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《100万PV感謝》前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
ローランへ

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遠話魔箱


 結局、尾行はすぐに外れた。

 魔欠けエリアから出たかどうか確認したかっただけなのかもしれない。

 そもそもエルフの絶対数が少ないから、私のことはそこらで聞けばすぐ特定できるはずだし。


 (面白いことがあるかも。またコーヒー飲みに行こう)


 面倒事は嫌だけれど、面白そうなことは好きだ。

 それに面白いと思ったことは、面倒ではない。


「…………」


 ローランの拠点は元領主館とあって、庭も広くなっている。

 手入れする人がいなかったので、今は大きな木が数本と雑草しかないけれど。


「何か植えるか」


 冷涼な土地で耐えていけそうな植物がいい。

 耐寒性のある、見た目のいいもの。

 ミシュティがもしかしたら、何か育てたいと言うかもしれないから持ち帰り案件かな。

 私は風魔法で一箇所に雑草を集め、樹木だけは残して焼却して更地にしたあとでミシュティに手紙を送った。

 偽薔薇なんてちょうどいいんじゃないかな。

 冬に薔薇に似た花を咲かせる、可愛い草でいろいろな色がある。

 ただ、犬には猛毒だった気がする。


 (ディーは魔物枠だから、犬がダメなものでも平気そうだけど……)


 まだ成犬じゃないのでイタズラも多いから、柔らかい土の庭があれば掘り返してしまいそう。

 しばらくは連れてこないで様子を見よう。


 (いや、番犬として連れてくる……? 運動量が足りないからダメね)


 今は島中を自由に我が物顔で走り回っているが、ローランではそうもいかない。

 ひよこ島にいたほうが、ディーにはいいだろう。

 時々連れてくるくらいならいいかもしれないが。

 街での散歩も経験させておいたほうがいいものね。


「たまごサンドでも食べるか」


 リビングに入り、ソファーに座って本を読みながらたまごサンドを食べる。

 手が汚れないし美味しいので完璧なチョイスである。

 ひよこ島だとついついテレビをつけてしまうが、この大陸には普及してないので本か新聞、緊急の拡声放送が情報収集の主だった手段になる。


 (情報収集と考えると、魔界のテレビも役に立たない気がするけれど……)


 ちなみに、テレビの概念が人間社会になかったわけではない。

 過去に何度か、実際に作り出した者もいる。

 社会システムに合致しなかったため、普及しなかっただけである。

 一番数の多い平民たちが気軽に買える価格帯では出せないし、放送局も作るとなると予算が足りない。

 どの領主も、そこに割けるような潤沢な資金があるわけではない。

 そんな理由で、毎回普及には至らないのだ。

 ──魔界は発明当初にテレビ本体が希望者に配布されたので、普及しただけ。

 放送局も旧貴族が面白がって出資した結果、うまく回り始めたのだが……これは魔界の人々に長命種が多いからという特性が大きく物を言っている。

 数百年という時間をかけて放送局が作られ、のんびりと技術革新が進んでいったのだ。

 人間社会では、数十年で結果が出ないと立ち消えになってしまうことが多い。

 魔界はなんなら数千年規模でのんびり進んでいく。

 魔界と他大陸に大きな技術差があるのは、そういう要因があるからと思う。


 (あ、でも大きい都市では音声だけのラジオっぽいやつはあるわね……)


 遠話魔箱は音声だけの受信機で、大きな街なら放送局があったりする。

 採算が取れているのかどうかは知らないけれど。

 個人というよりは、お店に設置されているところが多いかな。

 お年寄りが集まって、魔箱に耳を傾けワイワイと喋っている感じだ。


 (個人に普及しない理由は明確。平民は忙しいから、暇がないってところよね……)


 働いて帰ってきても家事があるし、内職をしたりする人も多い。

 魔法で済ませられる人はいいけれど、みんながみんな、家事に都合のいい魔法を持っているわけじゃないから。

 なので魔箱を個人で持っているのは、貴族や生活に余力があるとか、時間的余裕のある人たち。


「魔箱……確かあったはず」


 私は時空庫から、レスターが作った遠話魔箱を取り出してテーブルに置いた。

 特殊な魔力波を合わせれば受信できる。

 多分ローランには放送局があるはず。


 《ガガ……ピー……ので……ザー……》


「お、あるじゃないの」


 放送局と言っても普通の部屋の一室だから、放送側の敷居はさほど高くはない。

 でも深夜は放送されていない街が多い。

 深夜まで聴いてくれる人は、あんまりいないからかもしれない。

 

 

 

 

 

 

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― 新着の感想 ―
テレビを作れる優れた技術者だったとしても、うまくマネタイズできるプロデューサーではなかったということですね 映画館方式とか、TV喫茶みたいなのを展開するとか、食堂とか飲食店に置いてもらってCM収入とか…
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