞こえてくる。


一緒に行動していた取り巻きの令嬢までも距離を置く始末。


リオーラは完全に孤立していた。


(とにかくクラン様のいる教室に急がないと)


「クラン様!」と、リオーラがクラン・スタッシュフォートのいる教室に入ると

クランの隣には退学したはずのマリー・スカーレットの姿が

そしてそのうしろにはこれまでリオーラが虐げてきた令嬢たちがいた。


「なぜマリーがここにいるのですか。それになぜ皆さんここに集まっているのですか」


「リオーラ、君には失望したよ。今まで君の悪い噂はたくさん流れてきた。

しかし婚約者の僕はそれを信じられなかった。いや、信じたくなかった。

だけど婚約者じゃなくなった今なら信じることができる。君はひどい女だ」


「ちょっと待ってどういうことですの。婚約者じゃないって⋯⋯」


「君のお父様から連絡があった。婚約者を君からこのマリーに交代してほしいと。

マリーは心まで美しい女性だ。君とは違う」


「待ってくださいクラン様!あんなに愛しているとおっしゃってくれたじゃないですか」


「アレは僕が夢幻を見ていたんだ。すまない。だが、リオーラ・ランタル。君とは婚約破棄を正式に宣言する」


「クラン様、そんな⋯⋯」


この出来事のきっかけは昨日のこと。


マリーや娘の関係に頭を悩ませていたクリフ・ランタルはテイル・ロトワールに相談していた。

「とにかくマリーさえいなければ、妻や娘との関係は壊れることは無かった」


「ならば私から提案があります。マリー・スカーレットを養女として、娘さんの代わりに

スタッシュフォート家に嫁に出すというのは。もちろん妊娠の事実は隠します」


クリフはその手があったかという表情でテイルの顔を凝視する。


「もちろんそれ相応の対価を貰えればマリーもテイルも口を(つぐみ)ます」


「ああ。頼むそうしてくれ。マリーを娘ということにして綺麗に手切れれば“ロリ伯”などという不名誉も消える」


「もちろんです」


クリフはホッと肩を撫で下ろす。


「ところで開拓の方は順調と聞いていますが」


「魔物の巣を見つけて一掃することができた。しかし冒険者を使うのに痛い出費をしてしまった。だが街道ができればそれもすぐに取り戻せる」


「今日はランタル伯様に会わせたい人物がおります」


「? いったい誰だ」


「お願いします」


テイルが後方の扉に声をかけると、豪華な装飾品が施された衣装を纏った青年が入ってくる。


クリフも青年に見覚えがある。


「申し遅れたグランディッシュ王国第一王子バート・グランディッシュだ」


「で、殿下。こ、このような粗末な屋敷に出向いてくださるとは大変、恐縮の至りにございます」


「そう、かしこまるな。今日はそなたに礼を言いにきた。あの魔物の巣窟となっていた森林から

魔物を一掃したそうじゃないか。ご苦労であった」


「至極恭悦にございます」


「そこでだ。そなたの労を労うため森林の管理は王国が行おう」


「は?」


「もちろん。王国のために尽くしてくれたそなただ。森林を提供してくれるな」


「つまりそれはというとこれは上げ地にございましょうか」


「いいや。そなたの奉仕だ」


「あ、あの⋯⋯森林に街道を造ってみたりしてはどうでしょうか⋯⋯」


「いいや、自然は大事だ。有意義に使わせてもらう」


「⋯⋯そ、そうですか」


第一王子はニンマリとした笑顔で席を立ち、ランタル家をあとにした。


セバスの日記によるとクリフ・ランタルはこののち数日は寝込んだという。


***


馬車に乗ったマリー・スカーレットはテイル・ロトワールと向かい合わせに座り、

互いの成果を報告し合っていた。


「そうですか。クリフ・ランタルの吠え面、間近で見てみたかったですわ」


「娘のリオーラの方はどうなった」


「しっかりと報いを受けましたよ。生徒たちからの断罪によって学園を退学したそうな」


「ランタル家はこれで没落貴族だ。食うに困ったリオーラにはいい就職先を紹介しておく。

顔はいいからな。娼館上位の人気嬢になれるだろう」


「紹介ではなく、強制の間違いでは」


「正解だ」


「ところでテイル様のことは私に教えてくださらないのでしょうか」


「俺がどうした?」


「テイル・ロトワール様、いや、テイル・グランディッシュ第二王子」


「チッ」


「第一王子との繋がりがあるとなればタダの商人ではないことは察しますわ。

あなたが私を利用する目的。それはお兄様の政敵の排除?」


「そうだ。クリフ・ランタルは、近年影響力を強めていた聖女派の支援を受けていた。

王政府側としても兄の意見が議会で通りにくくなるのは避けたい」


「だから次の狙いはスタッシュフォート家に」


「スタッシュフォート家も聖女派の影響を強く受けている。

今度の議長選を狙っているという噂がある」


マリーはテイルと目を合わせた途端、嗚咽を催す。


「お前まさか」


「どうやら本当にいるみたい。お腹にマルクス様の子が。

この子をクラン・スタッシュフォートの子として産んで育てる。

これが私の復讐。だからスタッシュフォート家はあなたにつぶさせない」


「これが母親になる女の強かさか。俺はげに恐ろしきものを見せられた気分だ」




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