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《100万PV感謝》前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
ローランへ

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ローランへ


 旧ローランの首都だった街、古都ローランは魔法都市とも言われている。

 地面や建物に緻密に張り巡らされた魔法陣は、いつ見ても圧巻である。

 もちろん、素養のない人の目には見えないものだけれど。


「寒くはないけど涼しいわね……」


 季節的には夏だが、早朝はひんやりとした空気が足首を撫でていく。

 ローランの拠点である屋敷は大きな通りに面しており、庭はそんなに大きくない。

 屋敷も小さな部類だが、そもそもローランには厳しい建築制限があって新しい建物は建てられない。

 限られた土地に建っている建物たちはすべて小さめに作られ、長い間修繕されながら使われているのだ。

 スペースを最大活用した結果、狭小建物になったと思われるけれど──一番新しい建物でさえ築千年を超えてくるのだ、いまさらそれを改革する人も居なさそうだ。


 (建物の魔法陣を壊したら、そこに繋がっている空中から地面、全部の魔法陣が止まる可能性がある……)


 この街が唯一無二の魔法都市と言われているのは、街全体が、計算され尽くした魔法陣の集合体になっているからだ。

 一つ欠けても機能しなくなるほど、魔法陣たちは緻密に絡まり合っているのだ。


 地面などに露出している魔法陣に関しては、すぐに修繕できるよう『魔法陣保存協会』の管理下にあるし、故意に崩した場合は厳しい罰則が課せられているのでイタズラするような輩もいない。

 通りに子どもの姿がほとんど見られないのは、親の自衛策だろう。

 高額な魔法陣の修理なんて、家計の大打撃だもの。

 子どものしたことなんで……が通用するわけがないからだ。

 そもそも、それってやった側じゃなくてやられた側が許す時に言う台詞だと思うんだけれど。


「まあ……ここまで組み上げたのはすごいけれど、効果は、うーん……もっと簡略化できそうだけどなー」


 見たところこの結合魔法陣には、まず魔物が寄り付かない効果がある。

 障壁も二段階で展開されている。

 この世界には珍しい『水道』や『ガス管』『電線』が整備されているのも魔法陣の恩恵だ。

 魔法都市ではあるが、魔法が使えない者達が暮らしやすいように整えられている。

 旧ローラン王国時代、魔欠けが安全に暮らせるように都市づくりを目指してこうなったらしいけれど。

 魔欠けのための街が後々魔法都市になるとは、歴史って奥が深いわね。


 (とはいえ、魔法陣作成や訂正、介入や組み直しなんかの最前線はこの街なのよね……)


 魔法陣やそれに付随することを仕事にしている人が多いこの街は、やはり魔法都市で間違ってはいない。

 魔法陣大好きな私としては、住み着きたいくらい魅力的な街である。

 ちなみに私が非効率だと判断した部分の魔法陣は、研究者も把握している。

 時代とともに技術も進んでいるからだ。

 が、この街の魔法陣はすべてが連動、共鳴しているため一文字たりとも変更が出来ないそうだ。


 (複雑過ぎて何故そんな効果が出てるか解明出来てない部分も多いとか……)


 陽が少し高くなり、外も暖まってきたのでのんびりと外に出て魔法陣を観察しながら歩き回る。

 道端の石ころにも魔法陣が刻まれている。

 これは誰かの練習のようで、作動しないように割られたものが多い。

 消さずに割るのは何か理由があるのだろうか。

 どうでもいいけれど。


「……ん?」


 山に近い自分の屋敷とは逆、通りからは離れているが比較的街の入口近くの家から知った気配がする。

 庭のない一軒家が数軒並んだエリアの一画。

 他の家と大差ない外観だが、他の家よりやや荒れた気配を漂わせている。


 (なんでアラインがこの街に……)


 確かアラインは旧ローラン王朝と関わりがあったはずだから、拠点がローラン領側にあってもおかしくはないのよね。

 手入れが行き届いてない外観も、勇者が帰還してようやく宮仕えから解放され自由の身になったからか。

 放置していた拠点に最近戻ってきたなら、ありうる話だ。


 (勇者パーティに参加するのと引き換えに、魔術研究塔を辞す権利を得たのよね、確か)


 ……元々は自分の子孫でもあるローラン最後の王女がアルシア国王に輿入れする時、護衛的な意味合いでアルシア王国について行ったと言う話だった気がする。

 旧王族の系譜に関わっているなら、首都でもあった古都ローランに拠点があってもおかしくはないか。


 (中にいそうな気配……)


 私は迷わず、玄関のベルを揺らした。


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