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《100万PV感謝》前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
ローランへ

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地下水路②


 索敵に少し手間取るかと思ったが、一本目の蠢根樹はすぐ近くにいた。


「……細いわね」


 四年目の木にしては幹が細い。


 (光量不足による不生育……でも、生きていけるだけの環境ではあると)


 幹の直径は、十センチあるかないか。

 枝も細く、葉っぱだけはなぜか生い茂っている。

 全体的に弱々しい雰囲気で、簡単に伐採できそうなものだが。


「うーん」


 私はしゃがんで地面に触れてみた。

 コーティングで硬化された地面は魔法陣を敷くためのもので、歩きやすさを目的にはしていない。


 (ちょっと滑るから気をつけないと……)

 

 土自体は窒素の多いものだったので、ひょろっとして葉っぱが多いのはそのせいかもしれない。

 水は土管の中で、ぬかるんでいるわけではないが乾燥もしていない。

 幹を掴んで揺すってみると、攻撃とみなしたのか魔力を反射する薄皮のようなものが蠢根樹を覆った。


「あー、これが厄介なのか」


 魔法反射なら、反射されない魔法を組み立てることが可能だが……魔力そのものを反射するとなると、ちょっと厄介だ。

 一般的には反射すると言われているが、実際は強い反発であって、反射ではないのだけれどね。

 あと、すごく硬いので切るのに時間がかかる上、切った先から樹液が硬化してますます扱いにくくなる。

 地面、壁面、天井全てに魔法陣。

 ざっと陣を読んでみたが、環境の安定が前提の繊細な術式も混じっている。

 魔法で排除出来ないのは、そのせい。

『周囲で想定外の魔力の揺らぎがないこと』が前提の魔法陣は、近くで不用意に魔法を使うと不具合を起こす。


「あれ、でも簡単なことよね」

 

 そういうことであれば、魔力を漏らさない障壁で自分と蠢根樹を包み込めばいいだけだ。

 蠢根樹がいくら反発しても、それ以上にこっちの魔力が強ければ焼き切れる。


「なんで、みんな思いつかないのかしら」


 塩漬け案件になってた意味がわからない。

 四年もあったら誰か思いつきそうなものだが。


「んー、でも素材という意味では焼くのはもったいないかなぁ……」


 水分を奪って枯らすのがいいかな。

 四本あるなら何通りか試してみてもいいかもしれない。

 枯らさず生木のまま持ち帰れるなら、その方がいいもの。


「引っこ抜いて時空庫……はダメだし」


 私の時空庫は、生きているものは基本的に弾かれる。

 死体は入るし、死んでなくても石化してたら入れられることもある。

 が、確定ではない。


 (自分の時空庫がどういう理屈で判定しているのか、いまだにはっきりはわかっていないのよね)

 

 菌類や植物は大抵大丈夫だが、自分で移動するタイプは入れられないから何かしらのルールはありそうなんだけど。

 時空庫は容量も条件も個人差が大きいから、人それぞれだ。

 液体しか入れられない、鉱物しか入れられないとかね。

 レア度で言えば一番珍しいのは……生き物を入れられる時空庫なのかもしれない。

 まだ見たことも聞いたこともないけれど。


「さて、では一本目は脱水で」


 魔法陣に影響しない極微量の魔力で、極薄の魔力遮断障壁を張っていく。

 遮断膜さえ構築できれば、その中で障壁は厚くできる。

 きっちり遮断したあとは蠢根樹も覆っていく。

 根があるし、形が丸くないので泡のような円形にはしない。

 少し手間だけれど、樹形に沿って薄膜を伸ばしていく感じにした。


「あれ、覆ってしまえば持ち上がるじゃないの。このままへし折るか」


 意外なことに、障壁で覆った蠢根樹はそのまま持ち上がってきた。

 時空庫からは予想通り弾かれたので、どうにかしなくてはいけない。


 (んー、どうせなら根も欲しいから、予定変更。根元で根を折るか)


 私は結局幹と根の二箇所に重力魔法を同時に掛けて、折る方法に変更した。

 が……思ってたより反発が強く、一本目の幹は裂け、根っこは潰れてしまった。


「失敗しちゃったか……まあ、次はうまくいくでしょ」


 こうやって、失敗して上手になっていくのだ。

 最初から何でも上手に出来るとは限らないから。

 もちろん過去に蠢根樹を伐採したことはあるけれど、今回みたいに幹が細くてよくしなる感じではなかった。

 蠢根樹を時空庫に入れた瞬間、周囲の魔法陣が光る。

 一瞬身構えたものの、通常の仕様のようだ。

 しばらくその場に留まり観察していると、地下水路の魔法陣は書き込まれた指示を行う際に、淡く光るようになっているようだ。

 なるほど、だから出入口付近以外に魔導灯火が設置されていないのか。


 (間隔は一時間おきくらいに数分──それが時間差で)


 チェシャは不思議がっていたが、何のことはない。

 蠢根樹はこの淡い光を頼りに生きていただけだ。


「よし、ちゃっちゃと終わらせよっと」


 私は次の蠢根樹に向かって歩き始めた。

 


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