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《100万PV感謝》前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
ローランへ

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お隣の魔法陣素材屋さん


「魔欠けエリアは何度か行ったことあるのですが……カフェの存在には全然気が付かなかったですね」


「奥の細い通りに小さい看板が出てたわ」


「あんな小さなエリアでカフェって、採算取れてるんでしょうか」


 魔欠けエリアは出入り自由だけれど、住宅街なので住民以外は用がなければ行かないものだ。

 どこの住宅街もそうだけれど。


「採算……どうなんだろう」


 嵐鳩のコンフィは、中はしっとりと柔らかくきめ細やかな肉質で、表面はパリッと焼き上がっている。

 赤ワインと果物のソースがいい香りだ。

 チェシャと私は少し会話を止め、温かいうちにコンフィをいただいた。


「魔欠けエリアはローランの中では特殊な扱いでして、住宅はほぼ街の所有物なんですよ」


「へえ、他のエリアの住宅街は賃貸不可の持ち家だけよね」


「そうなんです。魔欠けエリアの住宅は特殊なので、賃貸なんですが……一部は個人所有のままです」


「何か理由があるの?」


「百年ほど前に街が買い上げたのですが、拒否した家もあったので」


「ふうん、任意だったのね」


「家具や照明などが魔欠け仕様ですから、住民が維持に苦労していて。なら、街の所有物にして管理しようという政策だったようですけど」


「ああ、そういう話か」


「管理が出来てる家は拒否出来たみたいです」


「あー、じゃああのカフェは店主の所有物件かもね」


 皿が下げられ、デザートワゴンがやって来た。

 数種類の小さなケーキ、焼菓子、アイスクリーム、プディング、果物ゼリー。

 八種類よりかなり多そうだ。


「焼菓子はカウントしてませんでした」


 チェシャはそう言って、プディングとケーキを二つ給仕に取り分けてもらった。

 私は果物ゼリーとイチゴのケーキ。

 どれも一口サイズで、食べやすそうだ。


「かなり甘さ控えめね、美味しい」


「そうなんです、しつこくないので無限に食べちゃうんですよね」


「これならそうなっちゃうわねー」


「商店街の東端に、果物メインでデザート食べ放題のブッフェがあるんですけれど、そこのケーキも美味しいですよ」


「へえ……」


「さっき私がいた八百屋さんがやってるカフェで、限定十組なので争奪戦です」


「争奪戦……」


「人口の割には飲食店少ないんですよ」


「お惣菜の店は多いのにね」


 チェシャは頷き、近くに来たデザートワゴンから追加のケーキを取り分けてもらった。


「お惣菜のお店は無いと困ります、私には死活問題です」


「深夜に帰って開いてる?」


「二軒だけ、深夜までやってます。私が行くころには半額になっててありがたいんですよ」


「半額は嬉しいのわかる。見逃せないのよねー、値引き品って」


「そうなんです、半額だからって買いすぎる危険もありますから」


 宣言通り、チェシャは焼き菓子以外のデザートは制覇した。

 焼き菓子はバターが多く入っているから食べないようにしていると言っていたが、果たして意味があるのだろうか。

 すっかり満腹になった私たちは店の前で別れ、私はのんびり屋敷までの散歩を楽しむことにした。


 (商店街は外して、この通りを通って帰ろう)


 レストラン前の通りは、東に進んでいくと魔欠けエリアの前の道と繋がっていそうだ。


「ふうん、商店街の近くは自宅兼店舗って感じが多いのねぇ」


 商店街から逸れた通りはまだ歩いたことがなかったので、探索にちょうどいい機会とも言える。

 レストランの隣の花屋は相変わらずきっちり扉が閉まっている。

 その隣は小さな素材屋さんだ。

 ひやかしに覗くと、質の良い魔法陣関連の素材が揃っている。

 ほかの都市では素材屋といえば魔法の媒体や薬剤も取り扱っていることが多いが、ローランは流石魔法都市と呼ばれてるだけあって専門店が多い。

 この店は紙に起こす魔法陣に特化しているようで、インクやインクに混ぜる媒体が多い。


 (ペンはペンでお店があるし、細分化されてても商売が成り立つってある意味すごいわね……)


「へえ、燃えない魔法陣紙……」


 私の呟きに店主が笑顔で答える。


「少し値は張りますが、数回の使用に耐えますよ」


 普通は発動したら燃えて消滅するのだが、この店の目玉は使い回せる安価な魔法陣紙のようだ。


「今までに無かったものではないけれど、この値段で出せるのは珍しいわね」


「はい。まあ、この価格なので精密な魔法陣は無理なのですが……学校で需要があるので」


「ああ、子供の練習用なのね」


「はい。頭で覚えるまでのガイドにちょうどいいし、先生が少し楽になるので」


「…………確かに練習用にはいいかも。買っていこうかな」


 私は一束包んでもらって、料金を支払った。

 百枚で金貨一枚なら、一枚あたりは白銅貨ひとつ。

 文房具系の消耗品として考えたら高い気もするが、数回使えるならアリだと思う。

 普通の学校より遥かにお金がかかる魔法学校に通う児童は比較的裕福な家庭の子ばかりだから、受け入れられているのかも。

 大量注文で割引もあるだろうしね。

 

(これはアマネにあげよう)


 自分は保護者ではないと常々言ってはいるが、身近にいる子供はアマネだけなので甘やかしている自覚はある。


 (いや、フレスベルグからお金は徴収しようっと)

 

 


 

 

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いるかどうか聞かずに勝手に買ってるのにお金徴収はひでぇエルフだ
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