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《100万PV感謝》前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
ローランへ

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朝食前の雑談


 そのままローランの屋敷でしばらく自堕落な生活を送っていたが、ある朝寝室のドアがガリガリと音を立てて目が覚めた。

 開けてみると、ディーがすがりついてきた。


「あら、来てたの……」


 ディーを抱いて階下に降りると、リビングがピッカピカに磨き上げられている。

 

 (魔法で衛生は保っているけれど……ミシュティが来るとなんでこんなに気持ちのいい空間になるのか)


 私は魔法で埃や雑菌を消すだけだが、ミシュティは衛生魔法を使ったあと、手動で水拭きをする。

 この水拭きがポイントなのだろうか。

 ミシュティの掃除のあとは空気が澄み渡っている気がする。

 これが家事妖精の高需要の秘密なのだろうか。

 キッチンを覗くと、ミシュティが野菜を洗っているところだった。

 どうやら私に野菜をたっぷり食べさせる気のようだ。


 (たまごサラダにしてくれないかなー……)


 新鮮な野菜……ミシュティが作る私好みの酸味を抑えたドレッシングは美味しいので、たまごが無くても文句は無いのだが。


「おはようございます、ジューン様」


「おはよう、ミシュティ」


 ディーは初めて来たお屋敷を嗅ぎ回るのに忙しいらしく、クッションの上にいたカヌレちゃんを引き連れ、どこかへ歩いていった。

 

 屋敷の防犯魔法は、入れる人物を指定してあるが、『体高・幅・体長』がいずれも八十センチ未満であれば、除外だ。

 ディーとクリムゾンヘルファイアはフリーパス。

 カヌレちゃんは今は大丈夫だが、いずれは登録しないと弾かれる。

 ソフィーちゃんは十センチだが、本来の姿が巨大なので弾かれた。

 なので、ちゃんと登録してある。

 弾かれても怪我をするわけではなく、ただ敷地内へ進めないだけだ。

 転移で来た場合は敷地外に軌道修正されるようになっている。

 

 (……まあ、古龍やヒドラ、大怪鳥なんて人里に連れてくることは無いけれど)


「……カヌレちゃんも登録しておくか」


 龍種はよく考えたら、防犯魔法を突破してくるのでポチとビビちゃんは考えても意味がない。

 マカロンちゃんは転移しないし、ユーニウスとペルルも転移はしない。

 怪しいのはソフィーちゃんだけだ。

 カヌレちゃんはディーとセットになってる以上、大きくなっても一緒に行動しそうだから一応登録しておく。


「……あら、カヌレちゃんが大きくなったらどうする?」


「あっ……どうしましょう」 


「今更、外で寝なさいとか可哀想よね……?」


「ジューン様がいない時は、ディーとリビングのクッションで寝てます」


 図鑑を広げ、成鳥になった時のサイズを確認する。


「……オスよね」


「はい」


「オス。体高二メートルから三メートル……幅があるわね。翼を広げた場合五メートルから八メートル」


「数字だけで見たら意外と大きいですね」


「まあ、飛んでいるフレスベルグは空の上にいるのを、地上から見た姿だから」


「はい」


「そう言えばね、鳥じゃない方のフレスベルグはカルミラに保護された時に」


「ああ、子供の姿で保護されたって聞きました」


「そうなの。十歳くらいの姿で保護されたらしいんだけど……」


「はい」


「カルミラが見つけた時、ちょうど鳥のフレスベルグに襲われそうになってて。──目をつけられて頭上で旋回してたって」


「まあ」


「なので、フレスベルグって名前にしたらしいわ」


「そんな事情が……命名はカルミラ様だったのですね」


「ひどいネーミングセンスよね」


「…………」


「ねえ、なんで黙ってるの」


「あ、サラダを仕上げてまいりますね!」


 ミシュティがそそくさとキッチンへ戻っていく。


「うーん、ディーの出入口を広げるしかないか」


 ひよこ島の出入口は小さいが出入口の外側にはドームがあり、衛生魔法発動魔法陣が敷いてある。

 これで外の汚れを持ち込まないシステムになっているのだが、大怪鳥用となると高さも幅も広げておかなくてはいけない。

 今室内で過ごしているので、今更外も可哀想だし。

 流石に室内で飛ぶのは無理だろうけど、歩き回るスペースなら充分だし飛びたくなったら勝手に外に行けば良い。


 (ひよこ島上空を大怪鳥が飛んでいる……、素晴らしい防犯要員になるのでは? フレスベルグは縄張り意識が強い鳥だし)


 小型サイズの魔咆犬の舎弟が、大怪鳥。

 なんだか絵面が面白いわね。

 彼らは毎日一緒にキッチンを覗きに行っているが、お肉をもらっても喧嘩はしない。

 完全にディーの方が偉そうにしていて、カヌレちゃんは序列を弁えているようでおとなしい。

 幼鳥時代に刷り込まれた関係性は揺るがない。


 (それに、魔咆犬は小さいけれど竜くらいなら撃ち落とす。流石に龍種は無理だろうけれど、簡単に捕まるような犬でもないから)


 でも一応首輪には防御魔法を仕込んである。

 ポチや成体フレスベルグは、その気になればディーを丸呑みにするサイズだからね。


「おとなしいのがヒドラと屍龍だけってのが謎よね」


「そうですね」

 

 ミシュティが朝食を並べながら、クスクスと笑った。


「どっちもお肉より果物派だし」

 

「はい。それにマカロンちゃんもビビちゃんも怖がりですしね」


 どっちも強いはずなんだけれど。

 

 



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