ミニホムンクルスの材料
数日後、ひよこ島では猫ちゃんの毛皮の品評会が行われた。
「三毛は三毛だけど、白い部分が多い」
「斑は黒と灰色が混ざったね、ある意味三毛?」
「面白いですね、本人とは違う柄になるとは……いえ、本猫さんでしょうか」
フレスベルグに促されて八枚の毛皮をじっくり眺めていたアマネは、ブルーグレーの毛皮を選んだ。
「これがいい。手足だけ白いのがいいな」
「靴下系か……縫い合わせればいけるな」
「お裁縫ならお任せください」
これは、レスターもミシュティも手を貸すということだ。
私も何かするべきだろうか。
自分だけ何もしないのはなんだか気まずい。
「毛皮と龍のオリハルコンの代金はもらうけど……」
私の言葉に、三人は顔を上げた。
「完成した個体に、お祝いとして付与魔法をかけてあげるわ」
「レスターに聞いたんだけどさぁ、眼球も作ってくれるって。石をいっぱい持っているジューンから買ってこいって」
「どういう眼球?」
「魔法陣を仕込んだ宝石をスライムゼリーでコーティングする予定」
「ふーん。じゃあ瞳孔部分が黒っぽく見えるように、真ん中に小さい魔法陣を密集させると、見た目もいいわね。それは私がやる」
「カットと研磨はレスターがやってくれるって」
私はテーブルの上にバラバラと小さな宝石を出した。
小さなホムンクルスの眼球用なので、大きさは一センチ前後のものを。
「おい、アマネ。目の色も選んでいいぞ」
「うん」
私の担当は、スライムゼリーコーティング直前の眼球用宝石魔法陣を刻むことと、縫製後の毛皮の裏に魔法陣を焼き付けること、完成後に付与魔法をかけること。
ミシュティは外装部分の縫製。
フレスベルグはホムンクルス本体の製造。
レスターは宝石の研磨と爪の担当だ。
「これにする」
アマネが選んだのは、青みの強い薄紫の灰簾石だった。
地球ではタンザナイトと呼ばれているもの。
こちらで蒼灰簾石と呼ばれている。
アマネが選んだ透明度の高いものはかなり高額になるが、魔法陣ととても相性のいい宝石なのでいい選択だと思う。
宝石と言っても、魔力を通せるか通せないかでかなり仕上がりが違ってくるのだ。
一番通りがいいのは水晶だが、蒼灰簾石もかなり良い。
(強い衝撃で、一方向に割れる性質はあるけど不壊の術式を組み込めばいいだけ)
「予備も作るから、三つくれ」
「一個金貨一枚ね!」
「お、おう……」
本当は水晶が最適解だが、アマネの相棒になるホムンクルスなので本人が気に入ったものでいい。
後々、交換することもできるしね。
「──基本二足歩行、緊急時は四足走行可能にする予定だけど」
「いいんじゃない? 移動は基本、肩に乗せておくんでしょ」
「肩乗せか専用バッグだな」
「まあ、でしたらバッグも私が縫いますわ」
「この黒い培養猫毛皮なんていいんじゃないか」
「ここは三毛で推したいです」
「全種類でデザイン変えて作れば? ブルーグレーのだけは修繕用にもう一枚培養しておく」
「僕もホムンクルス作りたい」
「おう、一緒に作ろうぜ! 回路は市販のナニー回路、メイド回路、戦闘後衛回路を流用したオリジナル回路を作るぞ」
「帰ったらやる!」
ミシュティがパスタを振る舞い、フレスベルグとアマネはウッキウキで帰っていった。
浮かれすぎてクリムゾンヘルファイアを忘れて、あとからアマネが慌てて戻ってきたが。
「カヌレちゃんが、クリムゾンヘルファイアさんとも仲良くなれて良かったです」
「カヌレちゃんはディーで魔咆犬に慣れてるけれど、クリムゾンヘルファイアがいい子でよかったわ」
「はい」
クリムゾンヘルファイアはすごい名前だが、性格はディーより落ち着いている。
姉妹だから、見た目も尻尾以外はそっくりだ。
どちらの尻尾も長いけれど、ディーの尻尾は右向きにくるりと巻いている。
クリムゾンヘルファイアは真っ直ぐである。
白地に黒斑のハチワレで、毛がふわふわと長くなってきている。
「そろそろ、ディーの毛をカットしますか」
「そうね、モサモサしてきたもんね。図鑑ではモップみたいになってたけど……毎日ブラッシングしてたらふわふわのままで可愛いわ」
「ではサロンを予約しておきます」
ミシュティはそう言って、首を傾げて首元を揉んだ。
「……もうカヌレちゃんは頭上禁止にいたします。首が痛いです」




